アイ ナンカ イラナイ。
夏野 空の日記

2017年08月10日(木) 空の終わり

過日。

彼の人に別れを告げた。
15年にも亘り、私を支えてくれていた人である。

最初に会ったのは15年前、
雨の降りそうな蒸し暑い日であった。
あの日、私は彼の人に謝りに行ったのだ。

何を謝りに行ったのであろうか。
こうして少しずつ忘れていくのであろうか。
忘れられるのであろうか。

不思議な関係であった。
不思議な距離感であった。
父のようでもあり、飼い主のようでもあり。

彼の人は私のコントローラーであった。

直接会うことはとても少なかったけれど、
かけられた言葉はどれも大事なものだった。
もちろん、くだらない話もたくさんしたのだけれど。

叱られたことが山ほど。
褒められたことが幾度か。


また違う過日。

昔の人と10年ぶりに顔を合わせた。
もう顔を合わせることなどないと思っていたのに。
もう会うまいと思っていたのに。
自分の中ではきちんと整理がついたはずだったのに。
少しずつ忘れて日常を送っていたのに。

忘れてなどいなかったし、整理などついていなかった。
ただ、苦しいものに必死で蓋をして
見ないようにしていただけであった。

蓋を外したら中身が零れるのは当たり前である。


彼の人に言われていた。
「お前の誕生日を一緒に過ごしてくれるような男が相手なら、
俺は別れてやる」と。

15年を思い返しながら、彼の人に「別れて欲しい」とメールした。

けれど、昔のその人が東京にいるのは再来年の春までである。
再来年の春、また私の前からいなくなってしまう。

そう告げたら最後にまた一つ、彼の人から叱られた。
分かっているのに何故だ、と思うのだろう。


分かっている。
分かっているのだ。
言うことを聞かないことなど。

自分が何を選択して、何処へ向かっているのかも分かっているのだ。
それでも言うことを聞かないのだ。

再来年の春までだと分かっているからなのだろうか。
10年前の繰り返しだと分かっているのに。


彼の人へ。
15年間の感謝と、再来年の春までの反省を込めて。

再来年の春までの彼へ。
私の中のありったけの愛を込めて。

そして私自身へ。
再来年の春からの悲しみを込めて。


恋は楽しいばかりでは終わらない。
雨は必ず空から降ってくる。



〜*〜〜*〜〜*〜〜*〜〜*〜〜*〜〜*〜〜*〜〜*〜
愛してくれる?

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麗香@夏野空 [MAIL] [MILK PITCHER]
 
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