水野の図書室
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皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。


2002年03月31日(日) 2002年3月のまとめ

3月最後の日になりました。恒例のまとめの日です。
今月もいろいろ読みました。加納朋子ほんわかミステリから始まって、推理短編
賞の最終候補作品、またまた加納ワールド、ラブストーリー、失恋のお話、と
まずまず充実の月でした。

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加納朋子著『掌の中の小鳥』(創元推理文庫)

『推理短編六佳撰』北村薫・宮部みゆき選(創元推理文庫)
(遠田緩・釣巻礼公・永田正夢・永井するみ・那伽井聖・植松二郎)

加納朋子著『月曜日の水玉模様』(集英社文庫)

『贅沢な恋愛』(角川文庫)
(村上龍・林真理子・北方謙三・藤堂志津子・山川健一・森瑶子・村松友視・
 山田詠美)

『贅沢な失恋』(角川文庫)
(村上龍・林真理子・北方謙三・藤堂志津子・山川健一、今月はここまで)

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ベスト1は、『贅沢な恋愛』に収録の

          山田詠美著『雨の化石』です。


きれいな文章に胸のすみずみまで濡れました。


明日は、『贅沢な失恋』の続きを読みたいです。


今月新たに、エンピツMy登録をしてくださった方々、ありがとうございます。
どうぞよろしくお願い致します。


2002年03月30日(土) 山川健一著『アーリー・タックルと食後の熱い紅茶』

「アーリー・タックル」って知ってます? 初めて知ったんですが、ラグビー
用語です。相手がボールをつかむ前にタックルすることで、もちろん反則です。
その場でペナルティが科されるそうです。と、まずはタイトルを解説して・・。

タックルしたのは「ぼく」、相手は友人の下村です。そして、ボールにあたる
のが可代子なんですが、、、おおっと! 状況が見えるようです。 
店でぼくと下村がお酒を飲んでいた時、ぼくは入口に立った可代子を一目見た
瞬間、彼女に恋をしてしまうんです。これ、一目惚れと同じですか? ですよね。

うーむ、「アーリー・タックル」とは! おしゃれな言い方ですね〜♪
これからは、一目惚れをアーリー・タックルに変換したいですぅー!
(この歌にアーリー・タックルよ、とかネ。わかってもらえなさそうだけど。)

小説家をめざすぼくと下村。二人は共同生活をしながら、お互いの作品をけなし
合ったり、アドバイスをし合ったり・・そこに可代子が現れた時、傷ついていく
のは、ペナルティだったのかもしれません。

別れの日、出会った店で食事をするぼくと可代子は、恋人以上に恋人のように
寄り添い、お互いを思いやります。可代子が去ったあと、ぼくの胸を走るもの
は、せつないですねー。

下村とぼくと可代子の関係が込み入ったものなのですが、さらりと仕上がって
いるのは、ラグビーシーンが効果的だからでしょう。

『贅沢な失恋』(角川文庫)第五話、『アーリー・タックルと熱い紅茶』、
良かったです。

じゃ、また明日!






2002年03月29日(金) 藤堂志津子著『やさしい言葉』

昨日のお話は男が女よりずっと年上でしたが、今夜のお話は女の方が年上です。
綾子は32歳、浩一が26歳・・えーーっ!なんでそこまで、と思わずにはいられ
ません。この綾子さん、定期預金を解約してまで、浩一に食事を奢ります。

ちょっ、ちょっとぉ〜! 浩一さんっ!
年下だからって、甘えすぎですよーー!
うーん、イヤですね〜。こんな人嫌ですぅ! やさしい言葉を連打して、年上の
女に言い寄るなんてー!

と、カッカしながら読んでいたら、そ、そうなの・・?
浩一さん、見かけによらず・・。 微笑 ・・読んでみてください。


綾子の寂しい心にひたひたと打ち寄せる浩一の言葉は、だまされていると思い
ながらも、綾子に充実感を与えていきます。
藤堂さん、もう若くはない女の心のヒダを描くのが巧いんですよね〜。

『贅沢な失恋』(角川文庫)第四話は、藤堂志津子著『やさしい言葉』。
不思議な余韻が残ります。


明日は山川健一氏の『アーリー・タックルと食後の熱い紅茶』。
じゃ、また明日!





2002年03月28日(木) 北方謙三著『チーズに合うワイン』

ほろ苦さが口に広がるようです。
『贅沢な失恋』(角川文庫)第三話は『チーズに合うワイン』。
北方謙三氏、『贅沢な恋愛』(角川文庫)では『彼女の時』で、去って行った
女を想う中年男の哀愁を品良く描いていたのですが、この『贅沢な失恋』でも
主人公は若い恋人に去られた中年の男性です。むむ、、45歳です・・。
彼女は23歳。うーむ、パパと呼ばれて、倒錯的な気分ですかぁ〜?

ど、どうなんでしょう・・? こんなに歳が離れていて恋愛関係になれるの
でしょうか・・? 歳は関係ないですか?

男は、レストランでひとりチーズを食べワインを飲みながら、自分から去った
女のことを考えます。強烈な失恋はできなくなったと自嘲するかのような男。
女と別れるのは、手間とエネルギーがいると考える男は、つきあっているとき
から、彼女が自分から別れられる女になるように方向づけてきたような・・。

いつか別れると決めていた恋。失恋の苦さを楽しむかのような男。
なんだか、失恋するための恋のような・・。これも、恋なのでしょうか。

車を停めた時、レストランの扉を押す時、チーズを食べる時、男を満たすものは
ほろ苦さ、そしてワインでほろ苦さを飲み干すのです。

失恋もハードボイルド、北方謙三氏。
一歩間違うと未練たらたらの中年男ですが、チーズの食べ方がカッコいいです。

明日は『やさしい言葉』。
舞台は札幌です。じゃ、また明日。






2002年03月27日(水) 林真理子著『四歳の雌牛』

『贅沢な失恋』(角川文庫)第二話は『四歳の雌牛』。
別れの場所は焼肉屋です。ありそうですねー。こんなお話。
歳の離れた若い女の子に美味しいものを食べさせることで、愛情表現だと思う男。
買い与えるのは食べ物だけじゃなくて、洋服、バッグ、アクセサリーと、留まる
ことを知りません。もちろん、ブランド物です。お金でつながる関係ですか・・。

うーむ、林真理子さんが描くお話、構図がよくわかります。
会社が躓き、経済的な余裕が無くなった時、男は女に別れを切り出します。
そして、次にこの女の面倒をみてくれる男を紹介します。

こ、これ、失恋といえるのですかぁ〜? なんて、大きなお世話ですよね。
ふたりが恋愛だと思えば恋愛。失恋だと思えば失恋。
お金つながりだろうと、ふたりが納得の上なら、他人が口を挟む事じゃないで
すが・・。

それにしても、自分が愛した女性を知り合いに渡すキモチがわかりません。

男は女の過去の男に嫉妬し、女は男の未来の女に嫉妬する、なんてことを
聞いたことがあります。誰のセリフだったでしょう? 男は女の過去の恋愛が
気になることがあるらしいですが、女は男の過去なんて、ぜんぜん考えません。
でも、女は男がこの先出会うかもしれない未来の女が気になるのだとか。

あれっ? 何でこんな話に? 笑

お金が無くなったからって、恋人を知り合いにあげるなんて、、恋の道に背く
じゃありませんかっ! というか、このふたりは、恋人だったの?

やん、自分でも何を言ってるのかわからなくなっています。申し訳ありません。

今夜は撤収! じゃ、また明日! (><;)





2002年03月26日(火) 村上龍著『マナハウス』

『贅沢な恋愛』(角川文庫)の後に選んだ本は、『贅沢な失恋』(角川文庫)。
贅沢な恋愛同様、贅沢な失恋、って意味がわかりませんが、ラブストーリーを
書いた同じ方々による失恋のお話。山田詠美さんだけ、今回は入っていません。

村上龍、林真理子、北方謙三、藤堂志津子、山川健一、森瑶子、村松友視・・と
『贅沢な恋愛』の時と同じ登場順で、モチーフは食事です。恋愛に食事は付き物
ですねー。それぞれの別れの晩餐に立会いましょうか。


第一話は『マナハウス』。
村上龍氏、どうしてこんな読みにくい文章にしたのか、、意図がわかりません。

「。」が、ないんです。だらだらと続く女の子の愚痴。

ふーーーっ、読み疲れました。
「あたし」小説は、身体が生理的に受け付けないところがあるようです。
せめて、「わたし」にして欲しかったです。

疲れているときには、読めないです。
日を置いてもう一度読もうかと思います。

やはり村上龍とは相性が悪いのか・・。


明日は『四歳の雌牛』、ちらりと見ると、、読みやすそうです。
じゃ、また明日!






2002年03月25日(月) 山田詠美著『雨の化石』

泣いてしまいました。




きれいな文章です。

小説を読んで、泣きたくなることはあっても、実際、涙をこぼすことはあまり
ありません。昨年11月に「水野の図書室」を始めてから泣いたのは三度目です。
初めは『天帝妖狐』(乙一・集英社文庫・2001.11.25)次が『デジ・ボウイ』
(乃南アサ「家族趣味」収録・新潮文庫・2001.12.16)、そして、この
『雨の化石』です。

山田詠美さん、こんな透きとおった世界も描かれていたんですね。意外でした。
勝手にいだいていたイメージは、もっとアクがあるものだったので。


『雨の化石』には、雨の匂いがします。
雨やどりで偶然出会った人妻に恋をしてしまった青年の心が、途切れることなく
ガラス窓をつたう雨のしずくのように物語を紡いでいきます。

モチーフとなる宝石は・・これしかありません。読んでみてください。

『贅沢な恋愛』(角川文庫)最後のお話『雨の化石』、輝いています。





人はどうして恋をするんでしょう。

大地や草花に雨が必要なように、人は恋で潤うのかもしれません。


山田詠美著『雨の化石』

             ありがとう。





2002年03月24日(日) 村松友視著『夢のいろどり』

宝石をめぐるラブストーリーの短編集『贅沢な恋愛』(角川文庫)の七番目は、
オパールの指輪がモチーフです。ビデオ・カメラマンからフォト・グラファーへ
と転身しようとする佐久間と、レポーターから女優を目指す彩子。
不倫関係をうしろめたく思うふたりは、夢を語りあう「同志」と考えます。
(でも不倫は不倫。同志だなんて、都合いいなぁー。)

なるほどー、、オパールって、こういう石なんですねー!
七番目のこのお話で、初めて宝石について詳しいレクチャーが!
彩子、オパールについてよく知ってるのはいいんですが、普通、こんなことまで
知ってます? TVショッピングを読んでるようなページが3ページほど。ハイ?

この本、それぞれの短編にモチーフとなる宝石の写真があるので不思議に思い、
よく見たら、解説の後にジュエリー制作会社の名前があるではありませんか! 
アクセサリーが先か小説が先か気になるところです。そして、企画協力は
プラチナ・ギルド・インターナショナル・・販促小説? こういう本もあるんで
すねー。いろいろなラブストーリーを楽しめるから、いいですけど。 笑

オパールについて詳しくなれます。オパールの指輪のための小説です。
主人公はオパールになってしまいました。情報を盛り込みすぎ、かな?
情報といえば、村上龍氏が小説について興味深いことをおっしゃってました。
こちらをご覧下さい。

『夢のいろどり』は、空港のトランジット・ロビーがふたりのこれからを暗示して
います。愛したひとが有名人になるって、うれしいような寂しいような。

明日は、最後のお話『雨の化石』、山田詠美。
じゃ、また明日!






2002年03月23日(土) 森瑤子著『扇のブローチ』

本屋さんの文庫コーナーに立つと、森瑤子さんの本がズラリと並んでいるのに
驚きます。38歳で初めて書いた『情事』で、すばる文学賞を受賞後、52歳で
亡くなられるまで相当多くの本を書いた方のようです。

以前、わたしの友人が森瑤子にハマッたことがありまして、勧められるまま何冊
か読んだことがありました。友人曰く、「森瑤子の世界はゴージャスだよ〜。
主人公は大人の女で、これがみなカッコいいのよー。歳をとったら、こんなふう
にカッコいい大人の女になりたいのー!」それに対して、「そうよねー」などと
相槌を打ったわたしでしたが、いつまでたっても、カッコいい大人の女にはなれ
そうにありません。

森瑤子の世界は、それはそれはゴージャスで、絢爛豪華です。
別荘、ヨット、シャンパン、バカンス村が、普段着の装いででてきます。
女は細くて美しく、男は力持ちでひょいと女を抱っこします。そして、ふたりは
おいしいバスタをフォークにスルスル巻くように、洒落た会話を交わします。
夕陽を見るならマニラに行きたい、などと男の胸に手をあてて呟く女には、びっ
くりでしたー! 初対面の人に、お久しぶりですと近づく女もいました!
ハマる人はハマるらしいです。独特の雰囲気です。ちょっと濃いです。

さて、今夜読んだ『扇のブローチ』、キラキラとゴージャスです。
舞台は香港。別れる前に、、、やん、ちょっと書けないですぅ〜。
めくるめくような淫靡さです。ドックンドックンですぅぅぅ〜〜。刺激的すぎ!
表現が古風なとこが、なんとも、いやはや。肉体を共有するとか、、。ハァ。

『贅沢な恋愛』(角川文庫)第六話は、作者を伏せても森瑤子とわかります。
男と女と男の妻のお話。読み終えて感じたのは、やはり、森瑤子の世界です。
プラチナとダイヤでできた扇のブローチのエレガントさがぴったりです。

明日は、村松友視の『夢のいろどり』。
じゃ、また明日!

あっさりしたもの読んでから寝たいです。森瑤子作品、胸にもたれます。
消化できないのです。お子ちゃまには、ネ。


2002年03月22日(金) 山川健一著『スピカと月』

一昨日、土星食を観ていた時、オリオン座が随分西に傾いてきたことに気づき
ました。晩秋、東の地平線から姿を見せるオリオン座は、クリスマスの頃に
東から南東の空に動き、バレンタインデーの頃には南から南西に向かい、桜の
便りが聞こえる頃には西の空低いところで輝き、四月中旬には西の地平線に
隠れてしまいます。そして、オリオン座のリゲルが低くなる頃、東の空には、
おとめ座が昇り、白く輝くスピカが春を知らせます。

花便りのような、星便り。星はめぐり、季節はめぐり、時間は待ってくれません。
結婚が愛し合うふたりのベストの形と考えるなら、つづけていく自信がもてない
とか思わずに、すぐに結婚した方がいいのではないでしょうか。曖昧な時間は、
愛に迷いを生じさせ、隣にある好意を愛と錯覚してしまいがちです。

『スピカと月』、甘くせつないお話です。
大学を卒業して離ればなれになった時、僕が愛した未希子は、他の男と結婚し、
子供を産み、そして離婚しました。久しぶりに未希子に会いに行った僕。
思い出の中でふたりは丘の上で車を止め、ソフトトップをはずしオープンにして、
後部座席に天体望遠鏡をセットして星空を眺めます。

モチーフは、ムーンライト・マイル。三日月と小さな星のニ連のペンダントです。
未希子の胸元に、このペンダントが良く似合います。と、文章だけで感じるのは
ふたりの恋の物語が自然で、幸せになってほしいと思えるから。



なのに、なのに、ラストでがっくし。。
「おれは、待つよ」、、はあ? 待つよ!? 待たせないでよーーー!!
僕の方は、結婚してるの?うーん、そのへんのとこがわかりませんが、、
「結婚しよう」って、なぜ言えないのぉ〜!? 「おれが悪かった、取り返しの
つかないことをした」の次が「待つよ」は、矛盾してますって!!

『贅沢な恋愛』(角川文庫)第五話『スピカと月』。
ラストページは読まなきゃ良かったような。はぁーーため息。

  ≪山川健一さま〜〜未希子は結婚したいと思いますぅ〜。≫








2002年03月21日(木) 藤堂志津子著『空からの手紙』

愛を告げるより、別れを切り出す方がずっと難しいものです。
相手を傷つけずにお互い納得して別れるには、愛を告げるときに要した時間の
何倍もの時間をかけて、ゆるりと相手からはがれてゆかなければなりません。
これは、恋愛小説で学んだ知恵。考えてみると、恋愛小説は結構ためになります。

じゃあ、借金を抱えた人とつきあっているときに、資産家の次男と知り合い、
結婚をほのめかされたら、どうしましょうか。後者の方が容姿も見栄えがして、
性格も明るく朗らかだったら、迷いがでないなんてウソっぽいです。

『空からの手紙』で、礼美は悩みます。ふたりのことを白紙に戻したいと言った
早坂が別れの日に礼美に渡したのは、雪の結晶をイメージしたブローチでした。
それは、早坂の両親の思い出の品であり、形見でもあったのです。

『贅沢な恋愛』(角川文庫)第四話、『空からの手紙』は、札幌雪まつりの日の
ある恋人たちのお話です。札幌生まれの藤堂さんの雪への想いも感じます。

ひとつだけ、余計なことを言わせてもらうと、特別な日(雪まつりとか)に、
別れを設定しない方がいいと思うんですぅー。毎年その日がくるたびに、思い
出すじゃないですかー!TVニュースや新聞で目にするわけだし。ねぇ〜?

うーむ、特別な場所での別れもやめた方がいいです。有名なスポットとか、
お店とかテーマパークとか、、次に行く時、思い出すのはつらいですよー!
と、なると、平凡な日に平凡な場所で、暑くも寒くもない日に別れるためには
相当な準備が必要ですね。

恋愛って、大変です〜。エネルギーが必要です。

明日は『スピカと月』、山川健一はバンドもやってる方です。
じゃ、また明日!


☆ エンピツ日記の壁紙をチェックにしてみました。
  どうでしょう、リフレッシュしたかなぁ〜? 笑
  
  





2002年03月20日(水) 北方謙三著『彼女の時』

恋について語れるほど、恋をしたわけじゃない。
なんて、こんな書き出し、まったく陳腐で情けない。

恋は読むものじゃなくて、するものだよ。
こう言われたら、返す言葉が見つからない。

恋をしてますかと訊かれたら、しているようなしてないような、歯切れの悪い
会話になってしまうでしょう。

恋愛小説は好きです。
もう大好き。これは間違いないです。
別れの場面が特に好き。別れがどんなものかで、ふたりの関係も決まります。

そして、別れる女を見送る男の悲しみを覗くと、きゅんと切なくなります。
女とトラブルなしに別れられた、うまくやったじゃないか、なんて呟きながら、
それでも男は傷ついている。もう、会わない方がいいわ、なんてピシャリと終り
を宣告するのは、女。したたかにできています。

若い女に自分の知識を教え込み、自分好みに作り上げていく男がいます。
そんなのは、傲慢でいやらしいだけでしょうか・・それもひとつの恋のかたち
なのではないでしょうか。育てた女が他の男と結婚することになったとき、男
の胸にあるものは、恋の終りを知った少年と変わらないのではないでしょうか。

『贅沢な恋愛』(角川文庫)第三話『彼女の時』。
プラチナのブレスレット・ウォッチが刻む時間は、しっとりと過ぎていきます。
北方謙三が描く恋のお話、中年男の哀愁が品良くまとまりました。
プラチナ・マジックですね。そして、男は荒野に立っています。

意外にいい余韻。じゃ、また明日!






2002年03月19日(火) 林真理子著『真珠の理由』

『贅沢な恋愛』(角川文庫)第二話は、真珠をめぐるお話です。
加奈は恋人、秀児に近づいてきた大胆な女子大生、優子と会う事を決意します。
秀児の心にいつのまにか住みついた優子は、本物の真珠をさりげなく身につける
女性でした。

お嬢様=真珠は、短絡的すぎるような気がします。優子の言動は予想通りです
ねー。いい意味で、裏切られるような展開を密かに期待していたのですが、もの
足りなさが残りました。

真珠の似合う女性には、愛情をたっぷり注がれて育ったイメージがあります。
大切に大切に育まれて生まれる一粒の真珠のように。

それにしても、どこが、贅沢な恋愛、なのかわかりません。
わたしの経験不足? 読解力不足?
何かが不足してるのは、、わかるのですが・・。うーむ。

彼の新しい恋人を呼び出す女性って、ホントにいるのかなぁー?
どうします?

逆に、彼女に新しい恋人ができたら、その男の人を呼び出しますか?



じゃ、また明日!
明日は北方謙三の恋愛モードヘ。
モチーフは、プラチナのブレスレット・ウォッチ。素敵な恋でありますように☆








2002年03月18日(月) 村上龍著『ムーン・リバー』

八人の作家による八つの宝石をめぐる八つのラブストーリーという短編集『贅沢
な恋愛』(角川文庫)を読み始めました。
贅沢な恋愛、って何? 恋愛に贅沢とか質素とかあるわけ?
これって、事件に大きいも小さいもない、とかいうのに似てますよねー。 笑

宝石をめぐるお話なので贅沢感があるのかも。
ひとつのモチーフでいろんなお話が楽しめるのは、充実感を味わえそうです。
八人の作家を紹介しておきましょう。村上龍、林真理子、北方謙三、藤堂志津子、
山川健一、森瑶子、村松友視、山田詠美、・・恋愛ベテラン?のような方ばかり。
楽しみ楽しみ〜♪

第一話は村上龍の『ムーン・リバー』、プラチナのイヤリングをめぐるお話です。
自分のことをボーイと呼ぶ少年は、女の人に声をかけられます。
「あなたも逃げてきたの?」・・、って、ぅぅ、どうもよくわかりません。

プラチナの気高い雰囲気に包まれる不思議な小説です。
うーむ、、これも恋愛なのですか?どうもよくわかりません。
恋愛に定義はないと言いたいのでしょうか。参りましたー。
第一話からしっくりこないですね。村上龍とは相性が悪いのか・・。


明日は、林真理子の『真珠の理由』。
これはわかりやすそうです。


そうそう、昨日、サッカーの試合を観に行ったんですが、
チアリーダーがカッコ良かったです〜♪ ホッーー! オオ!って感じ。
チアリーダーが印象的でしたー。笑

試合結果:アルビレックス新潟 VS 大分トリニータ 
     
    0-1 でトリニータの勝ち・・ビッグスワン、寒かったです。








2002年03月17日(日) 加納朋子著『月曜日の水玉模様』 7

日付が変わったばかりなのに(ただいま0:50)、日記を書くのもどうかと
思いますが、サッカー観戦に行くことになりまして、急いでいます。
インフルエンザ上がりなんですが、、なんだかもう元気元気!!

と、そんなこんなで(どんな?笑)、第七話。最後のお話をゴクゴク読みました。
『日曜日の雨天決行』、これは、どうもおまけみたいですね。
取引先の会社の人とソフトボール大会です。な、な、なんと、今までのお話に
でてきた人たちがメンバーになります。ちょっと、これ、いくらなんでも、
できすぎですよー。連作短編だから、いいのかなぁ〜。

陶子の会社の社長さん、面白いこと考えますね。接待ソフトボールなら、お金が
かからない、正論です。ゴルフと違って、老若男女を問わずに楽しめます。
なるほどー!

とは言っても、ただのソフトボール大会じゃありません。
タイトルにあるように、その会社にとって命がけの試合。雨が降ってもやる必要
があったのは、こういうことだったのですねー!

ニヤリとしたり、陶子のお母さんへの想いにじーんときたりのお話です。

『月曜日の水玉模様』は、わたしのインフルエンザ体験と共に同じボトルに
入れられて記憶の海を漂うことでしょう。

『魔法飛行』や『ななつのこ』ほどの強い印象は残らなかったものの、気持ち
良く読み終えることができました。

じゃ、今日は、サッカー観に行ってきまーす!







2002年03月16日(土) 加納朋子著『月曜日の水玉模様』 6

第六話『土曜日の嫁菜寿司』は、趣が変わります。
陶子は出張で大阪に行くことに。おばあちゃんが陶子のためにお弁当を作って
くれるのですが、これがすごい!ちらし寿司です!そして、新幹線の車中で
親しくなった女の子三人組との会話から、ある真実がでてくるのです。

嫁菜寿司というのは、パッと見は、ごはんの上に菜がのってるだけなんですが、
お皿の上にひっくり返すと、豪華なちらし寿司になるものだそうです。
美味しそうですー♪
にぎやかな女の子三人組が楽しいです。ところが、後半、またまた陶子の
生い立ちがいきなり、ですか!?
うーん、どうして? 陶子に必要な生い立ちとは思えません。



昨日、加納朋子と片桐陶子のイニシャルが同じことに気づいたのですが、
こ、このイニシャル、ぜんぜん関係ないけど、小室哲哉と華原朋美も同じです。
華原朋美の歌が好きでした〜♪

朋ちゃん〜!!









2002年03月15日(金) 加納朋子著『月曜日の水玉模様』 4・5

つくづく、自分がA型だと感じる時。
それほど完璧主義者ではないけれど、『完璧マニュアル』本を立ち読みしてる時。
マイペース〜と呟きながら、自分を客観的に見ようとする時。
じゃ、任せたから、と言いながら、ちゃんとできているか気になる時。
道で知っている人を見かけて、ご挨拶しなくちゃと足を速める時。

そして、日記に空白の日があることにやりきれない思いを抱く時。
という訳で、さかのぼって日記を書いております。
いやはや、インフルエンザなどという邪悪なエナジーに負けてしまいまして。

お薬のおかげか、少し気分が楽になった時間に読んでおりました。
文庫本は枕もとに置いても邪魔にならずに良いですね〜。
ただ、お薬のせいか、頭はボワ〜ンンンとしておりました。ハフ。

第四話『木曜日の迷子案内』の続きからでしたねー。
丸の内名物のワゴンセールの日、陶子は後輩の真理と迷子の親探しをすることに
なります。

陶子の生い立ちがここで出てくるとは!
ちょっとショック。無理にシリアスな面を見せなくてもいいのに。
迷子の相手をしているときに、自分の迷子体験を思い出すで十分、では?
先輩の和歌子、後輩の真理の書き分けがOLには共感できるところがあって、
そうそう、会社ってこーなのよーと読んでいきたかったです。

第五話『金曜日の目撃証人』では、萩クンが活躍できました。良かった良かった。
萩クン、第一話での登場の仕方から頼りなかったんですよ。ホッと安心。

事件はある会社で起きました。部内会費が盗まれ、内部犯の疑いに、萩クンの
リサーチ会社に極秘の依頼がきたのです。

うーん、いまだに若い女子社員を女の子と呼ぶのは困ったものですー。
男の子って、言われたらイヤでしょ?
会社の中で陶子は、頑張ってます! 

!片桐陶子・・加納朋子!

イニシャルが同じなのは偶然?な訳ないですよね。加納さん。







2002年03月14日(木) 加納朋子著『月曜日の水玉模様』 4

ふぅーー熱をだしてしまいました。
病院へ行ったのは久しぶりです。病名は「インフルエンザ」・・やっぱり。
高熱と関節痛は、その最たる症状です。バリバリ素直なインフルエンザですー。

待合室にいた時、『火曜日の頭痛発熱』を思い出していました。
長く苦しい待ち時間が、180度違ったものに!
謎はどこにでもあります。平凡な待合室にも。
なぜ、ここにこんな絵が掛けてあるんだろうとか。この場に不釣合いな雑誌が
一冊だけあるのはどうして?とか、ネ。

ありがとう!加納朋子さま。日常の謎に目が向くと、退屈しません。
あとは瀬尾さんの出現が欲しいところです〜♪

今夜は第四話の『木曜日の迷子案内』を読みました。
感想は、明日、また。

ふぅーーー皆さまもお体を大切に!


2002年03月13日(水) 加納朋子著『月曜日の水玉模様』 2・3

昨日読んだ第一話で、陶子はリサーチ会社の調査員、萩広海(はぎ ひろみ)
と知り合い、ふたりの周りでちょっと刺激的な日常が過ぎていきます。

今夜は第二話『火曜日の頭痛発熱』、続いて第三話『水曜日の探偵志願』を
さらりと読みました。読みやすいですよー。
萩クンが頼りないのが、ちょっと、ですね〜。 笑
でも、いいのかも。陶子が頼もしいですから!

第二話『火曜日の頭痛発熱』は、オフィス内の診療所の待合室から始まります。
風邪をひいて診療所に行った陶子と萩クン。そこでのクスリの取り違えが、謎を
呼びます。

陶子の観察力の鋭さがひかってます。診療所の待合室でも、陶子は状況を良く
見ていますね〜。日常の謎を楽しむためには、ボーーとしていてはダメなんです
とも、言われているようです。



第三話『水曜日の探偵志願』は、萩クンが電車内で出会ったある男を尾行する
お話です。○○志願、って、随分古風な言い方ですね。探偵もどきなことをして
も探偵にはなれない人なんです。萩クン。

『魔法飛行』や『ななつのこ』で、駒子の「なぜ?」に「それは」と答えてくれ
た瀬尾さんとは、まったく違うタイプですねー。萩クン、頑張って!

駅の伝言板、って使ったことありますか?


明日は第四話『木曜日の迷子案内』。
おおっと、、明日はホワイトデーです〜♪

じゃ、また明日!






2002年03月12日(火) 加納朋子著『月曜日の水玉模様』 1

またまた、加納朋子ワールドに戻ってまいりました。
2月末に『魔法飛行』『ななつのこ』を読んで、3月の図書室は『掌の中の小鳥』
から始め、ひと区切りつけたものの、日常の謎と連作短編は魅力的なんですー!

選んだ本は『月曜日の水玉模様』。
七編の連作短編です。勘の鋭い方なら、本のタイトルと七編ということに、ピン
とくるものがあると思います。『火曜日の頭痛発熱』『水曜日の探偵志願』
『木曜日の迷子案内』『金曜日の目撃証人』『土曜日の嫁菜寿司』『日曜日の
雨天決行』と、各曜日に一話ずつ読みたくなるような構成で、曜日の下の文字
を並べると、「みずたまもよう」となる凝りようです。わくわくします〜♪

今夜読んだのは第一話、表題作の『月曜日の水玉模様』。
(!今日は火曜日でした。 笑 明日にでも調整しましょう。)

主人公はOLの片桐陶子です。彼女は、毎朝の通勤電車で見かけるサラリーマンの
ネクタイが日替わりで決まっていることに気づきます。月曜日は水玉模様、火曜
日はストライプ、水曜日はペイズリー、という具合に。彼女は、この几帳面な
彼が気になるようになります。同時に会社の周りにはビル荒らしが現れ、陶子は
彼の姿を目撃します。

期待しすぎないようにと、読み始めて、ぐいぐい引きずり込まれました。
陶子の会社の社長さん、まったく、もぉ!憎めないですねー。
陶子のセリフ「ぽんぽこ親父」が、涙でそうなほどピッタリ!

読後感が心地良いミステリは、加納さんならでは☆

『月曜日の水玉模様』は集英社文庫。表紙はもちろん水玉模様です。



じゃ、また明日!








2002年03月11日(月) 植松二郎著『象の手紙』

『推理短編六佳撰』(創元推理文庫)最後のお話は、『象の手紙』。
すっと手をのばしたくなるタイトルです。植松二郎さんは、フリーのコピー
ライターだそうで、タイトルにもセンスが反映されているわけなのですねー。

ほのぼのとしたタイトル(わたしにとって、ですけど)とは裏腹に、事態は
深刻です。オンエア中のテレビコマーシャルに盗作の疑いが懸けられ、調べて
みたところ、教材用のフィルムに似たシーンが見つかります。

現実にもあるでしょう。テレビコマーシャルじゃなくても、小説にも歌にも、
あれ?似ているというのは、ありますよ。盗作かどうかは別にして。

ネットでも、たまたま通りかかったサイトに、自分がUPしたのと同じ表現の
文章を見たことがあって、その時は、冷水を浴びせられた状態になりました。
盗作とは思いたくありませんが、、複雑ですよねー。
もし、向こうの方がわたしの書いたものを見たら、同じ気持ちだと思います。

話を戻して、『象の手紙』には、胸に染み入るフレーズがでてきます。
あえて、ここでは書きませんが(あまりに素敵なので)、読んだらハッとする
でしょう。コピーライターですねー。しみじみ。

解説対談でも、このフレーズとパーツパーツは凄く良くて、改稿を条件に受賞作
にしても、、とまで評価されています。(改稿が条件、そんなことあり?)

ただ、残念なことに、書き出しがないんです。
いろんなものがギュギュッとつまっていて、この話を書きたくて書きたくて、
という作者の意気込みが伝わってくるのに、、もったいないです。


『推理短編六佳撰』を読み終えて・・どれも面白かったですー。
すっごく参考になりました!
推理小説を書きたくなりました〜♪ なんて、うそうそ。。笑


じゃ、また明日! 


















2002年03月10日(日) 那伽井聖著『憧れの少年探偵団』

『推理短編六佳撰』(創元推理文庫)から、今日のお話は『憧れの少年探偵団』。
那伽井聖(なかい きよし)さんは、'91年に鮎川哲也賞に応募した『羅候の首』
が最終候補作になった方です。

少年探偵団、いいですねー!
リーダー格の利発な男の子とかわいくておませな女の子、そして、力持ちの大柄
な男の子とひょろりとしたオタクっぽい男の子のグループが浮かびます。
(多分に『名探偵コナン』の影響あり・ 笑 )

こちらの探偵団のメンバーは、僕、紅一点の未菜美(みなみ)、怪力の勝川君、
ゲームオタクの司馬君、そして頭のいい月岡君です。
小学5年生の少年探偵団が取り組んだ事件は、近所の大きなお屋敷での殺人事件
でした。クリスマスの夜の密室殺人を見事な推理で解いていきます。

この密室トリックが、新しいです。
どうして、今までこのトリックに誰も気づかなかったのでしょうか。

月岡君が妙に大人っぽくて、少々、違和感がありますー。
未菜美は、うふっ・・いますいます。こんなふうにおませな子。
ただ、少年探偵団が解くには、重すぎませんかぁ〜密室殺人ですー!!
せめて、空巣にしてほしかったです。

選評では、密室トリックは高く評価されてるんですが、うーん、この選評、
推理小説家をめざしている方だけじゃなく、児童書を書いている方にも、ぜひ、
一読をおすすめします。子どもものを書くのは、難しいんですねー。



明日は『象の手紙』
面白そうなタイトルです。
じゃ、また明日!





2002年03月09日(土) 永井するみ著『瑠璃光寺』

「水野の図書室」で紹介した本を読みましたよーと、メールを頂くことがあります。
とても嬉しくて、ホント励みになります。

このエンピツ日記には、いろいろなジャンルがあるんですが、映画日記を書かれ
ている「saaraの日記」で、「水野の図書室」を紹介していただきました。
saaraさん、ありがとうございます。
「saaraの日記」は、映画の話題、ときにテレビや本のことなど盛りだくさんで、
楽しく読ませていただいています。謝謝。


   * * * * * * * * * *


『推理短編六佳撰』(創元推理文庫)は、創元推理短編賞の最終候補作品集だけ
あって、今まで読んできたお話は、どれも読み応えがありました。
四番目の『瑠璃光寺』も、良かったです。独特のひんやりとした世界で、ぞくっ
ときました。永井するみさん、他の作品も読んでみたいです〜。

隅田川を走る船から川へ飛び込んだ女を美術館で見かけた亮は、彼女を誘い出し
不倫関係を持ちますが、彼女の胸の中にある真実は・・。

解説対談で、北村薫・宮部みゆき両氏とも『瑠璃光寺』の書き出しを誉めてます。
画面から入ろうとしているところがいいそうで、そうなんですよねー、、
この書き出し、川に沈みかける女の顔がスローモーションビデオのように
目の前に再生される感じです。

はにゃん?この作品も詳しく説明しすぎとは・・。
説明したいんですよー!! この世界をわかってほしい。女の気持ちをわかって
ほしいんですっ!これも、書きすぎですか・・残念ですー。
そして、こんな女には共感できない、って・・これは同感です。

こんな女がいたら(いそう)、怖い。だからこそ、小説になるんです。


じゃ、またね。





2002年03月08日(金) 永田正夢著『試しの遺言』

遺産・遺言・弁護士、ときたら、遺産をもらう子どもは三人以上でなくては
いけません。遺言ミステリのお約束。そして、遺言が謎解きパズルなら、申し
分ありません。このお話、申し分ない本格ミステリの装いかと思ったのですが。

うーん、うなりましたーー!! 
『推理短編六佳撰』(創元推理文庫)の第三話は『試しの遺言』。
パズル好きの父が残した遺言は、自分の作った暗号が解読できれば悪いように
しないというものだったのです。三人の子どもが挑んだ結果は・・。

永田正夢さんは、ものすごくパズルに詳しい方のようです。でないと、こんな
暗号を絡めた遺言状を考えることはできないですよねー。
なのに、法律的に・・あれっ!?というところがあるんです。
暗号がすごいだけに、もったいないですー!

日本の相続財産ものは書くのが難しい、というようなことを宮部みゆきさんが
おっしゃってます。宮部さんでも、難しいのですかっ!!
舞台を欧米にして、遺言状だけでどうにでもなるようにすれば、丸く収まった
のかも・・。


応募の前に、法律の専門家に読んでもらえば良かったのに・・残念。
弁護士さんじゃなくても、法学部の学生とか、相続を経験した人とか、法律に
詳しい人に読んでもらえば、良かったのに・・。残念すぎます。
法律面がクリアしていたら、受賞だったかもしれないですね。

はぁ・・ため息です。面白かったから、なおのこと。

じゃ、また明日!







2002年03月07日(木) 釣巻礼公著『崖の記憶』

『推理短編六佳撰』の二番目の作品は、釣巻礼公さんの『崖の記憶』。
これも、昨日の作品と同じくらい面白かったです。

北村薫氏がこの作品を読んで、うまいなあ、うまいなあと感嘆したというの
ですから、かなりうまいのでしょう。ただ、結びが今ひとつとあったのは、
わかりますー。

読者に疑問が残らないように、ていねいに書いてあるのですが、書き込みすぎ
という感じです。うーん、もったいないー!

お話は、「私」の少年時代の思い出です。対立するふたつの子どもグループに
現れた少女が引き起こす事件。少女への淡い恋心のようなものが甘酸っぱく、
いい雰囲気なのですが・・。

ぐいぐい引き込まれて、疑問がなくなるというのは、美味しいお料理を食べ過
ぎた時に似ています。美味しい(面白い)より、お腹いっぱい(なあんだ・・)
が勝ってしまうんです。

子どもたちの会話は、とても自然で良かったです♪








2002年03月06日(水) 遠田緩著『萬相談百善和尚』

文学賞の受賞作品は読むことができますが、最終候補作品は読みたいと思っても、
活字になることはなかなかありません。最終候補作品集があればいいのに、と
たびたび思っていました。

そんなわたしの気持ちが届いたのか、本屋さんでこの本を見たとき、心の中で
わぉ!これ、これ、こういうのが読みたかったのー!と叫びましたー♪

  『推理短編六佳撰』北村薫・宮部みゆき選(創元推理文庫)

レモン色の帯には、「すぐ読めてオモシロイ・推理作家を目指すあなたも
目指さないあなたも・短編集フェア」とあるではありませんか!
わかりやすくて、いいですね。○○氏絶賛!とかあると、なぜか引いてしまい
ます。

この短編集、'95年の創元推理短編賞の最終候補作品集なのです。
362編もの応募作品の中から最終候補に六編を残しながら、絞りきれず、受賞作
なしと決定された年です。
埋もれさせるにはあまりに惜しいということで、編まれた本書だそうです。
(あまりに惜しいなら、賞をあげても・・と思いますが・・。)


第一話は『萬相談百膳和尚』(よろずそうだんひゃくぜんおしょう)
遠田緩(とおだ かん)さん。女性です。
最近の作家名は、男女の区別がわからないものが多いですよね。

そうそう、この本、最後に選評がついています。その上、北村薫、宮部みゆき
両氏の解説対談まで!うーん、親切ですねー。推理作家を目指す人には必読
でしょう。あ、それで、帯には、推理作家を目指すあなたも 目指さないあなた
も、というコピーがあったわけですね。なるほどなるほど。。

話は戻って、第一話の感想ですが・・。
うまくまとまってます。スルスル読みました。
面白いお話です。どんな相談にも応じるという和尚さんと推理小説を書く男の
話です。
受賞作でも不思議はないほど、面白いのに・・。
選評にあるように、暗さのことなら、そうかもしれません。
主人公の推理作家は、もっとカッコ良くしてほしかったです。
50枚でこんなに密度の濃い作品は、すごいです♪


じゃ、また明日!




2002年03月05日(火) 加納朋子著『掌の中の小鳥』 5

最後のお話になりました。5日間、『掌の中の小鳥』に浸っています。
一日一話の短編をゆっくり味わっていますが、この本は文庫としては普通の厚さ
です。(ご心配なく)

第五話『エッグ・スタンド』では、圭介が、ある女の子の物語を泉さんに話し
ます。その子の名前は「嘘つきミチル」、虚言癖のある少女でした。
子どもの頃、ミチルの空想の世界を冷ややかに傍観していた圭介が、久しぶり
にミチルに会ったのは、ある茶会の席。ここで、指輪の盗難事件が置きます。
圭介はミチルが犯人だと名指ししますが・・。

泉さんが、圭介の話だけでミチルの気持ちをすくい上げるところは、『魔法
飛行』の瀬尾さんを彷彿させます。泉さんの店の名、エッグ・スタンドはタマゴ
立てのことなのですが、泉さんがこの名前に込めた想いを語るシーンは、何度も
読みたいところです。サラサラと語る泉さん。魅力的です〜☆

誰もが誰かのタマゴ立てになれたら、いいですよねー♪
そして、見回せば、ありふれた日常の中にも謎があり、同じ一日は二度ないの
です。

加納朋子著『掌の中の小鳥』(創元推理文庫)

   ミステリ×恋愛×人生の指針・・って感じ。面白かったです!



じゃ、また明日!







2002年03月04日(月) 加納朋子著『掌の中の小鳥』 4

男女の間に友情は成り立つのか・・これは永遠のテーマです。
わたしが思うには、成り立ちます。← キッパリ。キッパリは快感ですー。
でも、わたしのまわりの人は、成り立たないって言う人が多いんです。
困ったもんです。って、そうでもないけど。 笑 

あ、こんな話をしたのは、今夜読んだ第四話で、紗英と幼なじみの武史が、
ホレボレするような男女の友情を見せてくれたんです!

ほらね! 男女の間でも立派な(?)友情があるではありませんかぁ〜♪
っむぅ・・←発音難解。
こ、これは、もしや、幼なじみだからなのかなー?
っほぉ・・幼なじみじゃなかったら、・・うーん、どうなんでしょ?

第四話『できない相談』は、武史が紗英に面白いゲームを見せてくれます。
マンションの一室から、その部屋で暮らす女性を家具と共に10分で消すと
いうもの。

・・このトリック、少しムリがあると思います・・。
部屋の匂いって、ありますよね・・同じマンションでも。。

うーん、何か引っかかりますが、紗英と武史が爽やかで救われます。

じゃ、明日は最終話です。






2002年03月03日(日) 加納朋子著『掌の中の小鳥』 3

昨日、駅の駐輪場に自転車を停め、駅ビルのドラッグストアーでシャンプー
などを買って、いそいそと戻ったら・・自転車が無くなってました・・。

      ・・・あれっ?おやっ?・・いや〜んん。。

確か、この辺に停めたはずなのにぃ・・と、うろうろしていたら、背後から
「やられたんですか?」とまったりしたソプラノの声が。恐る恐る振り返ると
髪をきりっとひとつにまとめたお上品そうなオバさまが、乗客を迎えるスチュ
ワーデスのごとく、姿勢良く、ハの字の開き具合に足を揃え、両手を前で重ね、
立っておりました。

「はぁ・・自転車が見当たらなくて」と、わたしが言い終わらないうちに、
そのハの字のオバさま、待ってましたと言わんばかりに、「わたくしも、先月、
やられましたのよ。鍵をかけても、新しい自転車は狙われるんですって。
でも、移動されていることもありますから、よく見た方がいいですわよー」と、
ご親切に声を掛けてくださり、ズラリと並んだ自転車の列から、この場所には
浮いてるようなピッカピカの自転車に乗って、スルスルと軽やかに行かれました。

お上品なお姿と「やられたんですか?」の言葉はアンバランスで、こういう時は
「どうされました?」の方が適切なのではないだろうかなどと考えながら、
「よく見た方がいいですわよー」にすがりつくような気持ちで、駐輪場を端から
一台一台確認しながらすすんだところ、とんでもなく離れた場所で、

     わーい! 発見! My自転車!!

誰かが、移動させていたんですっ!んもおお!!勝手に動かさないでよぉ〜!

あー、良かった良かった。あのオバさまに会わなかったら、よく探すことも
しないで、うなだれたまま家に帰っていたでしょう。で、友達に電話して
ひとつのショックを5人くらいに配りまわっていたことでしょう。

     オバさま! ありがとうございましたーー!!
     自転車、見つかりました!!

って、今度、お会いしたら言うつもり。
初めて見かけたオバさまなので、二度と会えないかもしれないけれど。

まったく、人生、どこでどうなるかわかりません。


『掌の中の小鳥』第三話は、奇しくも『自転車泥棒』
紗英は、盗まれた自分の自転車に乗る学生を偶然見つけ、学生証を取り上げま
すが、この自転車が騒動の元に・・。

いいお話ですぅ〜。ハートウォーミングストーリーです♪

ひとつ・・軽々しく、自転車泥棒に近づくのは、危険ですぅー!
いつもいい人とは限りませんからね。



じゃ、また明日!










2002年03月02日(土) 加納朋子著『掌の中の小鳥』 2

第二話は『桜月夜』
パーティーで知り合った女性を連れ出した圭介。
彼女が案内したのは、“EGG STAND”という名の小粋なカクテルバーでした。
そこで、彼女が語るのは桜に捧げる物語、ある誘拐事件の話。

妻子ある男性と不倫関係にあった「私」は、偶然出会った彼の息子に狂言誘拐
の計画を打ち明けられますが・・。

うーん、何ともいえないせつなさですねー。
続きは、明日書きます。。

---------------

で、明日というか今日になりました。
3月は何かとあわただしく、じっくりひとつのことができなかったり・・。
いやはや、申し訳ありません。

『桜月夜』では、子どもの方から、自分を誘拐して父親から身代金を奪おう、
なんてことを言い出すんですが、この子どもは、父親が不倫していることを
知っているんですよー!そして、偶然会った女性がその不倫相手だとも!
子ども心に、不倫なふたりを別れさせようとするあたり、胸がしめつけられそう
です。子どもは遊びがすべてであってほしいです。

 『大人はすべてを遊びにしてはいけません』(水野はるか)でしょ?


“EGG STAND”を女ひとりで切り盛りする泉さんが素敵です。

はふぅ〜美味しいカクテルが飲みたくなってきました。
そういえば、、この『掌の中の小鳥』(創元推理文庫)の帯には
「cuteなミステリのカクテルに乾杯!」と一行!

    ≪はーい、乾杯!・・・美味しいです〜♪≫






2002年03月01日(金) 加納朋子著『掌の中の小鳥』 1

加納朋子の『魔法飛行』と『ななつのこ』を読んで、ほんわかしたミステリの
魅力を知りました。あん〜、これが読書の楽しみなんですねー♪

5年くらい前に、向井敏の『贅沢な読書』(講談社現代新書)を読んだとき、
確か、ジャンルのめがねを通して本を読むことから自由になったときに、「贅沢
な読者」として「贅沢な読書」を楽しむことができるようになるとありました。
そのときは、そっか〜と、漠然と受けとめていたのですが、なんとなく、その
意味するところがわかったような気がします。

『掌の中の小鳥』も、短編が連なる長編です。五つあるお話の最初は、本の
タイトルにもなっている『掌の中の小鳥』。

大学時代、「僕」はアートクラブの容子に密かな想いを寄せていた。しかし、
先輩、佐々木が容子とつきあい始める。絵に没頭する容子と、彼女の才能を
理解する「僕」、そして佐々木。そんなとき、容子がコンテストに出品するため
描いた絵が汚される事件が! 四年ぶりに雑踏の中で偶然に再会した「僕」と
佐々木先輩は・・。

なんだかせつないお話ですねー。
ミステリというより、せつない恋の物語のようです。

「掌の中の小鳥」というのは、この本全般のテーマでしょうか。
賢者と子どもの問答です。人生を言い当てているような深い意味を感じます。
どんな問答かは、ぜひ、読んでみてください。

明日は、第二話『桜月夜』へ。

桜の便りが待ち遠しいですね。

   じゃ、また明日。






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