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罰
2005年03月10日(木)
「同じ筆跡だと通らないから、ここにお母さんの名前を書いてくれ」 そう言われて父から手渡された書類に、私は母の名を書いた。 どんな意味を持つ書類かもよく解らずに。
中学生だった。
或いは、解っていたのかも知れない。 いきなり見知らぬ男と居なくなった、母へ対する怒りもあったのかもしれない。
帰ってきて母は泣いた。
「いつの間にか離婚されていた」
と。
時が経ち、母は再婚し、それでも私は打ち明ける事ができなかった。
書類にサインしたのは自分だと。
最期の母の姿は、私に対する罰だったのかも知れない。
兄も知らない、誰も知らない。 父と私だけの消せない記憶。
父はもう忘れているかもしれない。 そういう人だ。 「子供でも傷つく」という事を知らない人だった。
深夜の電話、受けるのはいつも私だった。
罰だったのかもしれない。
私だけの。
罰だったのだろう。
一生私は忘れない。風化しない。父は忘れても、私は忘れない。
それだけ。
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