ある意味困っている。 - 2013年01月11日(金) 私は其のひとをもっと好きになってしまった。 年始に実家に帰ったのだが 本当に二度と会いたくないと思っていた親戚に会ってしまった。 過去のことなんてここ数年の間でもう整理がついたと思っていた。 実際、会った時もコイツ来たのかよ、と思ったけれど 普通に慇懃に接したつもりであった。 ただ母の態度に苛ついたのだった。 母の明らかに「私は傷ついた」という態度。 昔のセリフを繰り返す羽目になった。 「これは私の痛みであってあなたの痛みではない」と。 そのセリフに「私はもう大丈夫。」と言い聞かせて。 実際自分自身ももう大丈夫、と思っていたのだ。 私は平気。強さを手に入れた。笑顔さえ浮かべて。 こんな人、恐るるに足りない。 ところが数日後から様子が変わってしまった。 気持ちが異常に苛々し、胃痛が出て食事が取れなくなった。 考えた。原因を。 しかし原因はやはり、フラッシュバックだったのだ。 この出来事でフラッシュバックを起こしたのだった。 悔しかった。 自分を許せなくて。 思いのほか傷ついている自分に。 やり場のない怒りと虚しさを表現する術が見つからずに。 そうして再び意識が解離する。 そういう状況で臨床をこなすのは危険だと思えるほどだったため 仕事はこの一週間、事務方に回してもらった。 しかし気持ちのやり場はどこにも見つからず。 其のひとに会いたいけど、今の自分を見せるわけにはいかない。 何より、この話をして其のひとに引かれるのが、嫌われるのが嫌だった。 実際会ってこれまでのことをまとまった話として伝えられる、 そういう精神状態ではなかった。 過去にその話をしかけたことがあったのだが 「今はいい」と言われたことがあった。それもずっと気にかかっていた。 でも結局、整理をつける手段として長文のメールを送りつけてしまった。 読まれなくてもいい、と思ったのだ。 書くことで、自分のことがきっと整理できる。 それ以上のことは望めないし、望んではいけない。そう思った。 返信は、ごく短いものであったが、 「会いに来い」ということを示す言葉だった。 迷ったけれど会いに行った。 会った瞬間に抱きすくめられた。人に見られてもおかしくない場所だったのに。 まずその激しさに驚いた。 しかし都合上、あまり時間はなく。 其のひとに「また明日来い」と言われ。 また翌日、会いに行った。 忘れさせてほしい、という私に 其のひとは濃厚に、愛してくれた。 激しい抱擁のあと、やさしい腕の中で。 私に「大丈夫」と言い聞かせ続けた。 鬱になっているときに目を全く合わせずに話す私の癖も、其のひとは気が付いていた。 その日初めて目を合わせた瞬間、「やっと目を合わせたな」と嬉しそうに言った。 過去が過去だっただけに、其のひとは引いてしまうだろう、と思っていた。 しかし其のひとが言ったことは、私にとっては少し意外だった。 「なんとなく予想はついていた」と其のひとは言った。 共に働いていた時の様子や言動から、私の過去の出来事は推し量れた、と。 その上で 「嫌いになんかならない。それも含めてお前が好きだから」 と言ってくれたのだった。 泣いた。 もうひとつ、其のひとから驚くことを指摘された。 年末に少しだけ会って話したのだが、その時はセックスしなかったのだった。 それについて。 「結果的に年末はお預けにしておいて良かったな。」 「お預けにしなかったらお前は多分もっとまずいことになってたと思う」 と言われたのだった。 虚をつかれてハッとした。しかしそれは事実だった。 私は、過去の経験故に 愛欲に溺れる自分を恐らく許せなかっただろう。 そして其のひとに憎悪を感じる可能性だってあった。 そうすれば、恐らくこんな救いは訪れなかった。 きっとずっと苦しかった。 そのことに私は気がついていなかった。けれど。 其のひとは気づいていたのだった。 どうしてこのひとは私のことを理解しているのだろう、と純粋に驚いた。 そんな私に、こともなげに 「お前だって俺の話を聞いてくれたから、俺も決断ができた。 だから俺もお前のことを聞くよ。」 と楽しそうに言って見せた。 ああこのひとは。 この瞬間に私には無くてはならないひとになってしまった。 前からだって、大事なひとだった。 でももっと大事になった。 帰り際、少しだけれど笑うことができた。 「やっと笑った」と其のひとは嬉しそうだった。 その笑顔や、やさしい声音が。胸に刻みつけられる。 いつまでも続けていられる関係ではないこと お互い帰る場所があること 解っているけれど。 あなたの心に寄り添っていたいよ。 大事なひと。 あなたを失うことがこんなにも怖くなってしまった。 でもあなたに出会えたこと。本当に感謝したい。 -
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