即興詩置き場。

2005年12月29日(木) はじめての王国



空がまだ青かった頃
王国は細く
鉄塔がその役目を終えてなお
行くあてなく錆びていくように

東の空から鳥たちがやってきて
羽を休める場所を見つけられない
王国は
気づかれずに
そのように

滑りのある雨が降って
王国は低く
針金は血肉が削ぎ落とされた痕
鈍色の姿は角度によって
折れ曲がっているが
傷は見えない
傷はないように見える

空が赤く生い茂ると
羽虫の群れに覆われる
王国の
切り取られた視界の未来と過去に
何か見えるような気配がするが
それは錯覚で

新月は逃げ出そうとして
王国は狭く
いつもゆるされている
その確信を持て余し
どこを見れば良いのか
戸惑いながら
照らすことなく
照らされることもなく
焦がれ続けて

こぼれ落ちる雫は
受け止められるものよりも
むしろ穿ち
浸食し
削り倒す
玉座は死に
消えるものさえ消え失せ
明転する空の影に
怯えながら
朽ちていくように
残り続けて
生き続けて



2005年12月14日(水) わたしの終わりのわたしの



それでも朝は来るので
わたしはまた生まれてしまう
約束されていないことなので
途方に暮れている

わたしは手を持たないので
仕方なく
眺めている
ふりをしてみる
鳥の不思議な動きを少し
まねてみたりする

小さな声が
ときおり通り過ぎる
けれども掴めないので
それはないに等しい
空を見上げると
いつも曇っていて
声は
すり抜けながら
どこか見えない場所へ
消えていくようだ

夕暮れが近づくと
硬質な空気が流れ込んでくる
わたしは少し警戒するが
すぐに気づいてしまう
約束されていない
その
意味のないことに

うつむいて
目を閉じると
途方に暮れながら
夜がやってくる
生きているよと
口ずさんでみるが
呪いしか
生まれない
それもまた
意味のないこと

泣こうと思うが
泣き方を知らない
夜なので
もう誰もいない



2005年12月07日(水) 希望

少しだけ
夢見るように
呼吸してみる
赦されているかどうか
確かめるために

わたしたちはすべて
結ばれていない
それはわかっている
結ばれることはない
それも
わかっている

肺の痛みを知るのは
わたしだけでいい
この星は
優しさに
満ち過ぎている
誰も知らない
夢などない
知らなくていい



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