TOI,TOI,TOI!


2009年04月02日(木) 指揮をしたい人とすべき人

前回の日記で書いた指揮者のトーマス・ヘンゲルブロックですが、なんと、ハンブルクの北ドイツ放送交響楽団(NDR Sinfonieorchester)のシェフ(首席指揮者)に就任だってさ!

NDRっていうとクリストフ・フォン・ドホナーニの後任になるんですね。すごいね。ちなみにこのドホナーニって、30年以上前にフランクフルト歌劇場のシェフだった人ですけど、さらにもっと若いときに、当時のフランクフルトのシェフ、ゲオルク・ショルティに呼ばれてここで下積み時代を送ったんだそうです。そのショルティだってすごく若いときにブダペストのオペラ座のコレペティ君としてスタートしたらしいすよ。
ちなみに、バンベルク交響楽団のシェフ、ジョナサン・ノットも、フランクフルトで下積みした人です。って私の自慢になることじゃないですけど。

オペラ座って、とてもえらいシェフが一番上にどーんていて、そのほかにコレペティとかカペルマイスターとかっていう、あんまりえらくない人たちがいつか下克上を狙って・・・?、いつかえらくなる日を夢見て、あんまり日の目を浴びないところでがんばってるんですよねー。まあ時代の変化にあわせて、最近は昔に比べてカペルマイスターは振りすぎらしいですけど、そういう内情はここでは省略・・。

で、ま、自分がオペラ畑なんでオペラ贔屓(びいき)の発言とは思うんですけど、オペラを一所懸命勉強してちゃんとモノになった指揮者には、ぜひともオペラの道を究めてほしいと思うです私。ノット氏なんてオペラ座出身だなんて今では信じられないよねえ。私ノット氏は指揮者として好みな方なので、残念。でもやっぱシンフォニーでコンサートツアーで世界中いってさ、目立つし主役だし格好もいいしねえ。もう面倒くさくなっちゃうよねえオペラで裏方に徹するのなんて。

いろいろとしがらみだの金だのコネだのあるんでしょうけど、これがまたうそみたいに全っ然振れない、ヘアスタイルだけは立派みたいな人々が、それは指揮ですかそれともおうちでCDにあわせて振り付けした踊りですか、という振り方をする人々が、うちにもゲストとしてやってきたりするんでね。こういう人々はオペラなんて観にいったこともほとんどなくて、ちょっとピアノかなんかが弾けすぎてつまらなくなったか、弾けなさすぎてつまらなくなったかどっちかでつい出来心で指揮を始めちゃったんだね。こういう人にはそのまま舞台の上でその一本道を究めてほしいと思いまーす。ちょっと売れてきたら、じゃ、次はオペラの分野にも、って仕事取ってくるんだろうね、マネージメントが。で、そんな恥ずかしいことになっちゃうの。舞台上ではかっこよいのもけっこう大事だけど、ピットではそんなかっこいい踊りじゃみんなで一緒に出れないの。
これは私の想像ですけど、オペラが振れる人はシンフォニーは難なく振れちゃうんじゃないかと思うけど、逆は無理だろう。毎晩のように公演があって、毎晩違う演目で違う指揮者という生活。公演が始まったらもうピットの中のオケと指揮者は運命共同体、スリル満点。それぐらいオペラって指揮者が命です。そんなんだから指揮者の話ばっかりしてる、私もここで。

そんな毎日を送ってた私を喜ばせてくれたのがヘンゲルブロックのニュースでした。彼はコレペティとかからたたき上げたとかでもなんでもなく、すんごい才能ですんごいスピードで指揮者としてあっという間に売れて、もともとやってたバロックはもちろん、オペラもシンフォニーも、って全部の分野でどんどん振って、しかもいい音楽はいい音楽だからと、出身地のバロック畑にもまったく固執せず、バロック界からの視線もものともせず(全部想像で言ってます)、ワーグナーだってなんだって期待にこたえてぱっぱとこなしちゃう。すんごいです。本当にできる人ってのは何やってもできちゃうし、変なコネクションとかもなんにもなくても向こうから探してくれるんだよなあ。見てる人は見てる、これは救いですね、皆さん。
ヘンゲルブロックにはぜひオペラを振り続けてほしい。ミヒャエル・ギーレンもドホナーニも、それから今度読響のシェフになるカンブルランも、かつてはうちのシェフだった人たちはみな揃いも揃ってシンフォニーオケに就任して、オペラ指揮者っていう印象は今現在あまりないもんなあ。NDRにいっちゃったのがオペラ界から遠ざかるきっかけにならぬよう、オペラ界の片隅から願ってます。


さて、うちのオケの今月の定期演奏会「ムゼウムコンサート」は、のだめのドラマに出ていたヴィエラ先生役だった人、その本人Zdeněk Mácalズデニェク・マーカルさんです。チェコ人の指揮者とスメタナのわが祖国です。これ以上のマッチングはありませんね。毎日練習にいくのが楽しみです。

5月にはあの佐渡裕さんがうちのオケにやってきますよ。私にとっての佐渡裕デビューです。すごく楽しみ。ちなみにここでSadoと書いたら綴りも発音もサディストさんそのものです。だからドイツ人はこの名前を言うときはちょっと半笑いしています。

今月末にはhr交響楽団(またの名をフランクフルト放送響)のトラに乗るかもしれなくて、もし乗ったら指揮がエリアフ・インバルです。もちろん私にとってのインバルデビューです。インバルはこの放送響のシェフだった人で、今はマーカルの後任でチェコフィルのシェフなんですよね。なんか一ヶ月の間にその二人がフランクフルトに来て、しかも両方に乗ってるって面白いなあー。


  
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