TOI,TOI,TOI!


2005年02月21日(月) 近況を箇条書きで


・おととい、学校の学期末パーティがあり、久しぶりに壊れてきた。毎学期行われるこのパーティは、学校がディスコ化して皆で踊り狂うというもので。
翌朝4時まで踊って、お開きとなった。雪が降っていて、雪の中を友達二人と肩を寄せて歩いて帰った。声がすっかり潰れてたけど、二日酔いはなし!

・5月にベートーベンのトリプルコンチェルトを弾くことになった!学校のオケと。大っ嫌いな指揮者と一緒に。少しでも仲良くなれるように、頑張ろう。
3回公演。フランクフルト郊外でも2本番。

・あさってからロンドンへ。megさんを訪ねに。
もともとは私とマライケで飛ぶ予定で(マライケは1年前に日本でmegと知り合っている)、この話を、カフェでエファとイナにその話をしたら、エファが

「ロンドンにいとこが住んでて、ついこないだ、いつでも遊びに来て!と連絡があったばかり!」

とか言い出して、「で、いつ?」と言ってカレンダーを出してきて・・・
なんと、4人まとめて一緒に飛ぶことになっちゃった。

滞在は1週間。楽しくなりそう〜。


2005年02月18日(金) Karl Dall

私の好きなドイツ人の芸能人でKarl Dallという人がいる。

多分60歳ぐらいと思われるが、話が面白いおっさんで、しょっちゅうテレビで見かける。
この人の片方の目はほとんど開いていない。

こないだ、芸能人たちが昔どんな音楽を聞いてたか語る、という番組をたまたま見ていて、カールダルも出ていた。
カールダルは若い頃からテレビに出てて、当時はコミックバンドのボーカルとして一世を風靡したとか。
その頃から目は開いていない。でも本人がそれを気にしていない。当時の写真の表情を見てもよく分かる。

司会者が「男前!モテたでしょうね!」というようなことを言い、そのあとで、ところでその目は・・・という話題になった。

片目が開かないのは生まれつきで、
でも21歳のときに手術で治せるという話が出たという。

「21歳になるころには、僕はすでに”いい人”と”悪い人”を見分けられるようになっていたんだ。

だから手術をする必要はなかった」


たったこれだけで全てが伝わった。胸につーんと来た。

つまりきっと思春期ぐらいまではいろいろと思い悩んだのだろう。私から見たって当時の彼は男前で、悩む必要なんてないように見えるが、障害というものには大きさも小ささもなく、本人にとってでかければ、それはでかいのだ。

そして、先天性の障害と闘うのは、子供だからこそ大変なのだ。精神的に未熟だからこそ、子供は子供なのだ。子供の神経というのは繊細だ。大人のような図太さはない。

顔というのは、隠しようがない。人と話すときにはそこに相手の顔がある。毎日毎日がその繰り返しだ。

ええと、何を隠そう私は口唇口蓋裂である。
この病名で分からない人には、みつくち、兎唇といえば通じるだろうか。
生後1年目と5歳のときと、2回手術をした。そして成人になったらもう一度仕上げの手術をするのが普通らしい。その手術を私はしていない。
私はこの全ての自分についての事実を、2年前に知った。私はすでにドイツにいた。

そのときはでかいショックを受け、3日ほど一歩も外に出なかったのだが、同時に、すでにドイツ人に影響されて性格の変革が始まっていた私は、ふて寝してても意味がないと思い、周りの人たちにせっせと話をしたのだった。

「手術する必要なんてなし。その顔が伸子の顔で、ほかの顔になったら伸子じゃない。」とエファ。

師匠も「子供のときに受けた手術は奇跡的な成功なのではないか。そこまで目立たなくなっている例は見たことがない。そして個人的には手術には反対だ」とはっきり言ってくれた。

ドイツ人の、こういうときの反応がしっかり返せるところは、一枚上手だと思う。日本人同士とはまた違った意味でのやさしさ、というものを感じる。
少なくとも、25年間もその事実を伝える勇気も出せずに、なーなーにしてきたうちの両親と比べたら、何枚も何百枚も上手だ。

この人たちに囲まれて過ごせるなら、このままでいいかなと思う。カールダルの気持ち、よく分かる。

http://www.karl-dall.de


2005年02月07日(月) シェヘラザーデ

金曜に学校のオーケストラの本番が終わった。
私は、コンミス。リムスキーコルサコフ「シェへラザーデ」のソロヴァイオリンを弾いた。

「千一夜物語」又は「アラビアンナイト」と言えばよく知られていると思うが、シンドバッドやアリババ等の単品としてしか知らない人も多いと思う。
だが、本来の千一夜物語は大人向きに書かれたえらく壮大なものらしい。
大筋はこうだ。

過去が原因で女を信じられなくなったアラブの王がいた。
この王様はある大臣に女を探させ、その女と寝てそして殺す、ということを毎晩繰り返していた。
その大臣はとうとう娘シェヘラザーデをも王の元に送る羽目になった。ところがこのシェヘラザーデ、面白い話をすることによって生き延びる。つまり、夜が明けると彼女は話すのをやめるのだが、王は話の続きを聞くために次の日の夜まで彼女を生かしておく。「なんて面白いんだ。お前の話は!だが明日こそは話を終わりまで聞かせろ!」
こうして彼女は、千一夜もの間生き延びたのでした・・・☆

リムスキーコルサコフのこの作品は、ハープの伴奏と共に幾度となくたった一人で登場するソロヴァイオリンが、王を物語で夢中にさせたシェヘラザーデを現している。

エファというとても親しい友人がいるのだけれど、彼女はわざわざ本屋で千一夜物語、ドイツ語新訳原作完全版みたいなものを買ってきて見せてくれた。分厚い高そうな大人の本だった。子供用の本だと最後に王は改心してめでたしめでたしとなるが、エファの本によって、原作ではこれ以後どうなったのかは書かれていないことが分かった。
そして、シェーラザーデがどのような口調で語りかけていたか知ったので、自然とシェーラーデ像のイメージが固まった。

その次の日はもうゲネプロと本番だった。
ゲネプロでは前日とかなり違うように弾いた。シェーラザーデのイメージが固まったから。ゲネプロは面白いようにうまくいった。
本番では満員の客の前での緊張も少しあったが、イメージがあったおかげでそれを存分に表現することを楽しんだ。

客にも、大いに受けたのでうれしかった。学校のたくさんの友人と教授たちと、わざわざ足を運んでくれた一般のお客さんに感謝。楽しかった。


  
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