たーげぶっふ(日記)...ゆるげん

 

 

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X-Dayは刻々と近づいている - 2003年07月12日(土)

NのVoiceルームの手前が待合室みたいになっていてソファーが置いてある。
ソファーが面している壁に講師陣の直筆による自己紹介が貼ってある。
うちのブランチならではの特色。
その横にサーシャの惜別の手紙が貼ってあった。
彼女の脱退がいよいよ現実味を帯びてきた。
ソファの傍らにあるテーブルにはノートが。
サーシャへのお別れのメッセージが書けるようになっている。
すでに何人かの生徒さんが書いていた。
わしも何か書こうと思いノートを手に取ってみたが、
気の利いたメッセージがまったく思い浮かばない……。
結局この日はなにも書けず仕舞。

しかし、サーシャよりも数日早く退職するパムの手紙はどこにもなかった。
彼女は辞めることをあまり大っぴらにしていない。
わしだけじゃなく、まだその事実を知らない生徒さんがゴロゴロいるように思える。
彼女のネライは何なんだろう?
釈然としないままレッスンへ突入。

ひとつめはエマ(英)。
のっけのフリートークではまた日頃の鬱憤を愚痴ってみた。
ネタがないときはこれしかない。
悲しい現実。

レッスンへの導入に、エマはわしらに面接の経験はあるか?と訊いた。
生徒さん各自が入社試験や入学の面接の思い出を披露した。
面接でどんなこと訊かれたか?
とか
一番キツかった質問は何か??
とか
面接を成功させる秘訣は何か?
など、エマは立て続けに質問を浴びせてきた。
彼女はこれが得意なのだ。
レッスンは”A FEW QUESTION”のユニット。
わしが苦手とする間接話法がテーマのところ。
刑事と容疑者の会話が載っている。
まずは聞き取りの練習。
エマのマンチェスター・アクセントに苦しめられる(汗)。
ロンドンやノッッティンガムともまた違う。
たとえば、
”Were you on Sawmill Road last night?”
の”Sawmill Road”がぜんぜん聞き取れなかった……。
まだ免疫がぜんぜんできていない。

そのあとは、テキストの会話を間接話法に直す練習。
Ryan: Can I come in for a minute?
Harry: Do you have a search warrant?
という会話を、
He asked if he could come in, so I asked him if he had a search warrant.
というふうに変えていく。
筆記のテストでじっくり書きながら変形させる分には何てことない作業だが、
空で考えて、とっさに口で言おうとするとこれがなかなか難しい。
Ifを加えて……、時制を変えて……、語順を変えて……、元が過去のときは過去完了にして……って悩んでいるとどんどん頭の中がこんがらがってくる。
いろんな要素を瞬時に変換しなくてはならないのだ。
わしだけでなく他の生徒さんも大苦戦。
ノンネイティブの人でこれがスラスラできる人は、相当英語慣れしているといっていいだろう。
その点、わしはまだまだ修行がたりないっすね……。
そんなことを痛感させられたレッスンであった。

ふたつめはパム(英)。
彼女の唇のまわりが腫れていて、ドナルド・ダックみたいな顔になっていた……。
「どうしたの?」って訊こうと思ったが、すんでのところで飲み込んだ。
女の子にとって「顔」は触れられたくないことかもしれないので。
ビタミンの欠乏だろうか??
フリートークでは「先週何やってったか?」を逆にわしからパムに突っ込む。
前回の日記には書かなかったのだが、
実は先週彼女の姿がなくてがっかりだったのである。
さらにサーシャから彼女がまもなく退職することを告げられダブル・パンチ。
パムはしばらく考え、
「沖縄に旅行する予定だったのに、なんだかんだでキャンセルになってしまった」
と思い出した。
「心配しないで。わたしはちゃんと戻ってくるわよ」
と彼女は微笑んだ。
ああ、この笑顔がもうすぐ見られなくなってしまうのか……。
究極の癒しが……。

レッスンはテキストを使わずにパムのアイデアで進められた。
彼女は紙の真中に”TV+MOVIES”と書いた。
これから連想されるコトバをわしらがその周りに書き込んでいく。
Actor/actressとかdirector/producerとかfamousとか。
それぞれのコトバを検討していったあと、パムは紙を隠した。
彼女はみんなが書いたコトバをピックアップしてひとりの生徒さんに見せる。
見せられた生徒さんはどんなコトバだったかをクイズする。
いわゆる連想ゲームですな。
わしが出題させられたのは”rerun”と”screen size”だった。
“rerun”は映画”Back To The Future”を見たときに強烈な印象を残した単語なのである。
ご覧になった方はわかりますね?

これがパムとの最後のレッスンとなった。
そして今、このレッスンのとき彼女が書いたメモがわしの手元ある。
彼女がくれた最後のメモとなった。

こうやって自分のアイデアでレッスンを進められる人がいなくなってしまうのは、実に寂しい。
恋愛は抜きにして、単なる一講師として彼女を見ても素晴らしい素質を持った人材だと思う。
いつでも笑顔を絶やさないし、楽しい雰囲気をつくるのが上手い。
生徒さんから英語を引き出すのも上手い。
彼女が暗い顔をしているのを一度も見たことがない。
彼女の悪口を言っている人を一度も見たことがない。
彼女の替わりなんてこの世には存在しないのである。
そういえば、彼女はこのレッスンのときも自分の退職についてヒトコトも言わなかった……。
誰にも知られずにひっそりと辞めていきたいのだろうか?
このへんの彼女の心の内はよくわからない。
なんにせよXデーに向けて作戦をねらなくては!!





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