TOI,TOI,TOI!


2001年11月26日(月) あったかくなった。

Kはバロックバイオリンを副科でやっていて、今日そのクラッセンフォアシュピールだったので、聴いた。フォーヒャルトも、クラスの子を3人引き連れて(今日レッスンだった人たち)聴きに来た。

バロックってやっぱ、いいね。とKは言ってた。
私はKと出会ったお陰で少しずつ好きになり始めた。
Kが持ってるCDはほとんどがバロックなのだが、昨日は、彼女が一番好きなCDだという、アンナ・ビルスマというチェリストのCDを聞かせてもらった。
明日、Kとビルスマのリサイタルを聴きにいくのだけど、楽しみになってきた。

終わったあとKと二人でイタリアンで食べて飲んでたら、偶然フォーヒャルト先生もその店に現れた。
オケはどう?という話から、今までにたくさんオケで弾いたことがあるの?と聞かれたりしたので、
「学校でもたくさんオケをやりましたが、実は18歳のとき台湾のオケに就職したことがあります。」
ここまで話すと、なんで台湾のオケに入ったの?という話に当然なる。そりゃ誰に話したって不思議がられるんだけど。
「先生はいろいろ知りたがってるから、全部話しちゃいナ。」
そういって、Kが代わりに先生に話をしてくれた。

Kという通訳を通して、ますます先生との距離が縮まったことが、とにかくすごくうれしかった。先生はすべてを分かろうとしてくれて、その気持ちがあったかかった。一所懸命ドイツ語で、私の気持ちが先生に伝わるように話してくれるKの気持ちもほんとにあったかかった。

台湾のことだけ(一部ですが)ここに書きます。
高校を卒業した頃の私は、悩んでて、迷ってて、人生が嫌になってしまっていて、バイオリンを続けていく気がなくなっていました。
台湾のオケの入団試験の話を聞いた私は、
「日本を離れて、知らない人ばかりの世界にいけるのかぁ。
いいなぁ」
そんな気持ちで、そのオケに入ってしまったのです。

超多忙な『オシゴト』の世界。
自分の時間なんてありませんでした。
これは、もう私自身がこれ以上成長するということは無いんではないか?
仕事をこなすだけの毎日。これをあと何年もやる?
1年目も2年目も10年後も、何も変わってない私がそこにいる・・・想像したら怖くなりました。
やっぱりまだまだ勉強したい。
そう気付くのにそんなに時間はかかりませんでした。

試用期間が終わって正団員になってまもなく、帰国。
翌年、入試を受けて大学に入りました。


2001年11月24日(土) チョンミョンフン

チョン・ミョンフンを聴いて来た。
ドボルジャーク8番&プロコフィエフの「ロメオとユリア」。ユリア=もちろんジュリエット。
オケはシュターツカペレ・ドレスデン。

チョンミョンフン。一番好きな指揮者です。もしかしたら一番好きな音楽家かもしれない。数年前、彼の棒で大学のオケで弾いたのです。自分の今までの人生で、一番良かった本番・・・圧倒的に一番最高だったのが、彼の棒でのコンサートです。

というわけで、久しぶりにミョンフンの音楽に出会えることがとてもうれしかった。鳥肌が立つ瞬間がたくさんあった。彼の世界にどんどん吸い込まれていく感じがした。彼は、私の心を思うがままに操った。興奮したり、泣きそうになったり、こっちの感情を自由自在に操ってきた。

・・・・もっと何か書こうかと思ったんだけど、評論家のようなことは書けないし書きたくないのでやめます。

ミョンフンが、好き。今日の演奏会は面白かった。

好きだと思うもの、面白いと思うものは、ひとそれぞれだ。私がこんなに興奮して感動してるのに、一緒にきいた人が、眠いとか言ってたのが辛かった。世の中いろんな人がいるというのがよく分かった。自分が良いと思ってやったものを、良いと思ってくれる人が、どこかにいると信じて、やっていこうと思った。


2001年11月21日(水) フォアトラークスアーベント

学校内のホールで「フォアトラークスアーベント」。いつもフォアシュピールはレッスン室でやってるんだけど、今日はホールなので「発表会」という雰囲気だ。

前から3人聴いたあと、こっそり抜け出して練習室でさらって、
「そろそろユキちゃん(ひとり前)が始まる頃かな」
と適当な時間計算でホールの裏に行ったら、ちょうど拍手がなっているところで。・・・と思ったらユキちゃんが出てきた。「今!すぐ!」と言ってる。

あれあれ・・・今すぐ??

会場では変な間が出来てしまったらしい。
みんなの頭の上に「?」マーク、浮かんでたわ。と後で友達に言われた。

急いで楽器を出して、舞台に出ると、まずKが笑ってるのが目に入った。譜めくりがKに変わってる。な〜んか、めっちゃ笑ってる〜。「な〜にやってたの〜?」って目で言ってる。・・・緊張はほぐれた。

モーツァルト、思いっきり楽しんで弾こうと思って弾いた。好きな曲なので実際弾いてて楽しい。コレペティが前奏間奏省略ナシで全部弾いてくれたので、ますます楽しくなった。

でもたまに冷静に「癖」が出てしまう自分も見えていた。
今日はクラスのみんなに、私がどんな演奏をする人なのか分かってもらえた気がする。そういう意味で自分を出せたのは良かったけど・・・。
でもそれは「今までの自分」を見てもらっただけ。
まだ自分は、変わっていない。

終わったあと、やっぱり先生に注意された。また、その癖のこと。
舞台上では、そういうことを意識したくないから、やっぱり癖をなおすっていうのは、無意識に出なくなるまで根気強くやっていかないといけない。分かっているけど・・・まだまだって感じ。はぁ。


2001年11月20日(火) 賃貸のルール。

ドイツには、賃貸のルールというのがある。
・出るときは、普通、引っ越す3ヶ月前に、伝えなければいけない。
・『次に住みたい人』を3人紹介すれば、3ヶ月以内でも出ることができる。

フランクフルトで家探しをするのはとても大変だと言われていて、どんなタイミングでいい物件に出会えるか分かんないから、上のルールのとおりにはなかなかうまくいかない。そうすると家賃を両方払うはめになるのだ。実際に、その経験をもつ人は少なくないみたい。

そうなることをもっとも恐れていたが、それはなんとか免れた。
「ドイツのルールは、こうこうこうなのよ。でも私達はとても親切だから、あなたは来月から出て行くことが出来るのよ。」
と、おばさんはしっかり言ってきたが。
「12月1日に引越す」と言ったら「11月30日までに出てくれ」と笑顔で言われた。

ビアギット(次住むとこのおばさん)と契約した。引越しの日は29日にしてもらった。30日は学校のオケの本番なので時間がないので。車を出してくれるというのがめちゃくちゃありがたい。


2001年11月19日(月) 引っ越すぜ。

来月1日に引越しします。
先週、学校の掲示板で見つけた物件。こういうのは早いもん勝ちなので、とりあえず電話して、すぐ次の日に見に行った。行ってみると、なんとまたもやドイツ人家族との同居。
これは同じことの繰り返しになるわと思い、帰ってから少し考えて、Kにもやめとけと言われたし、電話して、「住みません」と一度は断ったのだが・・・

「残念。私達はノブコと住みたいと思っていたのに。家賃が高いのだったら50マルク下げるわ」

と言われた。50下がると、今とほとんど同じになる。・・・・・・。
そして今よりはるかに条件はいい。

さんざん迷ったあげく、昨日の夜、結論を出した。ここのおじさんに「来月引越しします」と告げた。
「明日また話をする」と言われた。何言われるんだろう・・怖い。


2001年11月14日(水) 癖。

来週水曜、学校内の「クライナーザール」という小さいホールでのフォアシュピーレン、その名も「フォアトラークスアーベント」があるので、今日はそのゲネプロ(=伴奏あわせ)。

モーツァルトのコンツェルトの1楽章を弾く。伴奏付きで弾くというのは、よく考えたら入試以来なのだ。というわけで楽しくなっちゃったので、やたらノリノリで弾いてきた。緊張感はナシ。来週はガチガチに緊張すると思うので、どうなるか分かんないけど、とりあえず今日のところは楽しかった。が。今「癖」の矯正中なのに、それは全部出た。最近レッスンで、体の無駄な動きなど、たくさんの癖を指摘されている。癖をなおすのって、時間かかるんだろうなぁ。無意識にやってしまうものを、無意識にやらないようにするっていうのは。


2001年11月08日(木) 在独半年。

ここ、フランクフルトの地に初めて足を踏み入れた日から、ちょうど半年経った。

日記を、始めっから全部読み直した。
濃い。
特に始めの方。なんだか自分が書いたんじゃないみたいな文章だし。情緒不安定だったんだなぁ・・・。あの頃は毎日必死で、ある意味『素(す)』の状態だった。
それにしても、「K」の登場する頻度がすごい。この日記を読んだゴゴティは「○○さん(Kの本名)に、読ませたらいいのに。彼女今んとこスターだよ。」と言っていた。


  
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