ぴよの映画めった斬りコーナー
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【ネタバレも含んでますので注意してねん♪】

2006年08月07日(月) ゆれる

監督:西川美和
出演:オダギリジョー
    香川照之
    伊武雅刀、他
オススメ度:☆☆☆☆+


【あらすじ】
東京で写真家として成功した早川猛は、家業を継いだ兄・稔の勧めもあって母の一周忌法要の為に久し振りに田舎に帰って来た。2人の幼馴染み「智恵子」に稔が密かに思いを寄せている事を承知の上で、智恵子を抱いてしまう猛。事件はその翌日、3人で地元の渓谷に遊びに行って起こった。稔と智恵子が吊り橋にいた際、智恵子が吊り橋から転落して死んでしまう。これは事故なのか?それとも稔が突き落としたのか?裁判で争う事になり、兄を助けようと遁走する猛だったが・・・


【感想】
若手女流監督・西川美和氏の最新作。
彼女のデビュー作「蛇イチゴ」を見た際、その人間描写の巧みさに「この人はスゴい!」と思っていたので、本作はかなり期待の一作でした。それにオダギリジョー君大好きだしぃ♪

・・・こーいう書き出しすると、よくあるパターンが「期待をサックリと裏切られ」になるのが通常ですが(をい)
この監督さん、本当にスゴイですね。脚本も彼女が書いたそうですが、頭の中かち割って見てみたいですよ。

扱っている題材は「殺人か事故か」という法廷サスペンスという形を取っていますが、見せたいモノはサスペンス部分のカラクリ云々ではなくて、あくまでも「人間心理・家族の風景」なんだろうと思います。
「田舎で家業を継いだ兄と、都会で奔放に生きる弟」の関係とお互いの心理状態を巧みに見せて行きます。

とにかく見せ方がウマい。
兄弟の家庭環境や立場や心理状態を多くは語らず、ちょっとした会話や映像で少しだけ見せて観客に印象付ける。
智恵子はどうやら田舎にいた頃に猛と恋人同士だったらしいが、それは2人の会話からそれとなく観客に連想させるに留まっていて、はっきりと明言はしない。
猛と父親には根深い確執があるようだが、それは法事の席での会話やその後の稔とのさりげなく語られる会話の中で、何となく観客に悟らせるように演出されている。

それは兄の思惑や弟の心理状態にまで到っている。
いつも優しい笑顔で周囲に気遣いを見せる兄の、長年に渡り鬱積していた心の闇。そして兄に実家の全てを押し付けて都会に逃げてしまった負い目を感じつつもずっと慕って信頼し続けていたのに、その優しかった兄の心の闇を見せ付けられて兄への信頼に揺らぎが出て困惑する弟。
どちらの立場も状況だけを観客に見せて、その心の内面までを事細かに説明するくだりは1つもなかった。

普通なら「説明不足で訳がわからない」と言われてもよさそうのなモノのなのに、全くストレスを感じない。
最低限の情報を観客に見せる事で最大限の心理効果を狙う、非常に巧みな演出がされていたと思う。

何も語らない。明確な正解を出さない。
それでいい。この映画は「本当は殺人だったのか?事故だったのか?」という事よりも、この事件で兄弟がお互いの心の闇に対峙して、自分の心の本当の気持ちを悟る事に意味がある。
それを観客が自分の今の心理状態で解釈すればいいのだと思う。答えは決して1つではないと思う。

この映画を見る観客の、生まれ育った環境や立場や今の状況で、この映画の解釈は変わるんじゃないかと思った。
でもそれでいいんじゃないかと思う。ラストシーンのカットの切り方も絶妙でした。
大人向けの秀作邦画です。子供には向きませんので、大人の方が1人で見に行って感じて欲しい高度な作品です。






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