ぴんよろ日記
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高校の時の美術の先生が、油絵の道具をみんな揃って買う時に話してくれたこと。ずーっと忘れられなかったこと。この話を聞けただけで、油絵コースを選んでよかったな、と思ったこと。
「今は『授業で使うだけなのに』、と思うかもしれません。実際、卒業してしまっても描き続ける人なんていないかもしれません。でも、何年も何年も経って、仕事などに疲れてしまったとき、ふと、ずっとずっと忘れていた絵の具箱のことを思い出して、絵を描きたくなるかもしれません。そのとき、タンスの奥から出してきたこの箱に、たとえ、高校時代はちっとも使わなかった、深緑色の絵の具しか残っていなかったとしても、そんな時に、絵を描くということ、そして描けた絵は、誰に見せなくとも、完成しなくとも、自分にとって、とても大切なものになるでしょう。」
高校生の私は、その話を聞きながら、むしろ「早くそんな時が来ないかな」と思った。「人生に疲れたい」と思ったのでは全然なくて、埃をかぶった絵の具箱を、学校の課題でも商売でもなく、「絵を描きたい」という、ただそれだけの気持ちで、取り出してみたいと思ったのだ。そして、そこにはどんな色の絵の具が残っているだろう、とも、わくわくした。今の自分が、ちっとも手を伸ばさなかった色が残っているはずだから…。 さぁ、ついに、時は20年経ち、油絵を描きたいと思ってしまった。たびたび夢に見る、長崎の光景を描いておきたかったのだ。「おぉ、ついに、埃をかぶった絵の具箱を開ける日が…」と、実家の物入れから、絵の具箱を取り出した。取っ手の革はすっかり痛んで、触っただけでボロボロとこぼれ落ちる。そして、そう、中には、もう固まっていて使えなくなっているかもしれない絵の具が入っているはず。あぁ、何色なんだろう!? 現役で使っていた時には、やたらと磨き上げていたパレットとも、20年ぶりの対面だ。油壷は…これももう、開かないかもしれない。 ドキドキ…カチャリ。 高校の時から締まりの甘かった金具の感触も懐かしく、期待を胸に開けてみると、そこには…筆とナイフしかないじゃんっ! ほぼ空っぽだった玉手箱を前に「まぁ、これが年を取るってことか」と、妙に納得。…でも、絵の具はともかく、パレットはどこいったんだろう。業務連絡、妹さん、心当たりはありませんか〜?
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