DEAD OR BASEBALL!

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Vol.114 2002年ドラフト総括(オリックス編)
2002年12月01日(日)

 セ・リーグでは横浜、パ・リーグではオリックス。全くいいところが無いまま今シーズンを終えた2球団だが、それでも若さに救いを求められる横浜と違ってオリックスはすがるべき若さがない。この状況は相当に深刻で、はっきり言えば1年や2年で浮上するのは不可能に近い状態。若さがない以上、劇的な血の入れ替えでもない限りはチーム力の底辺が持ち上がらないからである。

 現在のオリックスは極めてチーム作りが難しい状況。いっそのこと組み違えた寄木細工のように一度壊してみたら、というのは悪い冗談だが、それぐらいの覚悟を持ってチーム作りに取りかからないとこの泥沼から抜け出せなくなる。真っ当な危機感をフロントは持つべき。



 防御率1位の金田、2位の具を擁する先発陣は「それなり」の上を行くと言っていいレベル。勝ち星が全く伸びなかったのは打線の援護が弱過ぎたせいで、これに7勝1敗、防御率1.93と救世主的存在になったユウキ、7勝を稼いだ小倉までがローテーション確定組。萩原、山口、大久保の豪腕リリーフトリオに今年はさらに自由枠で加藤という豪腕が加わり、徳本、嘉勢、山本を加えた中継ぎ陣は水準以上の評価はやっていい力量がある。

 ただ、川越や小林の低迷、ヤーナルの不可解過ぎる解雇を考えれば、相木や小川まで含めてもやや先発が足りない。鈴木の指名に関してはヤクルトからの横取りという悪評も飛び交っているが、チーム事情には噛み合った指名と考えていいと思う。塩屋は未知数だが、どちらかと言えば中継ぎタイプかも知れない。田村の引退した左中継ぎを強化できれば戦力にはなる。

 ただ、23歳以下の投手が20歳の島脇のみという若さ欠乏症の投手陣で、若さの注入がなかったのは相変わらずというところ。高校卒の投手が移籍組以外では平井以外出てきた記憶のない育成オンチの球団だが、若さを欠いた選手層は持続的な強さを持ち得ないというのが球界の常識。川口で懲りても、素質豊かな高校生は毎年必ず出てくる。こういう状況を視野狭窄というのだが。



 谷以外に誰がいるの?と言いたくなるような野手陣は、もはや散々という言葉を通り越して死屍累々と言いたくなるほどの惨状。谷以外の規定打席到達者がシェルドンと大島だけで、大島より打率が上であるシェルドンの打率が.256という状況を見渡すと、谷の.326に41盗塁という数字まで沼の中に沈んでいきそうな錯覚すらもたらす。

 じゃあ次代の期待株を挙げてみろと言われると、これが迎22歳と平野24歳ぐらいしか名前が出てこない。そもそも五島、進藤、塩崎、副島、塩谷、相川という辺りにもレギュラーと言えるほどの磐石さはなく、手当てを見込むべき若さが投手陣以上に感じられない惨状は、若さを徹底的に嫌ってきたフロントの人災と言ってもいい。セギノールの解雇がやや性急過ぎて感じる程だ。

 はっきり言って補強ポイントは全部。即戦力補強で現状の手当てをしつつ、素質豊かな大物高校生を片っ端から獲得して、チームの根本的な再建を図る。矛盾しているようだがやるしかない。日本経済再生最大の関門は不良債権処理だが、オリックスも困難と言われる不良債権処理を進めつつ、新たなチームの姿を構築していかなければならない。

 投手同様、高校生の獲得にはほとんど見向きもしてこなかった結果が、手当てすら見込めない野手層を作ってしまった。前田と長田の捕手2名、大学生内野手の中島では全然足りない。そもそも1年ぽっきりでチームを再建するのが不可能というぐらい切羽詰った状況なのに、大物野手の指名に対してあまりにも及び腰な気がして仕方がない。

 とにかくいい選手を片っ端から獲るべきだった。高校生なら西岡剛(大阪桐蔭→ロッテ1巡目)、尾崎匡哉(報徳学園→日本ハム1巡目)、長田昌浩(東海大望洋→巨人4巡目)、森岡良介(明徳義塾→中日1巡目)という上位指名組は無理にしても、筧裕次郎(明徳義塾→近鉄3巡目)、松下圭太(三瓶→阪神12巡目)、瀬間仲ノルベルト(日章学園→中日7巡目)、川本竜二(創成館)、榊原徳人(愛工大名電)などなど、いくらでも下位で獲得できる逸材はいた筈。大好きな大学・社会人を見渡しても、北川利之(川鉄水島→横浜6巡目)、大西宏明(近畿大→近鉄7巡目)、紺田敏正(国士舘大→日本ハム6巡目)、鞘師智也(東海大→広島4巡目)など、勇気を出せば選り取りみどりの状態。

 率直に言って、この若さと大物感と契約金を放棄した補強戦略でチームを強くすることができるのか、本当に疑問。散々言われることだが、イチローは高校卒の4位指名選手。目先しか見据えない補強をしていたのでは、今に目先の10円すら拾えなくなるほど足腰は弱くなる。オリックスになって初の最下位という現実、フロントに本当の危機感はあるのだろうか。



 
オリックス
自由 加藤 大輔 投 手 神奈川大 右右 178・80 高校時(九州国際大付)は無名ながら、今では神奈川大学リーグの速球王。この春の全日本合宿で150km近いストレートをガンガン投げ強烈なアピール、世界大学選手権に神奈川リーグから唯一選ばれた。上体が強いフォームに柔軟さ出ればもっと速くなる。
2巡 鈴木 誠 投 手 前ロイヤルズ 右右 191・88 メジャー7年間で16勝31敗の御存知マック鈴木。高角度で投げ下ろされる豪速球とフォーク、スライダーを武器に日本逆輸入。
4巡 前田 大輔 捕 手 神戸製鋼 右右 180・80 社会人1年目だが休部による特例措置でドラフトの対象に。強肩に凄味を漂わす社会人トップクラスの捕手で、ディフェンスはプロでも肩を並べるレベル。
5巡 菊池 俊夫 投 手 仙台育英 右右 179・85 昨夏は三塁手で甲子園に出場したが、結局肩の故障で140km台の速球はお預け。内野手としてのプロ入りになりそう。
6巡 長田 勝 捕 手 神港学園 右右 178・76 通算50本以上の本塁打を放った打はパワーだけでなく柔らかさ兼備の万能型。肩の強さはあるが、ディフェンス面は鍛える必要あるか。
7巡 塩屋 大輔 投 手 元米独立リーグ 左左 173・76 契約金ゼロ枠で獲得。キレのある140km台後半の速球とスライダーを駆使。
8巡 中島 俊哉 外野手 九州国際大 右右 182・78 契約金ゼロ枠で獲得。パンチ力溢れる打力が持ち味。




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