即興詩置き場。

2007年08月24日(金) DIVA



DIVA


地下鉄に乗ると歌姫が現れて
美しく死になさいと耳元で囁く
死ぬことに
美しさも何もない
私は死にたいのであって
美しくありたいわけではない

DIVA
螺旋の先はいつも尖っている
ささくれた傷跡だけが疼きを残して
その痛みでしか
生きていることを感じられない
瘡蓋を剥ぐことだけを得意として
生者はいつも
私の中で死んでいる
むしろ私こそ
死んでいるのだろう

私は死にたいのであって
美しくありたいわけではない
DIVA
死者にとって
美とは何ですか
迫害と排除がいつもつきまとう
死者にとって美しさとは
苦しみと同義ではないのですか

地下鉄はいつも
美しく人々を運ぶ
歌姫は先頭車両をはみ出て
轢かれて破片となる
DIVA
歌声もともに破片となって
知らぬ間に消えていくのに
それなのにDIVA
車両が駅に到着し
美しく人々が動き出す

DIVA
歌声は届かない
その美しさゆえに
その苦しみゆえに
かすかな祈りのように
消えていくだけなのに



2007年08月01日(水) 夏は夜、月の頃はさらなり



夏は夜、月の頃はさらなり


肌が月光にあらわれて
艶かしく光っています
あなた
あなた、と呼んでもいいのでしょうか、
あなた、
その、触れるまでもなく熱のこもる肌を
触れていてもいいのでしょうか
あなた。

山の向こうでは
私の知らぬ風が吹いて
月の影をなめていきます
あなた
たとえばあなたのその丘の果ては
私に触れられるのを待っているのでしょうか

夏の日の持つ汗の匂い
あなたのその
隠された場所の


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