ぴよの映画めった斬りコーナー
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【ネタバレも含んでますので注意してねん♪】

2007年09月25日(火) キングダム/見えざる敵

監督:ピーター・バーグ
出演:ジェイミー・フォックス
    クリス・クーパー
    ジェニファー・ガーナー、他
オススメ度:☆☆☆☆−


【あらすじ】
サウジアラビアの外国人居留区で自爆テロが発生。死者100名・負傷者200名以上という大惨事となった。このテロで大切な仲間を失ったFBI捜査官のフルーリーは現地に飛んで直ぐに捜査をする事を主張するが、政治的背景を配慮した上層部からは捜査許可が下りない。一計を案じたフルーリーは、マスコミを利用し駐米サウジ大使を半ば脅すような形で5日間だけの制約付捜査権を得て、自分を含めたった4人でサウジへ向かったのだが・・・


【感想】
昨今増えてきた「米国×中東」のテロを題材にしたアクションサスペンス。
「ヒート」「コラテラル」等で社会派サスペンスを得意とするマイケル・マン氏が製作にクレジットされ、キャストも派手な人気取りの客寄せパンダ系役者と言うより「渋め実力派」を揃えていかにも「骨太」な作り。
この手の作品は小説や実際の事件の映画化が多いですが、本作は珍しくオリジナル脚本だそうです。

日本人は中東系のネタには余り食い付きがよろしくない傾向があると思うのですが、本作は内容自体は完全なフィクションだとは言え、映画冒頭で米国とサウジアラビアの関係や石油利権に対する米国の思惑等の「事実背景」を、コンパクトに判り易く説明してくれます。
だから「米国がどうしてあんなに中東問題に首突っ込んで来るのか、イマイチ判ってないんだよねぇ〜」という方でも、本作のテロネタには割りとすんなり入り込めるんじゃないかな?と思いますね。

正直言うと、ハリウッド製のこの手の「中東モノ」って苦手です。
社会派を気取っていても結局は「世界の平和を守る強大なアメリカ様万歳」な作りが多いと思うんですよね。
そうじゃなければ「米国国家の陰謀を暴いてやるぜぇ」的な自虐ネタで、敢えて観客の興味をそそるだけそそっておいて蓋を開ければ真実などに触れもしない煙に巻いた作りだったり(苦笑)
だから本作も「仲間のFBI捜査官がテロの犠牲に遭った」事で犯人逮捕に執念を燃やす主人公チーム、という立ち位置が見えた時には正直言うと「はぁ。またアメリカ様万歳ヒーローものですか(溜息)」と思ったものです。

本作、そんな簡単な話ではありませんでした。
勿論ヒーロー物としての見せ場もあるのですが、米国とサウジの微妙な関係を背景に「実際サウジでこの手の事件が起こったらサウジは・米国はどういう反応をするかな?」というのを「いかにも在り得そう」に描いています。
・・・まあ、実際はこんな展開は絶対に在り得ないと思うんですが(苦笑)

テロが起こる一部始終を映画冒頭から淡々と見せていきますが、それはそれは身の毛も総立つ程リアルでおぞましい映像が展開される中、テロを監視する首謀者達の横では幼い子供がお絵描きに興じる場面を見せる。
FBI捜査官がムリムリにサウジにやって来るものの、地元サウジ警察ではあからさまな「お客様」扱いで、テロ後でキリキリしている現地にアメ公なんて来やがったら火に油を注ぐよーなもんだろ!ちったぁ〜考えろよ!お前らに何かあったら俺達の責任になるんだゼ(ちっ)・・・という舌打ちが今にも聞こえてきそうです(苦笑)

要するに大局としては在り得ないと思うものの、細かい心理描写や各々の反応等の様子にはかなりリアリティがある。
映像の作りも手持ちカメラを多用した「似非ドキュメンタリー」ちっくな作りでかなり手が込んでいるし、米国側だけでなくサウジ側の事情や心理描写も丁寧に見せて、よくありがちな「ムスリム=絶対悪」のような一方通行な描き方ではなく「米国人だってサウジ人だって同じ人」という見せ方だったのはとても好印象です。

でもこの映画の一番恐ろしいのは何と言ってもラストシーンでしょう。
コレが真実、コレが事実・・・9.11テロの首謀者を捕まえたからもうテロは無くなったか?否。アメリカが中東に出しゃばってフセイン政権を倒したから平和が訪れたか?否。
勿論テロは悪い。では何故テロが起こるのか?そして何故「暴力の連鎖」は断ち切れないのか?

その答えは出ません(出てたら戦争なんて起こり得ない)が、米国人だってムスリムだって「同じ人間」、だから愛する人達を守りたいと思う気持ちは同じ。そして愛する人を殺されたら思う事もやっぱり同じ。
同胞を思う気持ちと同じだけ相手の気持ちも思い遣れれば・・・出来るハズもない理想が頭を掠めて苦しくなりました。

本作はあくまでフィクションですが、「中東・米国の真実を暴く!」なんて物々しいコピーの半ドキュメンタリーな映画よりもよっぽどリアリティを感じる作品でした。中東を題材にした映画は数多いですが、本作は中でも秀作だと思います。







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