| 2003年10月31日(金) |
狂気と誓約の関係 6 |
10/22の続き。
「アンタ、本気なの!?」
沙羅達がいる場所から更に森の奥に入ったところで、漸くルーティが腕を放す。 思いもかけぬ事態に目を白黒させていたスタンは、それでも素直に彼女の問いに答えた。 短く一言だけ。
「うん」 「うん…って……。さっきのセシリスの話、ちゃんと聞いてた!? ハッキリ言って、理解できるできない以前の問題よ!? アンタだって、解らないって顔してたじゃない!」 「理解はし難かったよ?」
矢継ぎ早に問いただすルーティに、スタンがサラリと肯定した。
「だったら……」 「でもさ」 「?」 「でも、沙羅の事を知る良い機会になると思うんだ。沙羅って自分に関する事、何も喋らないだろ?」 「……それは私たちだって同じじゃない」
自分たちだって肝心な−突っ込んだ事までは打ち明けていないはずだ。 ずっと、それこそ数年来の付き合いのような気安さが存在しているが、実際にはほんの2・3ヶ月程度。 徐々に各人の背景が解り始めている感はあるが、それでもまだ全体の3分の1にも満たないだろう。 いずれ接点がなるなる者同士、それくらいの距離感でいた方が楽で良い。 今現在、旅を続けていかねばならない仲間なら尚の事。 精神部分(もしくは過去)への介入は避けるべきだ。 内面を知るという事は、ある意味とても恐ろしい事だから。 じゃあ、何故セシリスの時はあからさまに興味を示したのかと問われるかもしれない。 あれは、彼とのこれ以上の関わりはないと確信していたからこそ。 もし、彼とも今後顔を突き合せねばならなかったとしたら、止めていただろう。 それにもう一つ、沙羅絡みでの理由があったから。 けれど。
「とにかく、私は反対。これ以上深入りすべきじゃないわ。―――って、何よ、そのアホ面は?」 「あ…いや、ルーティも偶にはまともな事言うんだなと思って」 「どーいう意味よ?」
ポカンと口を開けたままのスタンに目を眇める。 全くもって失礼な奴だ。
「俺だって、いつもなら他人の過去を根掘り葉掘り聞きだそうなんて思わないさ。誰にだって、触れられたくない傷は必ずある。……俺にだって」 「スタン?」
最後の呟きと共に、スタンの瞳に暗い色が宿る。 言葉は聞き取れなかったが、色の変化には気付いたルーティが眉を潜めた。 どんな時でも明るい色を忘れない彼らしからぬ、それ。 けれど次の瞬間には消え失せていて。 意味を問うタイミングを逸してしまう。
「でもさ! 今回は沙羅から話を振ってきたんだし、だったら乗ってもいいかなって。俺、沙羅について、もっと色んな事知りたいし。多分リオンもそうなんだと思う。だって、このままだと、本当の意味で【沙羅】って人間を知らずに終わっちゃいそうだ。勿論、聞いたからって本当に解るかどうかなんて解らない。でもチャンスだから。【ここ】と【あそこ】。【彼等】と【俺達】。明らかに違う二人の彼女。もしかしたら、今だって違うのかもしれない。だったら、何とかして【違い】の中にある真実の片鱗を見つけたいんだ」
真剣に言い募るスタンに、ルーティは思わず呆気にとられた。 確かに、自分達といる時の【沙羅】とセシリス達といる時の【沙羅】はどこか違うというのはルーティも感じていた。 雰囲気や言動や。 もっと言えば、沙羅そのものが別人であるかのように。 そんな可笑しな事を思ってしまうほど、何もかもが違った。 それほど彼等と親しい間柄なのだと説明されれば「そうなのか」と納得してしまうかもしれないが、それだけではない【何か】が横たわっているような。 だからこそ、あそこまでの空気が彼等の周りを取り巻いているのではないかと。 そんな気がしてしまって。
(それにしても)
バカはバカなりに、気付いてはいたんだなと感心する一方、小さな小さな棘が彼女の胸を刺す。 それ程までに聞きたいのかと。 沙羅を理解したいのかと。 けれどルーティはあえて痛みとその意味を気にしない事にして。
「……勝手にすれば」
暫し互いに見つめ合い、折れたのは彼女だった。
「ルーティ……!」 「ただし!」
嬉しそうに顔を綻ばせるスタンの眼前に人差し指を突き出し、忠告。
「話が全部終わっても、後悔や泣き言は聞かないからね!」 「もちろん!」 「威勢の良いその返事が嘘にならない事を祈ってるわ」
言い置いて、先に踵を返す。 その後姿に、「言わないよ!」と返すと、スタンもまた後を追った。
「スタンさん、ルーティさん!」
元の場所まで戻ると、待ちかねていたと言わんばかりに、すぐさまフィリアからの声が飛ぶ。 沙羅を除く他の二人も待ちくたびれたといった様子だ。
「それで? 決着はついたのか?」 「ああ。聞かせてもらうよ。ルーティもそれで良いよな?」 「……ええ」 「……だそうだ」
二人の意志を確認すると、組んでいた腕を解き、リオンが沙羅に向き直った。 フィリア・ウッドロウ・スタン・ルーティもそれに倣う。 受けて沙羅は一度瞬き。
「じゃあ、私側の事情に行きましょうか」
唇を湿らせ、語りだした。
| 2003年10月22日(水) |
狂気と誓約の関係 5 |
10/13の続き
「え〜〜と。どうコメントしたらいいのか……」
何故か代表者よろしくスタンが口を開くが、それ以上続かない。 困ったように周りを見回してもみるが、フィリア達も同様の表情で顔を見合わせるばかり。
気持ちは、解る気がする。 けれど、実際セシリスのような体験をした事がないから……。 しいて挙げればウッドロウがそれに近い経験(父親を殺害されている)をしているが、当然ながらセシリスとは全く同じという訳ではない。 それに、ウッドロウには最初から王たる道が存在していた。 つまり、民に平和を約束し、国を導く心構えが。 けれどセシリスは違ったのだと。 願いは全く別のところにあったのだと。 そう言われてしまうと、ウッドロウは自分と彼を同じように考える事ができなくなる。
「まぁ…別に理解しなきゃいけないわけじゃないから。ただ、当時のセシリスはそういう感じだったんだなーってのを前提に話を聞いて欲しいだけ。……言い当てたリオンには、正直驚いたけどね」 「……解らないこいつ等が愚鈍なだけだ」 「解る貴方の方が珍しいんだよ」
言い捨てたアメジストの瞳に暗い影を見つけ、沙羅は苦しげに瞳を細めた。 彼の想像が当たったのは、恐らく自分自身を重ねて見てしまったからだろう。 セシリスと選択肢は多少違えど、彼もまた近い将来、選ばなければならない。
選ぶ前も、選んだ後も。 どちらの彼を思っても、気分が塞ぐ。 せっかく仲間−友と呼べる人間に巡り逢えたのに。
「……本当に、残酷な事をする」 「何か言ったか?」
誰にとも知れぬ小さな小さな沙羅の独り言。 聞き咎め、怪訝そうなリオンに何でもないと首を振り。
「で、どうする? 【誓約】絡みで言うならば、今のはあくまでもセシリス側の事情。もし先を続けるなら、今度は私の事情も必要かなーと思うんだけど。【誓約】までいくつもり、ある?」
悪戯っぽく笑いながら、訊ねる。 『止める』というのなら、その方が良いだろう。 ハッキリ言って、沙羅の事情もセシリス同様、楽しいものじゃない。 そんな事情が【前提】としてある【誓約】もまた然り。 正直、オススメしたくない。 聞かされた方も困るだろうし。 多少ひねくれ者が混じっているとはいえ、総じて皆、優しく真っ直ぐな人たちばかり。 自分やセシリスの歪んだ【事情】に理解を示せと言っても無理に決まっている。 いや、むしろ解って欲しくない。 解らない方が、良い。
「さあ、どうする?」
思いながらも、再度問う。 皆が迷う中、真っ先に反応したのはリオンだった。
「僕は聞く」 「って、ちょっと、本気!?」 「当たり前だ。僕は冗談は嫌いだからな」 「そうじゃなくて!」
まるでリオンの正気をも疑っているかのようなルーティの言い様に、リオンはさも当然といわんばかりに返した。 更に。
「第一、最初に興味を示したのは僕等−というかお前達だろう。だったら、例え内容がどうであれ、最後まで聞くのが筋というものだ」 「……」
幾ら最初に沙羅からのお許しがあったとはいえ、止められたものを止める事なくねだったのは、確かに自分達だ。 だが、そんな風に『聞くべき』と諭されても困る…という、沙羅とリオンを除く者達には共通の沈黙だったはず、なのだが。
「……そうだな」
違った者が一人いたらしい。 両の蒼の目を閉じ、リオン曰く『軽い頭』を上下に振りつつ唸るように口にする青年。 言わずもがな、スタンである。
「確かにリオンの言う通りだ。中途半端で投げ出すのは一番良くないって、じいちゃんも言ってたし!」
騙され易い…いや、丸め込まれ易い…いやいや、純朴な人間が一人いたのを失念していた。
中途半端は良くない。 確かに良くない。 しかし、それとて時と場合と内容によっては許されるのでは?と皆が皆感じたとしても、責められはしまい。 それが例えスタン曰く【じいちゃん】だったとしても。
「……」
今度の沈黙は明らかに【呆れ】を含んだものだろう。 沙羅は可笑しくて堪らないのか、口元を手で覆いつつ肩を震わせている。
「私も聞きたいですわ」
スタンの【じいちゃん】発言から真っ先に立ち直ったのは、意外な事におっとりフィリアだった。 短く意志を伝えた後、暫し考え付け加える。
「リオンさんではありませんけれど、聞きたがったのが私達である以上、最後まで責任を持つべきだとは思います。それが始めた者に与えられる責務です。それに…こういう言い方はおかしいかとも思いますが、ここまで来て降りるのは気分的にすっきりしませんもの」
リオンとスタンに追従するかのようなフィリアの発言。 続けて。
「そうだな。私もやはり気になる」
ウッドロウまでもが。
「ちょっとちょっと! あんた達、本気なわけ!?」
思わぬ反乱に、先とは違った意味で呆然としていたルーティが我に返った。 彼女自身はこれ以上聞くつもりはなかったし、皆もそのつもりだと思っていたため、今回のコレは意外以外の何者でもない。 思わず詰問するような口調になってしまったが、それでも彼等は躊躇いなく頷いた。
「信っじらんない……」
こめかみを押さえ、頭を振りかぶる。 次いで、きっと顔を上げるとスタンの腕を掴み。
「ちょっと、アンタ来なさい!!」 「えっ!? お、オレ!!??」
何故か再び代表者よろしく、素っ頓狂な声を上げた彼だけがルーティに連れ去られていった。
| 2003年10月15日(水) |
SWEAT&TEARS 2 |
テニスの王子様『SWEAT&TEARS 2』をプレイ中〜プレイ後であります。 前回の『1』もプレイしておりまして…なんと申しましょうか、「コレって恋愛シュミレーションじゃないの?」との疑問は今回も継続中(笑) 名目上は部活シュミレーション。確かにそうはそうなんですけど、実際にプレイしてみるとどう考えても……(笑) 前回とは違って、今回は1年間という時間が設けられてます。 その為、学校行事も幾つか追加されています。 3年生からお土産を貰える修学旅行やバレンタイン、卒業式等々。 各キャラとのEDは3年生の卒業式後に行われます。 さて、私ですが。 私は最初から最後まで『不二周助』しか目に入っていませんでした。 で、彼を上手く落としたわけですが、卒業式後、彼の家に御呼ばれした際、言われました。 言われたんですよっ。 告白されたんです!1(>▽<) 最初、冗談みたいなやり取りをしてて、けど最後に「好きだよ」とv 恋愛シュミレーションにありがちなドアップスチル付(笑) ね? コレでこのゲームが恋愛シュミレーションもどきであるとお分かり頂けたでしょう? 他のキャラでやっていないので、不二以外のバージョンは解りませんが、今現在興味があるのは手塚と跡部。 特に手塚はEDの予想がつかなくて楽しみです。 あと、やっぱり男主人公バージョンもねー。 コレもどうなるのか、興味津々。 一応、再び不二攻略で着々と進めていますが、果たして結末は……!? やはり女主人公同様、「好きだよ」と言ってくれるのでしょうか!?(←それはどうだろう…) 今からドキドキがとまりません(笑)
| 2003年10月13日(月) |
狂気と誓約の関係 4 |
10/4の続きです☆
「例えはともかくとしまして、セシリスさんに強大な力があるのは確かだということですわね。そして、大切な方を亡くされたせいで生まれた憎しみと狂気」
先へと話を進めるためにも、一度纏める必要がある。 果たしてそう思ったのかどうか、フィリアが今までの沙羅の話を簡潔にして述べる。
「そこから繋がる破壊衝動」
ウッドロウが付け足す。 受けて、「だが……」とリオンが瞳を細めた。
「だが、あの時の口ぶりだと、その狂気は不発だったようだな?」 「まぁね。彼自身、そうならないように努力していたし。それに、あの国と平和は確かに彼の大切な者達の命を吸い取ったけれど、壊す事なんてそもそもできなかったはずなのよ。例えばそういう事態になっていたとしても…ね」 「あ…何だ、ちゃんと解ってたんだな。逆恨みにも似た考えだって。生きてる人間の方が大事だって。ましてや、彼は民を守るべき王様だもんな!」
スタンがホッと胸を撫で下ろした。 セシリスの境遇に同情を覚えていたスタンだったが、続いていく話に次第に怒りにも似た感情を覚え始めていたのだ。 あまりにも、それらが理不尽すぎて。 けれど、沙羅の言葉はそれを覆すものだったから。
(そうだよな。大切な人を失った悲しみは解るけど、だからって、全てを壊すなんて、どう考えたって無茶苦茶だ。関係ない人達まで巻き込む事になるんだから)
「……違うな」 「えっ?」 「あいつが実行できないと思ったのは、そんな博愛主義めいた感情からじゃない。ましてや【王だから】等という責任感からでもない」
スタンの安堵を完全に否定したリオンが、淡々と彼自身の推測を述べていく。 沙羅は興味深そうに彼の話に耳を傾ける。 その彼女に向かって、リオンが確認した。
「【壊せない】理由は、【それをしてしまったら、彼等をも壊してしまう事になるから】だろう?」
沙羅の口元に、淡い笑み。
「何よそれ? 意味解んないんだけど?」
眉を寄せるルーティを鼻で笑う。 そんなリオンの態度にカチンときたのか、食って掛かろうとしたルーティをフィリアが宥めにかかるが、中々収まらない。 果てにはフィリアにまで矛先を向けようとする。 リオンは益々呆れた視線を送りつつ、「先を聞きたくはないのか?」と腕を組み直す。 ルーティは不満そうな表情をしつつも、多勢に無勢と見たのかどうか、周囲からの無言の圧力に渋々従った。
生意気な子供が披露する勝手な憶測だが、ここで止められてはどうにも気になって仕方がない。 ましてや『理解できないから聞くのを止めた』等と思われたら癪だ。 それに、ここにいる誰よりも件の人物の傍にいて、最初に話を振った沙羅が黙っているのも気になる。
(まさか、こいつの憶測が当たってるなんて事、ないわよね……?)
湧いた疑念に、まさかね、と否定し直す。 どちらかといえば、スタンと同意見だったルーティにとって、リオンのそれは突拍子もない上に、抽象的過ぎて理解できない。 困惑したような表情から見て、恐らく他の面々も思いは同じだろう。 というより、沙羅がこの話を始めた時点で、既に信じがたい内容ではあったのだが。 まあ、そんなこんなで一応ルーティも聞くスタンスをとる。 リオンは静かになったのを確認すると。
「まぁ、どちらかと言えば感覚論めいたものだからな。無神経な輩には難しいかもしれん」
(ああ、また余計な事を……)
若干青くなりながら、スタンが隣のルーティを伺う。 再び先のような騒動になるのでは、と危惧したのだが。
(あれ?)
予想に反して大人しい。 こめかみに青筋が入り、頬は引きつっているが、それ以上のリアクションを起こすつもりはないらしい。 次いで、ふとずらした視界に飛び込んだ光景に思わず苦笑してしまう。 ルーティが左腕をきつく掴んでいたのだ。 どうやら必死に怒りを抑えていた努力の賜物だったらしい。
「セシリスは壊れる事を恐れた。義姉と親友の犠牲の上に成り立った平和(モノ)は確かに憎い。けれど、彼等の想いが存在するからこそ、愛しい。……平和を壊してしまう事は、即ち、二人の【想い】をも壊してしまう事。否定してしまう事。【死】を意味なきものにしてしまう事。故に【壊せない】」
一気に続けた後、リオンは軽く息をつく。 スタン達は口を挟まず黙って話を聞いている。 彼等に浮かぶ表情は様々ではあったが、納得しかねている…意味を理解しかねているのは一目瞭然だった。 そんな彼等をある意味うらやましく思いつつ、リオンは最後を締めくくった。
「ヤツはあくまでも自分と死んだ義姉や親友の事しか考えていない。単なるエゴイストだ」
嘲笑めいた笑みが、知らずリオンの口元に上る。
【エゴイスト】。 全く、何てそっくりなのだろう。 恐らく自分も【彼女】と世界(もしくは数多存在する他者、あるいは平和)を天秤にかけたならば、迷わず前者をとるだろう。 例え周りから非難される事になっても、後悔はしない。 自分にとって大切なのは、唯一【彼女】だけだから。 何を敵に回しても…構わない。 それぐらいの【想い】。
(だが………)
だが、セシリスと違う点が二つある。 絶対に失うつもりはないし、させない事。 そして、失った後の世界を【愛しい】等とは到底想えないだろう事。
「……驚いた。良く解ったわね」
感心したような沙羅の声。 反して、想像さえしていなかった【理由】に4人は呆然としている。 リオンが前置きした通り、あまりにも感覚的、いや、考え方・捉え方の違いに、自分達の思考が追いつかない。 考えたそもそもの人物の思考回路も、容認しているしてしまっている沙羅も信じられない。 更に言えば、それを見抜き、サラリと言ってのけたリオンも。
(何だか、やっぱり厄介な話に興味を持ってしまった気がする……)
現時点で既に背負い済みな厄介事をも思い出し、皆に乾いた笑みが漏れる。
| 2003年10月10日(金) |
ファミ通文庫5周年記念プレゼント |
当たったんですよぉ〜〜〜(感涙)
数年に一度しか抽プレなんて当たらず、それだけでも嬉しいのに、当たった物が物だけに嬉しさ倍増よ!! もうもう!
ジューダス〜〜っっvvv リオン〜〜〜っっvvv
ああ、もう。どうしましょう!!(>▽<)
え〜〜と。ちょっと落ち着いて(^^;) 知ってる人は知ってると思いますが、一応賞品の説明を。
ファミ通文庫として刊行されている『テイルズオブデスティニー』の内の一作品。 【テイルズオブデスティニー2 蒼黒の追憶 上・中・下】。 この表紙イラストを使った『B5ハードポスター3枚セット』が賞品でございますv
普段あまりアンケートとか懸賞って応募しないんですが、今回はどーしても欲しくて出したのです。 ポストに入れる時に心底願いましたさ。 「他のモノはとりあえずどうでも良いから、これだけは何としても頼む!!」と。 『当選者には9月下旬に賞品発送(当選発表は賞品の発送をもって替えさせて頂きます)』と書いてあったにも関わらず、10月に入っても送られてくる気配がないため、やっぱり駄目だったかぁ…(涙)とガックリしていたのですけど。 どうやら見事栄冠(←?)を勝ち取ったようです☆
ジューダス……リオン……vv(←見惚れ中)
しかし……。 ここで幸運を使い果たしてしまった気がしてなりません。 大丈夫かな、今後……(汗)
| 2003年10月04日(土) |
狂気と誓約の関係 3 |
9/28の続きです〜〜。
衝撃の中で立ち直り、即座に切り返したのはリオンだった。
「つまり、国に対して害となる事…例えば、政務に関する悪問題や、悪ければ王主導の乱が起きるかもしれないという事か?」 「だったらまだ可愛いんだけどね。残念ながらもっと酷い事態が起きるわ」 「それ以外に、何がある?」 「……滅びる」 「滅びる?」 「そう。彼が本当に狂気にその身を委ねたのなら、あの国は一夜にして滅びの道を辿るでしょう。……彼が、それを望むから」 「ちょっと待った! 幾らなんでもそれは無理じゃない? だって、あの子は王様でしょ? あの国を愛しているのは、私でも解ったわよ? そんな人が、幾ら狂気に呑まれたからって国を壊したりする? そもそも、【憎しみ】って言葉自体があの子と結びつかないんだけど!?」
信じられない、と頭を振るルーティ。 他の皆も彼女に同意するかのように一つ頷いた。 それを見て、沙羅は微苦笑を浮かべ。
「でも、本当なの。彼はあの国を人を平和を愛してはいるけれど、同時に同じくらいの強さで憎んでもいるから」 「どうして……」 「彼は建国者だと聞いているが……。戦に終止符を打った者だと。そんな人間がどうして国を民を、何より平和を憎む?」
フィリアとスタンが呆然と呟く。 そして、民を率いる王となったウッドロウは『わからない』と疑問を述べながらやはり首を振る。 ルーティもまた眉根を寄せているが、彼等の反応とは別に、リオンだけが無表情にその話を聞いていた。 無表情? いや、彼もまた密に眉を潜めていた事に、沙羅は気付いた。
『彼等が不思議がるのは当然の事』と、沙羅の苦笑は深まる。 自分だって、あの国の現状を、豊かな民の笑顔とそれに応えるセシリスのみを見ていたのなら、きっと信じられないだろう。 【愛している】のに【憎んでいる】なんて。 彼からはそんな雰囲気を微塵も感じ取れないのだから。 でも、自分は【あの頃】を知っているから。 あれから暫く続いた彼の【変化】を見ていたから。 あってもおかしくない感情だと、そう納得してしまう。 納得できてしまう。 だって、彼は。
「平和と引き換えに、彼は全てを失った。王という地位など望んではいなかった。平和を求めたのも、数多の苦しむ人々の為じゃなかった。彼が望んだのは、唯一つ」
区切り、静かに告げる。
「愛する義姉と、愛する親友と共にある、平凡で穏やかな日常」
一瞬の間の後、台詞の裏に隠されたものにリオンが気付く。
「得られなかった…という事か」
呟くそれは、疑問系ではなく、断定。 口元に考え深げに指を当て、沙羅を見遣る。 彼女の漆黒の瞳には、確かな哀しみ。
「そう。彼は得る事ができなかった。愛する義姉は、戦いの中で彼を親友を庇い、死んだ。彼等が共にある未来を夢見ながら。弟にそれを託して。親友は彼を想い、その命を救うために彼に殺された。自分の分も生きて、平和を見届けて欲しいと託して」
静かに、鎮魂歌を歌うようにもたらされた真実に、スタン達の表情も沈みこむ。 そんな過去があるようには見えなかった。 明るく、子供っぽさを多く残した、王様に見えない王様だと。 時折、大人びた−もっと言うならば老成した−表情などをみせる事はあったが、王という立場上、身に付けたものだろうとそう思っていた。 悲しみも、絶望も。 関係ないような気がしていた。 本来ならば、そんなはずはないのに。 建国者であるのならば、戦の最中に、彼に何が起こっていてもおかしくはない。 沙羅が告げたような事とて、あったかもしれない。 けれどセシリスはそれを微塵も感じさせない人だったから。 考えも、しなかった。
「―――あの子はそんな事、願っていなかったのにね」
沈黙は、重苦しくて。
「平和を得た代わりに失ったもの。大切なもの。国と民がそこに在ったが為に、失ってしまったもの」
『だから、壊したい』
それが彼の内に秘されていた昏い望み。
「……だが、幾ら潜在的な憎しみが存在し、尚且つ狂気に囚われたとしても、一夜で国を滅ぼすという喩えが本当なら、相当なモノが必要だろう。政務や乱では時間がかかりすぎるからな」 「ふふふ。そうね。【一夜で】というなら相応のシロモノが必要よね」 「ああ。だとするならば、【それ】は一体何だ?」 「それはね、彼が持っている強大な力」 「強大な力?」 「王という権力ではなく、ですか?」 「ええ」 「他に何があるんだ?」 「今、皆が持ってるソーディアン。それに似たものよ。ん? んんん?? ……いや、どちらかと言うと、神の目の方が近い、かな?」 『神の目、だと!?』 『それに近い…力!?』
驚愕に叫んだディムロスを始め、ソーディアン達がどよめく。 彼等は今、神の目の奪還を目的に旅をしている最中だ。 その脅威はソーディアン達によってマスターにも説明されているが、彼等は本当の意味で、その脅威が理解できていない。 どれだけ切羽詰った強い口調で代わる代わる説明されても、結局のところ、実際を目撃していないので、実感として捉える事が難しい。 千年前の事実だと実例を挙げてみても同じ事。 だからディムロス達は気色ばみ警戒をあらわにするが、スタン達は彼等ほどの動揺を見せない。 見せる事ができない。 無論、驚いてはいるだろうけれど。
「いや、別に神の目そのものってわけじゃないから。大体それくらいの威力があるんじゃないかな〜っていう、物の例え」
『脅かしてごめん』と沙羅が謝ると、ディムロス達は幾分安堵したように溜息をついた。 あんなものがもう一つ存在したとしたら、それこそ世界の破滅が無限に起こせてしまう。 しかし……。
『それ程の力を持っているようには見えんかったがのう』 『それらしい物のどこにもなかったし……』 「ああ、それはそうよ。だって、彼自身が【力】なんだもの」 「は?」 『どういう意味だ』
クレメンテとアトワイトの問いに沙羅が答えると、間髪入れず、スタンの間抜けな声とディムロスの訝しげな声が重なる。 その絶妙なタイミングに、「流石ソーディアンとそのマスター」と変なところで思わず沙羅は感心してしまった。
(息がピッタリなのは、戦闘においては重要だもんねぇ)
……本当に、今改めて感心するような事柄ではない。
「つまりね。彼の身体に【力】が宿っているの。力の源となるものが。例えるならば、モンスター達の身体の中にレンズが在るようなものかしら」
不穏な例えに、今度はソーディアンのみならずスタン達も顔色を変えた。 今、この世に存在する魔物は、全てレンズによって変質した動物たちばかりだ。 凶暴な性質と、考えられないくらいの力。 今までの旅で散々相手をしてきたそれらは、はっきり言って厄介な事この上なく。
(そう言えば、人間でレンズを飲んだが為に変質し、身を滅ぼしたものもいたような……)
思わず件の人物がそうなる様を思い描いてしまい、口元を押さえる。
「沙羅…例えが最悪に悪趣味だぞ……」
心底嫌そうな顔をしてリオンが呟くと、沙羅は「そう?」と首を傾げる。 解りやすい例えだと思ったんだけどなぁ…と。
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