落ち着こう…… フットボールに人生を左右されてはいけない。今回のこと(敗戦ではなく、チャビまでもが怪我離脱してしまったこと)はショックだったもののこういうことはよくあることです。たとえ今年優勝できなくても、クラブが良い方向へ向かうことを気長に信じるべきですね。 ![]() フェラン・ソリアーノの本を半分まで夢中で読んで、私がバルサを好きになったのも、この人のおかげだったんだとわかりました。'03年には経営破たん寸前まで陥っていたクラブを、彼らが立て直し、現代的・革新的な理念の下に、バルサがバルサたる路線を貫いてここまできた。マンチェスターUとレアル・マドリーを手本として、自分たちの進むべき道を模索し、現在の位置を確立していったというのを知り、私はむしろ今後が不安になりました。次の選挙で会長が代わったらクラブはどこへ向かうのか。この路線から逸脱せずにやっていけるのか。 ここまでで特に面白かったのはポジション取りの話でした。ライバルクラブたちの規定路線、マドリーは「世界一、ゴージャス、最高の選手たち」と銀河系軍団を打ち立て、マンUは赤を強調――夢の舞台(シアター・オブ・ドリームス)、エキサイティングなクラブイメージを演出、そういう中でバルサは自分たちの伝統、歴史を踏襲する形で、どこを目指すべきか。そこでバルサは、カタルーニャの歴史、マドリーとのライバル関係(スペイン国内でマドリーは保守的・主流派であり、バルサは革新的、進歩派とみなされている)に基づき、二つの柱を打ち立てた。 �.好撻�タクルなフットボール 興奮に満ちた美しいフットボール。フェアプレー、スター選手、アーティスティックなフットボール �⊆匆馘�貢献 市民(人々)のクラブ、非営利団体、人道的・社会的活動などのリベラル路線 それがPEPバルサという完璧な形で結実したわけです。監督にPEPかモウリーニョか、という決断を迫られた時、二人と会談を持って最終的にPEPに決めたというくだりも面白かったです。 ユニセフとの契約の前に、中国政府と「北京オリンピック」というロゴを入れる契約締結寸前までいったことは知りませんでした。中国市場に強烈なインパクトを与え、かつ莫大なスポンサー料が入ってくるという意味ではよかったかもしれません。スポーツの祭典を応援するというのはイメージも悪くない。しかし、マドリーがスペイン政府の援助を受けていることに反発する向きがある中で、バルサはじゃあ中国政府の後ろ盾を得る、というのは、クラブ理念に反している上に良いイメージは生み出さなかったかもしれません。 アメリカでフランチャイズを設立し、MLSにメキシコのチバスUSAのようにバルサUSAというチームを作る、という計画も実現しそうになりましたが、結局手を引きました。その背景には、MLSは全チームがアディダスのユニフォームを着るのに、バルサは伝統的にナイキ社製のものを着ていたこと、そしてサラリーキャップ制など、スターを掻き集めるには困難が伴うMSLにおいて、強いチームを作るのは難しく、バルサUSAが結果を出せなければ本家バルサのイメージを損なう危険性があったこと、などがありました。それよりは、米国で本家バルサのイメージアップを目指そうということになったそうな。 バルサUSAが設立されていたら、本家の選手たちも引退前にそちらでプレーして北米生活を満喫したかも これに関しても正しい選択をしたと思います。選手補強の話も面白かった。特にリケルメの話。リケルメはバルセロナに来た瞬間から孤立しまったく馴染めなかったそうです。ある時、クラブ関係者が彼を自宅へ送っていくと、何億も稼いでいる彼のアパートはがらんとしていて、居間にはテーブルと椅子があるだけだった。彼はバルセロナで一年間も家族も友人も作らず一人で孤独に暮らしていたことがわかり、彼のバックグラウンドを調べてみると、アルゼンチンでは、実家から35キロしか離れていなかった街のクラブで、一人暮らしをしながらプレーすることに耐えられず、結局自分が生まれ育った場所のすぐ近くに家を建てていたらしい。その時初めて、クラブ側は実家から35キロ離れることもできなかった選手を、はるばるバルセロナへ連れてきてしまったことに気づいたそうです。 セビージャのヘスス・ナヴァスもそういう選手で、アーセナルが獲得を目指したものの、諦めましたよね。 ガブリエル・ミリートの場合は、「メッシとの友好関係が決定的要因の一つとなった。我々はミリートがメッシと仲が良く、メッシが彼を尊敬していることを知っていた。この二人ならお互いに助け合えるだろうと考えたのだ」 と、やはり性格や人間関係も重視していることも書かれていました。ズラタンと一緒にマクスを獲得したのもこの辺りが関係しているでしょう。ピケの獲得も、彼のポテンシャル(技術とカリスマ)はもちろん、ボヤンとの関係を考慮したのかもしれません。ボヤンが大人たちの間で困り果てていたのは明らかでしたから。ジェラルおまえはぼーたんのえさだったのか…。 メキシコの市場で優位性を得るためにマルケスが果たした貢献度が非常に高いことはよく知られていますが、彼の年齢からいってそろそろ後継者が必要になっている中で、どうしてスパーズにジョバンニDSを出したのだろう、と思っていたけど、クラブは最初から、ジョナタンの方が才能もあるしカリスマもある、ということで、彼の方を重視していたのかもしれません。先日読んだ下部組織コーチの本にも、そのようなことが書かれてました。 ガイ・アスリンはどうでしょうか? 彼はイスラエル代表です。イスラエルの市場がバルサに傾く日も遠くないかもしれません。ガイはカリスマがありますから、世界中のユダヤ人の注目を浴びるかもしれません。 セスクやフラン・メリダの話も書かれていました。セスクに関しては、「将来を気に病んでいる十代の若者に、我々は�爐�みを今後コレコレこーしてトップチームにあげていくんだ�瓩半�来像をはっきり提示して見せることができず、アーセナルはそれをしっかり描いて見せた」ことが敗因だったと書いていました。メリダはというと、「メリダの場合はかなり強引だった。バルサとの契約を破棄できるよう引退したふりをさせ、アーセナルに入る前に丸一年、試合から遠ざけさせた」。結局アーセナルは莫大な金額をバルサに払う結果となりましたが、メリダもよくここまでしましたよね。一年実戦から遠ざかるというのは余程ですよ。このメリダがボヤンら友人たちに会うためにキャンプ地を訪れたりするとは、そうとう図太いですね まあ面白いやつです。帰ってくるなら私は歓迎する。でもたぶん無理だろう(笑)。しかし、セスクやメリダの教訓を得て、メッシやボヤンに対してはしっかりと将来像を説明してみせて引きとめたと書いてあり、ボヤンに対するクラブの過保護ぶりは、そうした引きとめに応じた選手だからというのもあるんだろうと思いました。誰よりも才能があると言われ続け、クラブに忠誠心を見せ続けた選手が結局トップチームに定着できないとなれば、悪しき前例になります。若い選手たちはプレミアのクラブの誘惑に耳を傾け、さっさと出ていく方が賢明だと考えるでしょう。 PEPのことをソリアーノは「クラブの財産」としての価値があると書いていましたが、PEPが以前、ボヤンのことを「クラブの財産」だと言っていたことを思い出しました。確かにボヤンにはクラブの財産としての素質・美点がたくさんあります。才能がある、笑顔が魅力的である、敵を作らない性格、カタラン人である、チームの核となる選手たちとの関係が良好、などなど、彼はピケとは違う形で、またすでにイメージに多少なりと瑕がついてしまっているセスクとは違って、クラブの広告塔になるべき選手です。あとはピッチで活躍できれば文句ないんだけど……。 ここまで色々書いてきましたが、まったく興味がわかない、これらの価値がわからない、というご意見の方もいるんじゃないでしょうか。実はここに書いたことは、業界のトップランナーとしての、グローバル化への適応に関する話であって、こうした経営を行っているビッグクラブは一握り。マンU、マドリー、チェルシー、アーセナル、リヴァプール、ミラン、インテル……。ソリアーノいわく、クラブには三つのタイプがあり、 1世界的なブランドとなり、リーダーを目指すクラブ 2収益を上げながら自国での優勝を目指すクラブ 3自国リーグでトップディビジョンに残ることだけを目指すクラブ 2に属しているのは、バレンシアやスパーズやローマやリヨンで、予想外の成績を上げたシーズンに経営陣の戦略がぶれると、悲惨なことになることが多いのがここに属するクラブ。たとえばバレンシアは1カテゴリに属そうと無茶をして、現在の経営破たん寸前状態を招いているし(現在会長職に復帰したマヌエル・ジョレンテの頃は立場を弁えていたが)、大きな夢を描いて大失敗し消えていったのが、リーズ・ユナイテッドでありレアル・ソシエダでした。一方リヨンは、よくスカパー解説陣も「あと一歩CL優勝に届かないリヨン」という言い方をしますが、ソリアーノいわく、リヨン経営陣はもともとCL優勝など目指していないそうです。もちろん上へ行けば上をいくほど収入は増えるわけですが、主な収入源はアビダルやマルーダに代表されるように、優秀な選手の売却によるもので、今年はやばいものの堅実にリーグ7連覇を達成。頑なに方針を変えない(ブレない)その姿勢は素晴らしいです。 バレンシアやスパーズやセビージャのような中堅クラブのファンが「グローバル戦略になんて興味がない。我々の目標は堅実経営の下、国内リーグで優勝することだ」というなら、それもまたいいと思います。ではなぜそうしたクラブを応援するのか? アスレティック・ビルバオの場合は、クラブ戦略はバスクの民族性を高めることであり、子供たちが下部組織でバスク語を学び、アスレティックがバスク民族の純粋な代表になること。そうした理念に共感できれば、ファンになることは簡単です。ただ、地元のファンでもなければ、数ある中堅クラブの中でなぜそのクラブを選ぶのか、という疑問は付いて回りますね。ソリアーノも書いていますが、ベッカムのファンが、最初はマンU、次はマドリー、次はLAギャラクシーかミランと追いかけるクラブが移っていったように、現在の成績&選手が好きだというだけの場合もあり、クラブ愛を植え付けるのは難しいようです。 ところで、そうしたことを探っていく中で私はリヴァプールというクラブのフロントに対して腹が立ってきました。あのアメリカ人オーナーは何やってるんだろ? 全然一貫した姿勢が見えてこない。バルサはオーナーがいない非営利団体であり、会長を筆頭に経営陣は無給でクラブ愛ゆえに働いているということらしいので、事情が違うのはわかる。それでも、近年の補強&放出の一貫性の無さといったら。永井たんは女性にリヴァプールが人気なことを「トーレスでしょ」とすげなく言っていたけど、それは一つの理由にすぎないと思う。ファンが他のビッグクラブではなくリヴァプールを選ぶ理由は、まず第一にヨーロッパの舞台で競える戦力を備えたビッグクラブであること、第二にスカウス訛りが象徴する、洗練されていない、地方の、それゆえに熱い、港町らしい解放感、KOPスタンドの美しさ、いかにも地域密着型というあの雰囲気、そして絶対的に選手&監督をサポートするファンの伝統的なロイヤルティではないでしょうか。まあつまりは、�狎こΠ譴離侫.鶚瓩�魅力なわけです。アーセナルにも見事なカラーがある。若手主体、ベンゲル、健全経営、バルサと共通するアーティスティックなプレースタイルなどなど。 こういう特徴を生かすも殺すも、経営陣次第です。�爛螢凜.廖璽詛畢瓠↓爛◆璽札淵詛畢瓩任△襪海箸鮓悗蠅忙廚┐襪茲Δ弊鑪�を打ち立てて欲しいものですね。 長々と書いてしまいました。 そして↓数時間前の絶望へ続きます(笑) チャビが怪我をして2週間OUTというニュースに、ただただ落ち込んでしまっています。 さすがにこれは、CLも国内リーグも厳しくなってきたと認めなければならないですね。私が恐れているのは、優勝できないことよりも、この素晴らしものが壊れてしまうことです。この素晴らしいフットボール、この素晴らしいチームスピリッツとドレッシングルームの雰囲気。けが人が多くなり成績も下がり始めれば、雰囲気は変わっていきますからね。ああどうか壊さないで、この最高のバルサを。つまらないですよ、怪我なんかで萎んでしまうのは……。 まだ、機会を与えられたカンテラの子たちが羽ばたくという可能性もあります。チアゴやJDSは肝が据わってるから委縮せずにやれるかもしれませんが、このメンバーの中で遜色なくやるのは厳しいです。 どうも幸運はクラブW杯の決勝でペドロがロスタイムにゴールした瞬間を境に、離れていってしまった感がありますね。でも奇跡はなくても優勝はできます。 ともかく今は、チャビ、ダニ、アビダルが一刻も早く回復して戻ってきてくれることを祈るほかありません。シュツットガルト戦にこの3人が間に合わないとはなあ……。 この子に癒されておくとするか……試合後もアトレティの選手とじゃれたりして、かわいかったね。
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