ヲトナの普段着

2005年04月06日(水) 二兎を追うな

 過日の「列伝」で紹介した麻耶について、じつはひとつだけ書かなかった素晴らしいコトがある。コトというか秘訣というか道というか、これは別口で書いておきたいなと思ったので、わざわざこうして別枠で書くことにしたんだけど、それは……。
 
 
 アダルトであろうがノーマルであろうが、およそトップクラスのチャトレたちには、おそらく幾つかの共通するポイントがあるような気がする。そのなかのひとつ。それは「二兎を追うな」という鉄則。何のことかわからないよね。これじゃ。
 
 数多のチャトレたちをみていると、複数のサイトに登録しているチャトレのじつに多いことか。こっちのサイトでお喋りしていたはずの子を、まったく別のサイトで見かけたなんてことは、チャッターであれば誰もが経験してるだろう。あっちにもいる、こっちにもいる、おお、そこにもいたか!てな按配である。
 
 とりわけ新規オープンサイトには、「いるわいるわ」と見覚えある顔と名前のオンパレード。まあ、新しいサイトというのはまったくの新人のみで運営できる道理もないのだから、あちらこちらからチャトレが集合するのも無理はないんだけどね。そういう光景を目の当たりにするにつけ、置屋のおやじは「それじゃいかんのだよ」とため息三秒なわけだ。
 
 
 麻耶は某アダルトチャットサイトで常にトップクラスにいる。あまりいい加減なこともいえないけど、おそらく月収は百オーバー。たいていのチャトレにその話をすると「えええー!」と驚いてくれる頼もしいネタ姫なのだ。そんな麻耶に逢うには、そのサイトにいくしかない。つまり彼女は、他のサイトには登録してないんだな。
 
 売れてるからよそに行く必要がないのよ、というチャトレも多いだろう。それはわかる。客足が芳しくないと、どうしてもよそで稼いだほうがいいんじゃないかと思ってしまう気持ちもわかる。隣の芝生が青く見えるのは人情というものだからね。でもね、そこが落とし穴。ひとつのチャットサイトに専念することは商売上も理に叶っているし、その背後にある「なぜそのサイトにいるか」というチャトレの信念をも浮かび上がらせてくれるのである。
 
 チャトレの皆さんよーくご承知のように、チャトレの報酬は一定額に達しないと支払われないシステムが多い。そりゃそうだ、一円二円をばんたび支払う身にもなってみれば、手間も経費も半端じゃないだろう。そういうシステムのなかにあって、あちらこちらに登録してあちらこちらで働いていたら、稼ぎの回収もままならないはず。じつに合理的とはいえない。同じだけの時間をチャットに費やすのであれば、複数またいで働くよりは、一ヶ所でじっくりやったほうが確実に金になる(もちろん、サイトの繁盛次第だが)。
 
 
 ポイントの理由だけではない。過去に馴染んだチャトレたちを思い返すと、わりと「〜でもチャトレやってるからよろしくねぇ」というコマーシャルを受けた子が多かった気がするんだけど、きみたちは客の事情を考えたことがあるのだろうか。ライブチャットのポイントというのは前払い制が原則だ。だから客は常に、前もって購入したポイントを手にチャットを楽しんでいる。ふたつみっつはチャットサイト掛け持ちでやってるにしても、そこから先は、仮に登録してあっても金をつぎ込むサイトにはならないのが普通だろう。
 
 それなのに新しいサイトに来てください?そんなこと言える?
 
 チャトレに馴染みができれば、おそらく多くの客はその子を目当てにサイトを開くだろう。そこにお目当ての子がいなかったら、よそでやってるのかなぁと彼女が話していたサイトをこそっと開いてみる。おお、いたぁ。と思っても、そのサイトで使えるポイントは持ってない。いくら彼女が待機中で暇そうにしていても、こちらはドアをノックすることすら叶わないのである。
 
 なにやら物語のように感じるチャトレもいるかもしれないけど、これは現実。僕自身、これまで幾度となく経験してきたことだ。最近ではメール機能を備えたチャットサイトが増えたから、そういうときは「〜にいるから戻ってこーい」とメールすればいいのかもしれないけど、基本的にそういう話で済んでしまうことなのだろうか。果たして根無し草でいいのだろうか……。
 
 
 さて、一ヶ所に的を絞るとなると、どこに腰を落ち着けるかが最大のポイントとなるだろう。「どこがいいですか?」と尋ねられて「ここがいいよ」と応えられるサイトなど、残念ながらひとつもない。どこだって一長一短あるし、チャトレとサイトとの相性が、サイト選びでは最大のポイントのようにも思えるからだ。十人十色のチャトレ相手に、「ここだね」なんて言えるわけないでしょ。
 
 突っぱねるようだけど、そんなもんは自分で探しなさい。そしてじつはそれこそが、きみがチャトレとして花道に立てるか否かを大きく左右するということを、是非忘れずに吟味して欲しい。
 
 トップクラスのチャトレたちは、自分を生かす術を身につけている。自分を生かすために、自分を本当に生かしてくれる場所を選んでいるということだ。それにはサイトのシステムもあるだろう。コンセプトもあろうし、客層だって影響してくると思う。絞り込むのは容易な作業じゃないと思うんだけど、それに自分を上手にはめることができれば、それはきみの信念へと変化してきっと輝きだすに違いない。そして客たちは、そんなきみに魅了される。と、僕は思う。
 
 二兎を追うものは一兎をも得ず、というのは古くからある格言だけど、物事を極めようとする者にとって、これほど価値ある言葉もないだろう。そう、恋愛も一緒だね。八方美人ではいけないのである。


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