ローゼライトの日記
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2005年09月01日(木) 蝉の声

忘れられない音がある。
夏が来る都度に思い出すその音は…。
聞くたびに、胸が熱く…そして締め付けられそうになるほど切なくなる。
それは、ある一夏のヒグラシの声だ。
俺が王国に来て、みんなと出会った夏の日の。

今でもはっきりと覚えている。
夜と朝の狭間の時間に染みいるように響き渡ったヒグラシの声。
鳥も鳴かず、他の音も、雑音も一切聞こえない。
静寂と不思議な清々しさに満ち溢れた魔法のような時間だった。
俺はその時間がたまらなく好きだった。
長くはない…朝がくるまでのほんの一時だけの希少な時間。
もともと、早寝早起きだったこともあって。
よくヒグラシの音を聞きながら、王国の浜辺を散歩したものだ。
…俺の愛しい人は蝉が苦手だったから嫌がってたけど。
…その嫌がる顔も…俺にとってはとても愛しかった。


…あれから何度目かの夏が来て、去っていた。
けど、あのヒグラシの音に出会うことはなかった。
魔法の時間は、あの時だけのものだったのだろうか。

もう一度、…できればもう一度、あの音を時間を味わってみたい。
…そう思うのは俺のわがままだろうか…。




ローゼライト