予感は見事にあたった。 昨日20時電話のベルが鳴った。 「腹部大動脈瘤破裂で患者さんがすぐに入室します!」という声。 かなり焦っているようだ。 すぐにタクシーを呼んで、ノーメークのまま飛び出した。 ところが10分過ぎてもタクシーが来ない! もしかして…、別のマンションに行ったか? 私のマンションの名前は‘サーパス○○’ 角を曲がったところに、‘サーパスしティー○○’というマンションがある。 急いでいるときに限って間違ってくれるのだ。 20分過ぎるかというころタクシー到着、運転者は照れ隠しからかやたらと口数が多かった。 何でもいいから早く行ってくれー!!
手術室に着いた。 看護部長の姿がある。何で…? 「わるいけれど、手伝ってくれる」とおかしなことを言われた。 私は今日は拘束だから働くのは当たり前なんだけど…。 変だと思いつつ、すぐ着替えて手術室の中に入っていった。 なんだかまたまた様子がおかしい。 患者はすでに入室していて、遅出と当直の看護婦で手術ははじめられていた。 しかし、やたらとギャラリーが多い。 看護部長、副看護部長をはじめ各部署の婦長主任勢ぞろい、 医師の数も多い…。なんなの?
ICUの看護婦から申し送りを受けていても 声が震えていて、もしかして何か医療事故でも起きたのかとも思った。 おまけに、そこに院長まで登場。 出血が激しく、大量の輸血・輸液をいっていた。 出血の原因が脾臓の破裂だとわかって、すこしおちついたころ もう一度カルテをみたら、職業の欄に‘元看護婦’と記入されている。 ギャラリーの一人に聞くと、先日退職されたM婦長だった。 早く言ってよっていう気持ちだった。 それでこの状況が理解出来た…。 手術は、脾臓を摘出して終了した。 摘出された脾臓は、異常な裂け方をしていた。 交通事故などの外傷を受けたわけでもないのに あんなに激しく裂けた原因は何なのだろう。 M婦長は挿管のままICUへ退出。 後でICUをのぞくと、声かけに対して弱々しくではあるが返事が返っていた。 すこし、安心。
血液の匂いのこもった手術室をやっとのことできれいにし 後は器械をセットし直すだけといいうところで 電話が鳴った。 再出血!!すぐに患者を受け入れ再開腹となった。 腎動脈の断端からの出血を止めた…でも、状態はかなり厳しい。 私たちの疲労もピークに達していた。 すべて終って休憩室に入ったのは4時を過ぎていた。
|