少し忙し過ぎるのが良いくらいなのだろうけれど。 忙しさの種類が違う。
少しずつ 少しずつ 少しずつそれでも良い方へ持って行こうとはしている。
珍しく平日、時間を割いて大崎のナノハナへ顔を出した。 明らかな空白を、意識して埋めるように時を押し流す。 それは圧し掛かってくるので。
もう少し もう少し もう少し笑えれば「するり」と流れていく。
はず。 けれど空回り。 結果、疲労するばかりだったような気がする。
帰りはタクシーにした。 ら よく喋る運転手さんで更に疲れた。
松見坂を左折していく。
会社では相変わらずデータが山のように押し寄せてくる。
メッセンジャーのあちら側も仕事に忙殺されているような。 疲れているような。 触らないでいた方が良いのかしら、と思っている自分を俯瞰している。
余裕が無いのだろう。 けれど、涙が出るほど良く面倒を見てくれている。
伝える前に落ちてしまったので。
「アリガトウ。」
会社からの帰り、何故か瑶子を思い出した。 渋谷ではなく、そこは新宿だったので少し足を伸ばす。
ウィンドウ越しに懐かしいイルミネーションを見て ああ疲れた、と思いながら歩いていたらスカウトに捕まった。
メイクアップの仕事をしている彼とは、以前からもう何度か 渋谷の駅で追いつ追われつのバトルをしていたのだが、 その晩、ボーッ、として歩いていたのがアタシの敗因だったのだろう。
ガッシリとアタシの腕を掴んだ彼は、してやったり、の表情で 名刺を差し出しながら「モデルをやってくれないか」と言う。 ここぞとばかりに一気にまくし立てられる。 何でも、次のショーに出てくれる人を探しているのだとか。
分かった 分かった 分かった が。
「派手なお顔立ちですからステージで映えますよ。」
派手、って何やねん、派手って。 悪かったな派手な顔で。 昔っからこーいう顔なんじゃ。 こーいう顔でオレはモデルしてたんじゃ。 スカウトするなら他に言いようがあるろー。
と思ったのだけれど。
疲れるから 今、仕事に就いているから もー、オバサンだから
と言って丁重にお断りする。
猫の目が 笑ったような
気がした。
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