囚はれのシネマ日記
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2013年08月17日(土) アルベルティーヌ またの名はアルベルト

かうしてやうやくにして『La Captive(囚はれの女)』
を観ることができた。シルヴィー・テステューはまだ若く細腰で、
いかにもアルベルティーヌの嫋嫋とした雰囲気ではあつた。
マルセル役の男優も悪くはなかつた。
ふたりがドライヴするうつくしい画面にはひきつけられたけれど、
フランス語の科白は音楽のやうに聞き流すだけだつた。
からうじて英語の字幕によつて事態のなりゆきに当たりをつける程度。

結局のところこの映画、マルセルがアルベルティーヌの日々の行動を
細かく監視し、彼女が誰と逢つてゐたのか、どこで何をしてゐたのか、
嫉妬心に苛まれてゆくのを描いてゐるだけのやうにも思へるのだ。
その結果、マルセルは永久に彼女を失つてしまふ。
たしかに原作でもアルベルティーヌへの、やや常軌を逸した
支配欲のやうなものはあつたけれど、それ以外の人物、場所、
芸術作品への興味も並行して描かれてゐたやうに記憶してゐる。

結局のところこの映画、『Le Captive(囚はれの男)』とした方が
ぴつたり来るやうな息苦しい内容だつた。
アルベルティーヌのモデルは実はアルベルトといふ男だつたらしい、
と言ふ説からしてもさうなのだけど。     (つづく)


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