猪面冠者日記
今さらだが当分不定期更新

2016年02月03日(水) 消えた声が、その名を呼ぶ

伏見ミリオン座3 19:30〜21:55 138分

 本日は午後から金山近辺でお仕事。が、思ったより早く終わったので、ダイエー寄ってくすむらの油揚げとか味付きたまごとか買って帰宅。太鼓の散歩も明るいうちに終了。うーむ、これは映画に行けちゃうではないか。ちょっと見たいと思っていた「消えた声が、その名を呼ぶ」に行ってくるか。時間的にもちょうどいいし。

 6時半ぐらいにカウンターで受け付けをしたら、なんと二番目。早い! まあそもそもスタートは12月26日からだったもんなあ。むしろよくぞまだやってくれていたと言うべきか。夕ご飯は上映前に、地下鉄で一駅行って西原珈琲店にて。

 登場人物のDQN率の高さから「それなりに面白いんだけどいまいちのれない」監督の一人、ファティ・アキン。そんなファティ・アキンが歴史ものに挑むという。できるのか? と半信半疑だったが、トルコ系ドイツ人であるファティ・アキンが、第一次世界大戦中にオスマン帝国が自国のアルメニア系住民に対して行った虐殺に関する映画を撮る、という点に興味が湧いた。

 冒頭で描かれた穏やかな日常から一転、村にいるアルメニア系の男たちが全員拘束される。そのまま辺境の採石地へ連行され、一年余りの強制労働。過酷な日々に何人もの男が命を落とす中、生き残った者たちも最終的には全員喉を掻き切られて殺された(銃弾の節約のために斬殺というすごい理由)。ただ一人、ナザレットだけは下手人がためらったために致命傷にならずに済んだが、声帯を損傷したために声を失った。なんとしても家族と再会しようと決意したナザレットは、オスマン帝国軍の目をかいくぐりながら、わずかな手がかりを頼りにシリア、南米、北米と、果てしない旅を続ける。

 お察しのとおり、戦争や紛争による一家離散というシチュエーションは大好物でございます。というわけでこの手の映画も見慣れているんだが、歴代のこのジャンルの中でもナザレットの強運と生命力は一、二を争うかもしれん。見た目は優男風で、全然強そうに見えないのに。

 各地でのエピソードはどれもそれなりに印象的なのだが、右から左という感じで、流れや繋がりの方が今一つ。と言うか、前半の、流刑先から放浪を重ねてシリアのアレッポに辿り着くまでの話が濃すぎて、それ以降の話がどうにも薄いのだ。まあアレッポまでのエピソードは実に分かりやすい地獄行脚だからなあ。ここがあるからアレッポの石鹸商人宅での束の間の平穏がよけい沁みるし。そう、この時代のアレッポはまだ多少平和なのよね。それが今じゃ…。ああそう言えばアレッポの石鹸買って下さいっていうツイートがRTで回ってきたりしたっけなんて思い出すだに悲しいわ。

 というわけでファティ・アキンの監督作としては一番好印象だったものの、映画としてはちょっといろいろ惜しい作品だった。ちなみに原題は“THE CUT”。

 帰りの地下鉄を読み間違って、伏見駅で延々待つ羽目に。



 < 過去  INDEX  未来 >


バンビーナ [MAIL] [HOMEPAGE]