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2005年02月10日(木) 「アレクサンドロスと少年バゴアス」読了

泣いた泣いた! 滝のように涙を流しましたよ!

「アレクサンドロスと少年バゴアス」を読了しました。前回の日記でも絶賛しましたが、バゴアスに語らせる繊細な感情の表現が実に巧みで、何てこと無いシーンで泣かされてしまいました。これは映画とは別物として考えないと混乱してしまう内容かと思いますが、少しでもアレキサンダーに興味を持たれた方にはオススメします。

正直なところ、「大王小説の最高傑作」という呼び名には多少の誇張があるかもしれません。特に中盤では、あまりにアレクサンドロスを美化、理想化しすぎており、読んでいて私などは嫌気がさしてしまう瞬間もありました。民族の大量虐殺や、フィロタス、カリステネスなどの処刑なども、何かとご都合主義な言い訳を持ち出して大王に「仕方なかったんだ」と言わせているのですが、明らかにそんなことが言えるほど、大王は清廉潔白な人ではなかったはずです。私の中では、フィロタスの暗殺に乗じて父パルメニオンも抹殺してしまった経緯などは、「よし! 都合がいいぞ! 一気に片付けてしまえ!」くらいの腹黒さが、大王にはあったのではないか、という認識でいます。これは、語り手のバゴアスが恋に盲目になりすぎて、大王をひたすら擁護しているから、ともいえます。結論としては、名作ではあるけれど、やはりこれは大王に恋をした女性が書いた大王小説です。

このバゴアスですが、とりわけ中盤で完全に「乙女」になりきっていて、ヘファイスティオンへ嫉妬や殺意を覗かせるのまではともかく、他のマケドニア人たちとの反目を受けて、「奴らには理解できるはずもない、僕の大王なんだから」という心理を仄めかすのですが、これがムカつく人にとってはムカつくのではないでしょうか。ただ逆に言えば、(西洋人にとって)敵であるペルシア側のダレイオスの愛妾だったバゴアスを、ここまで魅力的に描いている手腕には敬服します。大王贔屓はともかく、当時の情勢をバゴアス視点によってこそ中立的に書けています。

以下、ネタバレがあるのでお気をつけください。

はてさて、この本は完全にアレクサンドロス受、ということで有名です。どんなふうに大王は受なのか。まさかここまでヘファイスティオンに対し、アレクサンドロスが完璧に受だとは思いませんでした。バゴアスは二人のやり取りを見て、彼らが恋人同士だということに気づきます。この話においては、美しい少年だったアレクサンドロスを、少年のままに抱くことが出来た唯一の男が、ヘファイスティオンだった、という設定です(ただし、二人は同い年です)。そして初めて大王と閨を共にした夜、「ヘファイスティオン、あなたはこの人を少年のままにしておいたけれど、僕はこの人を男に出来る」と思うのです。それ以外ではアレ&ヘファの具体的な描写はないと言っていいのですが、バゴアスを得てから、アレクサンドロスはヘファイスティオンとは寝なくなります。けれど二人は、心の中ではいつまでも恋人同士だった、という設定です。
ヘファファンとしては、絶妙な頻度で登場する彼の描写はいちいち悶絶させられます。もしもアレクサンドロスの生涯を知らず、ヘファイスティオンのことも知らず、バゴアス視点でこの本を読んだらどうなるか。それはそれはヘファイスティオンが憎い男に思えるでしょう。つまり私的には、肉汁たっぷりです。ヘファが大王にとって最後までかけがえの無い人だと知っているからこそ、この長編における彼の不遇に耐えられるのです。しかし、あの肉汁論に賛成できない方が読むと、心が荒む一冊であることは間違いありません。この本はヘファイスティオンも、バゴアスも、アレクサンドロスでさえ、かわいそうです。

肉汁論に関しては、メアリー・ルノーはお手本となるような仕事をされてます。最初はダレイオスの宦官という立場で登場するバゴアスの視点で、敵にして蛮族であるはずのギリシア人アレクサンドロスが、徐々にその個性的な人物像を明らかにしていく様子が、ひじょうに魅力的に描かれていて、脱帽もの。
私はかねてから第三者の眼で見る話というのが好きですが、そういう意味では完璧でした。

彼女の文章にはズバッといきなり斬りつけるような鋭さがあります。それはあまりに淡々としていて、読み落としそうになります。とにかく発想が洗練されています。名場面は星の数ほどちりばめられていますが、他の大王小説では決して心を動かされないような箇所で、落涙しました。
たとえば、ダレイオス王が謀叛に遭い、バゴアスと別れるシーンや、ずっと不幸な境遇に耐えて、愛を見出せずにいたバゴアスが、はじめて異国の王アレクサンドロスに、激しい恋心を抱くシーンなどは、読んでいるこちらまで雷に打たれたような思いがします。

意外にも感動したシーンはカラノスとの出会いのシーン。名台詞が多々あります。ブケファラスとの別れなども、アレ&ヘファファンには理想的で、感動的です。

ゲドロシア砂漠の行軍を、ここまで感動的に書いた大王小説を、私は知りません。荒俣版なんて、ゲドロシアは完全にすっ飛ばしています。でも確かに、ゲドロシアは読んで楽しいシーンではありません。だからこそ、この小説が東征において最も苦しいゲドロシアを、こんなに丁寧に、登場人物の苦しみに焦点を当てて書いていることに感動しました。騎兵は食われないよう馬と共に眠り、妻を失った兵士が子を背負って砂漠を歩く。途中で捨てられた赤子の泣き声を背に、屍や汚物にまみれた道なき道を行く。バゴアスが自分も虫の息のようであるのに、大王に日焼け止めを塗って差し上げるのは私だ、と軟膏を握り締めるシーンなども。
でも一番素敵なのは、やはりここはヘファイスティオンでしょう。

ヘファイスティオンの死も感動的でしたが、私としてはその後の展開の方が胸が痛かったです。

バゴアスは中盤とても乙女ちっくなのですが、たとえヘファエスティオンのファンであっても、「乙女だ!」と単純に批難するよりは冷静に彼の立場になって読むとより楽しめるはずです。それもすべて、結局はヘファイスティオンにはかなわなかった哀しい人、という見方を忘れずに読むと、すべて美しいのです。あまたの男たちに、時には意に反して身を任せてきた男妾。決して授かることのない自分の子どもを思ったり、惨殺された父に今の自分を許して欲しいと語りかけたり、最後の最後まで敵わぬ恋に身を焦がし、ヘファイスティオンを心の中で罵ったり、あるいは彼に助けを求めたり、その全てが最後には後悔のない回想に成就したのだと思うと、ただただ涙が出てくるのです。

また、全体に漲るギリシア、ペルシアの同性愛の気運というか、当時男たちがどんなふうに少年や若者を愛したか、というのがまとまりのいいエピソードで伝わってきて、古代の愛に思いを馳せることが出来ます。

ところでこの本を読み終えて知ったのですが、これまで私が読んできた海外fic、ルーツはやっぱりメアリー・ルノーだったんだ、というシーンがいくつもありました。たとえば、アレクサンドロスはバゴアスに決してヘファイスティオンのことを話さないという、読んだ時衝撃を受けた萌エピソードや、とあるフィクの「夜遅くまで寝室で待つバゴアスだが、そこに大王がヘファイスティオンと共に入ってくる」というシーンはまんまこの小説の中にありました。


最後に、名台詞は沢山ありますが、ひとつだけ気に入ったのをご紹介。大王とヘファイスティオンが世継ぎのために結婚する、というのを知ったバゴアスが、自分には永遠に叶わぬと思い落ち込んだのを見て、アレクサンドロスが言う台詞です。
「バゴアス、許せ。愛からは子にまさるものが生まれる。『夢の息子たち』――覚えておろうか? そのすべてをそなたはもうけた。私はそなたを愛することから初めてそなたの国の民を愛する術を学んだ」

コメントもこちらから。私が旅の途中で撮っただいたいが欧米の風景写真が表示されます(地味に交換してます)



2005年02月08日(火) アレキサンダー公開


原稿も終わり、イベントも終わり、アレキサンダーも公開され、ついに毎日アレキサンダー語りができる時がやってまいりました。 

イベントで、掲示板で、メールで、大勢の方に映画「アレキサンダー」のご意見、ご感想を話していただけて、ひたすら幸せな毎日を過ごしています。

昨年の11月からこの瞬間を待っていた身としては、やっとという感じです。
イベントでは沢山の方に大王本を買っていただいて、「観てきましたよ」と声をかけていただいて、そしてなんと! 既に大王本が二冊出ていて、感動しました〜。書きたいことは山ほどあり、どこをどう手をつけていいのやらわからないんですが、映画の感想やカプ論は、知識量も影響してか、こんなに別れるとは思いませんでした。
中でも、今回スペースを合同でとったタカミさんの発言が一番うけました。

ダレイオス総受

ええ!? いきなりそこですか、タカミさん! と思ったら、板でも、メールでも、イベントでも、「ダレイオスって受ですよね」発言が意外に多くて大慌てです(爆笑)。
そして頭をめぐらせてみると……
うん、確かにダレイオス王は総受ですv

映画「アレキサンダー」中、この男ほど総受が似合うのは、あとはバゴアスくらいです。

現在出ている小説で、彼のことを実に彼らしく書いているのは、先日発売されたメアリー・ルノーの「アレクサンドロスと少年バゴアス」かと思います。この本については、後で熱く語るとして、これほど魅力的に書かれているダレイオス王は他では読めません。もちろん、魅力的といっても、人間的に温かいとか、そういう類のものではありません。もしも映画のあのとても少ないダレイオスのシーンで、とりわけあの「敗戦を意識した横顔」から、何かを読み取ることが出来た人には、MRのダレイオスは充分魅力的に映るはずです。

ダレイオスは、先のペルシア王が狡猾な宦官バゴアス(あのバゴアスとは別人)に暗殺された直後、掠め取るようにして王座についた人ですが、彼自身が腹黒かったとか、陰謀に加担していたということではないようです。かなり、「成り行き」でなった人です。
このため、アレクサンドロスはダレイオスのことを「王位を盗み取った人」と部下の前で演説します。

身長は二メートルもあったとされ、堂々としていて、戦場でも勇敢に戦ったようで、時にはアレクサンドロスと比され立場のないことを書かれますが、彼は決して無能な男ではありませんでした。MRは、彼を「完璧を求める高貴で繊細な男」として書いており、ペルシア人の考えでは王は「雲の上の人」なので、その雰囲気がよく出ています。
彼は大王に打ち負かされ、部下のベッソスと共に逃亡しますが、このベッソスに裏切られ、殺されます。

ペルシアに伝わる伝承として、この二人の英雄は人間味溢れる形で語り継がれています。宿敵ダレイオスが部下の裏切りで死ぬ時に、アレクサンドロスは事切れる間際のダレイオスを胸に抱いた、と伝承は伝えています。
マイケル・ウッドの本からその箇所を抜粋すると、

「あるギリシア兵が投槍を体に受けて瀕死の状態のダレイオスを発見した。兵士は兜に水を汲んできて王に与え、二、三言葉を交わした(ダレイオスは多少ギリシア語を話せたのである)。ダレイオスは、アレキサンダーが自分の母と家族を丁重に処遇してくれたことに感謝した。兵士は、いかにもペルシア人らしいそのことばをアレキサンダーに伝える。同じギリシア側の史料が伝えるには、ダレイオスは息を引き取る直前、自分の支配するペルシア帝国をアレキサンダーに与えると言ったという。ギリシア側としては当然そう伝えたいところだろうから、これは宣伝のために作った話に違いない。アレキサンダーが近づいた時には、ダレイオスは絶命していた。アレキサンダーは、自分のマントを脱いで遺体にかけるが、世界の王とされていた者のみじめな最期に衝撃を受けた様子だったという」

アレクサンドロス/ダレイオスが案外萌えることに、今更気づきましたよ(爆笑)。しかも、かたやアレキサンダーはチビだったというから、140センチ大王攻2メートルダレイオス受。最高! いろんな意味で!

そこで映画に戻ります。映画のダレイオスはバズ・ラーガンが演じましたが、彼の美しい風貌は印象的です。ダレイオスはガウガメラで指揮を執る姿と、その後ベッソスによって殺害された姿しか画面に映りません。ほとんど台詞もありません。

けれど、敗北を悟ったダレイオスの横顔ひとつで、オリバーは彼に十分な人間性を与えています。
ダレイオスの遺体を前に、アレクサンドロスは無言でマントをかけます。この時、ダレイオスの横顔がフラッシュバックします(この顔は、大王の記憶にはないにも関わらずです)。

これだけで、二人の王の関係を表わしたオリバー・ストーン。さすがです。
ダレイオスのことはこのくらいでいいですか(笑)。

それと、やはりクレイトスとカサンドロスは人気のようですね。私も、フィリッポス攻クレイトス受の話なぞは書きたいと思っていますが、中には驚きのカプを提案する方もいて、それはそれで面白いです。たとえば小耳に挟んだ話では、カサンドロス攻ヘファイスティオン受とか! すごいカプだ!
映画を見終わった後で盛り上がったんですが、プトレマイオス/ヘファイスティオンはいいですね〜。プトレマイオスは映画を見ると、いつもヘファの傍にいます。ロクサネの結婚式なぞは、他の将校たちから離れて立つヘファの隣に、プトレマイオスがいます。


ところで、私は今メアリー・ルノーの小説「アレクサンドロスと少年バゴアス」を読み始めています。映画と比較されることが多く、「映画よりいい」と豪語する人もいて疎ましく感じることもありましたが、読み始めて悟りました。これは本当に最高傑作の大王小説です。最初の1Pを読んだ時点で後戻りできなくなり、stunningでした。読み進めば進むほど、一文一文の素晴らしさにひたすら敬服。日本語訳の美しさも特筆に価しますが、メアリー・ルノーの人物描写や、歴史考証の緻密さは凄いです。
宦官の生活、ペルシアの生活様式、ダレイオス王のこと、そして、まだ少年バゴアスは風の噂で聞くだけの、異国の王アレクサンドロスのこと。彼を匪賊、夷狄の王として疑わないバゴアスが、今後どう彼と出会い、どう変わっていくのか、今から楽しみでなりません。
ヘファイスティオンとの関係も、バゴアス視点で読むとどうなるのか、萌えます〜っ。

しかし、やっぱりコリンが苦手な人は多いんですねー。色んなとこで感想を見ましたが、コリンが駄目という意見が多くてびっくりです。私にはあれほど魅力的な男はいないのですが。コリンが苦手なうえに、ブロンドヘアで全然駄目という意見の多さはちょっと切ないです。

他の場所で、「あのフィリッポスと愛人の男は何なの?」とかいう書き込みや、「あの将校はどういう人?」というような呟きを目にしました。中には、この事実を知ってれば、そんな酷評はしないものを……と思うこともあります。うちのサイトに来てよ〜全部教えてあげるから。皆さん、このサイトをぜひ教えてあげてください。わはは。場違いでなければ直リンなんかも構わないです。もともと2ちゃんに直リンされたときも、たいして苦に思いませんでした。いや、もともと2ちゃんに直リンされたところで、私は一連の書き込みを読みには行きませんので。友人に、大筋を教えて貰って対応を決めています。わざわざ自分で不快な思いをしに行ったりはしません。たいてい直リンされると、「はじめまして」のメールが増えたり、アクセス数も増えるようなので、時にはありがたいです。

とりあえず、ご飯を食べてきます。

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2005年02月05日(土)  2/5 アレキサンダー公開 

時間がなくて板の返事が全部できませんでしたが、また帰ってきてから。板にレスはできてませんが、アレキサンダー見た方、遠慮なく感想教えてくださいねー。私と違う意見でも全然構いませんので。

では、イベントで会いましょう! 

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