ぴんよろ日記
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2009年12月28日(月) 九州喫茶散歩

 おととい彫った版画にオッケーが出たら、なんかもう、スイッチが切れて(本当は明日またひとつ大きめのものがあるし、ね、年賀状…)、今年も終わり感にあふれてしまい、今日はほぼ寝込んでしまった。

 昨日は、このたび「九州喫茶散歩」(書肆侃侃房刊)を出版した小坂章子さんがイベントをやってるというので、福岡へ。前に出した「福岡喫茶散歩」も良かったけど、今度のはいろんな意味でずっしり感にあふれていて、いい仕事したな〜、と思う。誰に頼まれたのでもなく、営業もからませず、自分の足で取材したいと思える店を探し、通って、話を聞いて、写真を撮って、書く。それって当然のことのように聞こえるけど、その当然のことこそが、地方のライターにおいては、「趣味でなく仕事として」実際にやるとなると難しい(しかもそれを九州全県バージョンで!車なしで!)。私は同業者なので、それがグッと来る。もっと簡単なやり方で、似たようなものを作る方法を知ってるから(いま世の中にあふれている「情報」は、悲しいかなそういうものばかりだ)。でも、彼女はそれをしなかった。この本に載っている店の主たちが、ただひたすら豆を焼き、店を掃除し、身なりを整え、1杯ずつお客に出したのとおなじようような心構えで、取材し、悩み、文章を書いた。書かれたお店の人たちは、この本、うれしいだろうなー、と思う。それは、いいこと書かれたとか、カッコよく書かれたとか、そういうことじゃなくて、お店とお店の人たちと小坂さんのあいだに生まれた「共鳴」がしっかりと焼き付けられているからだ。それと似たような共鳴が、お客さんとの間には生まれることがあるだろうし、それこそをめざして彼らは店を開け、コーヒーをいれているのだと思うのだけど、その幸せはいつも、コーヒーの湯気とともに消えていく運命にある。こうして手に取って残しておけることがあるなんて、たぶん思ってもみなかったプレゼントなのではないだろうか。
 いますぐコーヒーを飲みたくなる「九州喫茶散歩」。人ごとながらどうぞよろしく。


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