水野の図書室
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実りの秋になりました。皆さまも体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。


2004年11月29日(月) 谷村志穂『大地がお腹をすかせて』

タイトル見たときに、とんだ勘違いをしてしまいました。
『大地(という名の彼)がお腹をすかせて(帰宅した)』かと。いやはや。

そう言えば、谷村志穂は、他の作品でも、冬の北海道・札幌を大地がお腹を
すかせている、と表現していました。つんと冷えた空気と降り積もる雪・・・
わかるような気がします。札幌生まれの谷村志穂ですから、雪の描写も
自然で鋭く、好感が持てます。

今回は、彼女のふるさと札幌を、一緒に訪ねる彼が、頼もしくて素敵ですよ。
ふるさとに苦い思い出しかない彼女を優しく支える彼の横顔は、眩しいくらい。。
彼女のために、自分は何ができるだろうと考える彼。いいですねぇ〜。

大切な人のために、何ができるか考えてますか?自分のことだけで毎日が
いっぱい×いっぱいな状況を反省しました。

優しさは言葉じゃないんです。態度で見せてくれないとわかりません。


2004年11月27日(土) 谷村志穂『妖精愛』

“妖精愛”── きれいな言葉です。
でも、どんな愛?と聞かれると、純愛と同じくらい説明が難しくもあります。
話題の映画『海猫』で注目の谷村志穂が描く、九つの愛のカタチを集めた
「妖精愛」(集英社文庫)を読み始めました。カバーデザインは桐野太志。
ピュアな感じがタイトルにぴったり。カバーも大事なポイントですよ。

おお!最初が表題作『妖精愛』です。

妖精の名は奈緒子。自分で自分のことを妖精と言う女の子です。
彼の方は、奈緒子の言いなり。。
まあ、“ぼくの仔猫ちゃん”みたいなものですね。
お互いわかりあえているようで、ふと、彼女がどこかへ行ってしまうのでは
ないかという不安を象徴するような“妖精”なのです。
不安があるから恋が続くのかもしれません。

妖精のような彼女・・華奢な美少女and妄想の中ではスケート靴。
妖精のような奥さんだったら・・んー、、いつもお出かけ?ピンときません。
女は結婚すると、妖精というより魔女に近づくのかも・・奥様は魔女。笑


集英社文庫恋愛フェア開催中です。オビの折り返しにある応募券を送ると、
玉木宏クンのオリジナル図書カードが抽選で当たるそうです。締切は、、、
2005年1月31日。まだまだ大丈夫。当選数が500って、少なすぎませんか?


2004年11月20日(土) 北村薫『眠れる森』

「七つの危険な真実」(新潮文庫)最後の作品になりました。『眠れる森』は、
「小説新潮」2003年7月号に『語り女(め)たち』として掲載されたそうですが、
『眠れる森』の方が断然好きです。『眠りの森』ではなく『眠れる森』。この
芒洋とした空気感は北村薫らしいミステリアスで優しい雰囲気を醸し出して
います。

ストーリーは、不眠症の画家の展覧会に行って来たところだという女の話
から始まります。その絵は、不眠症の人の見る夢のようだと……。

どこまでが夢なのか、よくわからないまま読み進むのは不安なはずなのに、
すべてを誰かにゆだねたように安らかで。。この気持ちはいつかどこかで
……と思い巡らして気づきました。そうそう、『水に眠る』(文春文庫)です。
(2002.4.4記)あれを読んでからお風呂に入ると、ああ、このことねと感激した
ように、『眠れる森』を読んだあとは、眠りに落ちる、その瞬間が愛しくて。
眠くなったときは、何も考えずに、このまま、フッと眠りたい。。



相変わらず、全く個人的な感想をつらつら書いて、昨日3周年を迎えました。
いつも、拙い文章を読んでいただき、ありがとうございます。
これからも、どうぞよろしく。


2004年11月19日(金) 夏樹静子『襲われて』

思い込みって、怖いですね。

夏樹静子の作品は、事故なのか事件なのか、病死なのか殺人なのか、
愛人の子は本当に夫の子なのか、といったギリギリのところに、いきなり
連れていかれることがよくあるんですが、この『襲われて』は、また違った
場所を見せてくれます。

夜道で背後から襲われたところを、見知らぬ誰かが助けてくれたものの、
襲われたのには理由があり──というお話。

ひとこと言わせてもらうと、いくら助けてくれた命の恩人だからって、
すぐ仲良くなるのは、、、、どうかと思いますよ。。
短編だから先を急ぐのはわかるけれど、結論を急ぐばかり、浸れないの
ですよ。助けてくれた人の人柄みたいなのが、いまいちよくわかりません。
知り合ったばかりの人に「馬鹿ね」は、ないでしょう。引いてしまいます。
と、なんだかんだと言いながら、面白かったです。参考になりました。
いろいろと。


2004年11月13日(土) 連城三紀彦『過去からの声』

独特の叙情感たっぷりで、胸がしめつけられていく過程がたまりません。
先月読んだ『桐の柩(ひつぎ)』(「わかれの船」収録・光文社文庫)同様、
しくしく泣いているような文章で、その向こうに、今にも零れ落ちそうな
涙をためた主人公が、こちらを見ているみたいなんです。

主人公は元刑事。刑事を辞めた一年後に、先輩刑事に辞職の理由を
告白する形で始まります。きっかけになった誘拐事件を絡めながら。

フィクションだと割り切って読むにはいいんですが、現実的には、ちょっと
問題じゃないですか?刑事なら、事件の解決に対して、一般の人以上に
真摯な態度で臨むべきだと思うんですが、、、いいのかなぁ……。
若い刑事なら正義感もあり、そんなことはしないのでは。。。
先輩刑事を庇う理由が、やや弱いような印象が残ります。
でも、そこが、若い刑事の繊細さを際立たせているのかもしれませんね。

過去つながりで思い出すのは、坂東眞砂子の『白い過去』(「ゆがんだ闇」
収録・角川ホラー文庫・2002.1.19記)と宮部みゆきの『過去のない手帳』
(「人質カノン」収録・文春文庫・2001.12.8記)。どちらも、考えさせられます。


2004年11月12日(金) 乃南アサ『福の神』

ある割烹に、時おりやってくる好ましくない客が、実は……というお話。

お客はお店を選べても、お店はお客を選べないですから、こういうことも
あるでしょうね。自分がお店に行くと、他のお客の出足が止まるだなんて、
アルバイトの女の子にまで言われながら、女将の愛想笑いを真に受ける
お客が、なんと言うか、、、お気の毒。

巧みな心理描写で、ぐいぐい引っ張られます。そして、じーーん、ほろり。
こんなラストが待っていたなんて、予想してませんでした。
すごい急展開なんですけど、全然ムリがなくて受け止めたくなります。

ご縁、ってあると思います。ぜひぜひ読んでみてください。


2004年11月08日(月) 宮部みゆき『返事はいらない』

短編でも長編でも面白い宮部みゆき、安心して読めます。時代物・現代物
でも面白い宮部みゆきでもあります。で、これは現代物。失恋自殺しようと
した女性が偶然ある老夫婦と出会って、自殺を思いとどまるんですが、、
なんと、この老夫婦から犯罪計画を打ち明けられ、共犯者になることに。

どんな犯罪かって?簡単に言うと、銀行の怠慢を知らしめるための犯罪
なのですよ。ほら、他人のホームページを改ざんしたハッカーが捕まった時
「セキュリティーの甘さを指摘した」とか言う類のもの。

老夫婦がとても魅力的で、なんだか会いたくなります。こういう犯罪なら、
許されるんじゃないかとふっと思うんですが、、いえいえ、ダメですって!!
一見、被害者はいないようでも、誰かが傷ついているんじゃないのかな。。
そもそも、いくらできるからって、それをやったらオシマイです。犯罪です。
計画通りすすんで、楽しいですか?満足ですか?むなしくないですか?

先月、某銀行員の横領事件が発覚しましたけど、そこまでいかなくても犯罪
ギリギリのところって、ありますよー。小さいとこでは、会社の電話を私用に
使うとか。電話は許せる範囲ですか?会社の備品、パソコンを持って帰る。
これは犯罪です。横領はわかりやすくても、難しいのがセクハラ問題です。
同じことを言っても、人によって、受け取り方がまるで違ってきます。
「恋人いる?」なんてのは、禁句ですが、素敵な部長に言われるのはOKでも
野暮ったい課長に言われたくないとか、オンナゴコロは複雑なんです。
素敵な部長は、ガイドラインを心得てますから、「恋人いる?」などと、決して
言いませんね。そこが、素敵だったり。

『返事はいらない』、銀行のヒミツにへぇ〜。


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