水野の図書室
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皆さま体調に気を付けて今日も良い一日でありますように。


2002年01月31日(木) 2002年1月のまとめ

今日で1月が終り・・早いですぅ〜もう1年の1/12が過ぎたことに!
ということで、今日は1月のまとめをしましょう♪
エッセイからスタートした今年の図書室。ホラー、ミステリ、せつない話と
いろいろ読みました。

 **-----------------------1月の読書記録-------------------------**


04日(金)鷺沢めぐむ著『途方もない放課後』(新潮文庫)

05日(土)鷺沢めぐむ著『君はこの国を好きか』(新潮文庫) 
06日(日)     『ほんとうの夏』

07日(月)有栖川有栖著『ジュリエットの悲鳴』(角川文庫)
            『落とし穴』
08日(火)     『裏切る眼』
09日(水)     『危険な席』
10日(木)     『パテオ』
11日(金)     『登竜門が多すぎる』
12日(土)     『タイタンの殺人』
13日(日)     『夜汽車は走る』
14日(月)     『ジュリエットの悲鳴』表題作
15日(火) SS/遠い出張・多々良探偵の失策・世紀のアリバイ・幸運の女神

16日(水)『ゆがんだ闇』(角川ホラー文庫)
           小池真理子著『生きがい』
   
17日(木)     鈴木光司著『ナイトダイビング』 
18日(金)     篠田節子著『子羊』       
19日(土)     坂東眞砂子著『白い過去』    
20日(日)     小林泰三著『兆』(きざし)   
21日(月)     瀬名秀明著『Gene』 

22日(火)黒川博行著『カウント・プラン』(文春文庫)
            『カウント・プラン』表題作
23日(水)     『黒い白髪』
24日(木)     『オーバー・ザ・レインボー』
25日(金)     『うろこ落とし』
26日(土)     『鑑』

27日(日)浅田次郎著『見知らぬ妻へ』(光文社文庫)
            『踊子』
      
28日(月)     『スターダスト・レヴュー』
29日(火)     『かくれんぼ』 
30日(水)     『うたかた』

31日(木) まとめ♪

------------------------------------------------------------------
以上、10人の作家による30作品を図書室で読みました。
良かった作品ばかりですが、その中でベスト3は?と聞かれたら、

有栖川有栖著『夜汽車は走る』ミステリに叙情がたっぷり!!おすすめですーー!!
     瀬名秀明著『Gene』理系ホラー、面白い!(好き嫌いが分かれるかも)
     浅田次郎著『スターダスト・レヴュー』安心してひたれるせつなさ。。

と、こんな感じでしょうか。
『見知らぬ妻へ』は、まだ読んでいないのが4作品ありますので、明日はこの
続きを・・うひゃ!明日は『迷惑な死体』です。ぅ、すごいタイトルですが・・
どんなせつないお話なのでしょうか・・。

じゃ、また明日!







         


2002年01月30日(水) 浅田次郎著『うたかた』

古くなって取り壊しが決まっていた団地で、発見された衰弱死のおばあさん。
自殺とは言えないまでも、部屋は整理され、冷蔵庫はからっぽ、覚悟の上の
死を思わせます。おばあさんの回想は、新築の団地に移り住んだ喜び、子供たち
の成長、独立、夫の死・・と、孤独を選んでいくひとりの女の人生でした・・。

物語に起伏があるわけでなく、夫婦で団地に来てからが淡々と語られていきます。
3DKで寄り添うように暮らす夫婦と子供たち。つつましくも愛情にあふれた生活
は、高度成長時代と共に姿を変えていきます。団地の敷地にある大きな桜の木は
ここに移り住んだひとたちの人生そのもののように、満開の花びらは風に舞い
美しく散って・・。

浅田次郎著『うたかた』は『見知らぬ妻へ』(光文社文庫)に収録。22ページ。
せつなさより、人生のはかなさを感じた8分。
読み終えたとき、桜の匂いを含んで彷徨うあたたかい春の風が待ち遠しくなり
ました。

うたかた、それは、はかなさ・・。









2002年01月29日(火) 浅田次郎著『かくれんぼ』

幼なじみって、どんな存在なのでしょうか。子供の頃にいっしょに遊んだ友達、
同じゲームをして、同じ漫画を読んで・・そんな単純な幼なじみしか想像できない
わたしにとって、『かくれんぼ』に登場する幼なじみの三人には、とても特別な
絆を感じました。

幼なじみの英夫、由美子、武志。三人だけがひっそりと抱える思い出は、もう
35年も前の事件。10歳の頃の事でした。近所に住む混血の少年、ジョージを
かくれんぼの途中で原っぱに置き去りにして、暮れかかった山を下りたこと。
かくれんぼの名を借りた弱い者いじめだったのです。過去の出来事に苦しむ
彼らは・・・。

短編なのですが、いろいろなストーリーがきれいに絡み合って、大きなうねり
を作っているようです。英夫と由美子の乾いた結婚生活、武志の人生に、因果
とも思えるようにあの日の夕方は、一生忘れることはできない影となってついて
いきます。

今なら、混血(なんて、言わないですよねー)だからと白い目で見られることも
ないでしょう。偏見と差別があたり前のようだった戦後まもなく、近所の子供
達と仲良く遊びたいというジョージの健気さが胸にせまりました。

浅田次郎著『かくれんぼ』は『見知らぬ妻へ』(光文社文庫)に収録。
38ページ。子供の残酷さをジョージに詫びたくなった15分。

せつないというより・・なんでしょう・・。
この物語は、・・ジョージです。ハイ。






2002年01月28日(月) 浅田次郎著『スターダスト・レヴュー』

世の中は公平なようで、公平じゃなく、誰を愛してもいいようで、愛しては
いけないひとがいて、禁じられた出会いなどないようで、見えない柵があったり
するものです。

愛したひとに愛されたなら幸せだと他人は思うでしょう。愛した人は、美しく、
ヴァイオリンの才能豊かで、家は裕福・・。音楽家を目指す僕にとっては、
「しめた」と思うような恋だった・・愛したことに偽りはなくても・・。

クラブ『スターダスト』でピアノを弾いている飯村を訪ねてきたかつての友人、
小谷。彼は、交響楽団の音楽監督になっていました。
そして、小谷の自慢の妹、節子は有名なヴァイオリニストに。
小谷は、節子が帰国してのコンサートで、飯村にバックでチェロを弾いてほしい
と頼みますが・・・。

音楽家になるって、お金がかかるんですよねー。高価な楽器、ヨーロッパへ
留学、偉い先生に師事して、それで初めてソロ・プレイヤーになる資格が
生れるというのですから、大変ですねー!飯村がオーケストラをやめた理由が
わかりやすいほどわかりやすくて、悲しくなりました。

そうなんです。この物語、頷き頷きページを捲れる、わかりやすいお話です。
飯村の屈折した気持ちが痛いほどよくわかって、先取りでせつなく悲しく・・。
浅田作品は世俗的といわれるところのような気がします。
世俗的、いいじゃないですか。。泣かせようとしてる、いいじゃないですか。
無理のない設定、丹念な人物描写、ていねいなセリフ・・好きです〜♪

浅田次郎著『スターダスト・レヴュー』は『見知らぬ妻へ』(光文社文庫)に
収録。36ページ。せつなさを先取りしながらの25分。
浅田さん、音楽にもお詳しいのでしょうか・・クラシック好きな方にも
おすすめしたいです。


2002年01月27日(日) 浅田次郎著『踊子』

1月最後の日曜日。いかがお過ごしでしたでしょうか。
ちょっと、せつない物語が読みたくなりました。ホラー、犯罪もの疲れですね。
そこで選んだのは、浅田次郎さんの短編集『見知らぬ妻へ』。文庫本の裏表紙
には、やさしくもせつない8つの涙の物語、とありました。

『鉄道員(ぽっぽや)』『ラブレター』『天国までの百マイル』で、この方の
せつないモードは確認済み。それでは、8日間、浅田次郎さんのせつない世界に
そっとひたってまいりましょう。← ひらがなでせつなさ受け入れ態勢に・・

最初の物語は『踊子』。
30年前のひと夏の恋・・僕が愛したひとは踊子だった・・。

離婚した両親がそれぞれ別の相手と家庭を持ったため、高校生だった僕は
ひとりぐらしをすることに。歌舞伎町の大きな踊り場で踊るナオミと僕が
初めて話をしたのは、店に警察の捜査が入った夜。店から逃げた僕が刑事に
見つかりそうになったとき、居合わせたナオミは僕に長いキスをして、恋人同士
のようなふりをしてくれたのだった・・・。

恋をした夏、昆虫のように殻を捨てた僕。ナオミは、僕の青春のまぶしい
1ページだった・・。

・・・せつない、というより、さびしいですね〜。

離婚した両親は、僕より新しい家庭を大事にしているようで、会いにいく僕に
すぐお金を渡して帰すあたり、少し苛立ちを感じます。
ナオミのキモチが、いまいち、よくわからないんですが、・・遠い昔のことなら
それでいいのかもしれないですね。思い出は、思い出すたびに、きれいに
書き換えられていくのかもしれないです。
彼女を思い出しながら、実の所は、自分をなつかしんでいる、そんな気がします。

浅田次郎著『踊子』は『見知らぬ妻へ』(光文社文庫)に収録。33ページ。
しっとりした24分。

それにしても、おませな高校生ですぅー。。んひゃ!どきどき。。
踊り場って、時代を感じますね〜。


2002年01月26日(土) 黒川博行著『鑑』

スルスル読めました。『鑑』は、鑑定や鑑識で使われるところの、鑑です。
事件の被害者と犯人を結びつけるもの、という意味でタイトルになったようです。

ホテルで殺された女性の捜査線上に、ダストハンティングが趣味の男が浮かび
上がります。が、・・。
ダストハンティング、なんて、カタカナにすると一瞬何のことかと思いますよね。
ごみを拾ってくることなんです。えええっっ!・・何、何?でしょ。
イヤですよね。人のごみ袋を集積所から持っていくなんて!!
そして、ごみを自分の部屋でひろげて眺めて、生活を想像するんです!
りんごの皮を見て、うすくむいているからあの子は器用な子や、とか!!

   ≪許せませんっ!≫

取調べ室の犯人と刑事のやりとりが、たたみ込むようにラストに持っていきます。
一気につきすすむ感じでいいですー。

黒川博行著『鑑』は『カウント・プラン』(文春文庫)に収録。44ページ。
昨日の『うろこ落とし』とは逆に、とても読みやすかった16分。
面白かったです。この短編集の中で1番良かったと思います。

『カウント・プラン』を読み終えて、ひとこと・・この刑事さん達、頼もしい!


黒川博行さんは1949年生まれ。
高校で美術教師をしていたとき、'86年に『キャッツアイころがった』で
サントリーミステリー大賞を受賞、デビュー。'96年に『カウント・プラン』で
日本推理作家協会賞短編部門賞を受賞。直木賞の候補に上がること4回。

新犯罪ミステリの五日間は、暗い気持ちに・・。
せつない物語を渇望している自分に気づいた今夜。
明日は・・せつない系に行きましょうか・・。
じゃ、また明日!


2002年01月25日(金) 黒川博行著『うろこ落とし』

親友を刺し殺した女性は、正当防衛だったのか、それとも・・、となる話なの
ですが・・・読みづらいんです。名前がヅラヅラいろいろでてきて・・。


挫折しました。

ちなみに41ページ。なんとか2/3くらい読んだのですが・・。
『カウント・プラン』(文春文庫)に収録の四つ目の作品です。

明日は、この短編集の最後の作品、『鑑』(カン)を読みます。



2002年01月24日(木) 黒川博行著『オーバー・ザ・レインボー』

なんだか暗ーい気持ちになりました。
タイトルからイメージするのは明るい世界なのですが、書き出しからラストまで
一貫した暗さが続きました。はぁ・・暗い話は少し苦手です。ふぅぅ・・。。
暗くても、光が一筋さしてくれればいいのですが・・。

熱帯魚の盗難事件と少女の誘拐事件。この二つの事件の捜査線上に現れた
金髪の男に刑事が迫ります。

またまた大阪の刑事です。この短編集『カウント・プラン』は、犯人と大阪の
刑事が主人公なんですねー。この作品の刑事も、勘がするどいです。
「ぴんときた」が、この刑事にぴったり。

アジア・アロワナのメタリックレッド、セキセイイインコの赤い羽、青い猫、
・・雑多な色があふれる世界は、犯人の狂気を一層重苦しくします。

黒川博行著『オーバー・ザ・レインボー』は『カウント・プラン』(文春文庫)
に収録。56ページ。どんどん息苦しくなった25分。
刑事の大阪弁が救いです。セリフの「ほな、」で、一休みできました。









2002年01月23日(水) 黒川博行著『黒い白髪』

昨日書いた文章を読み返したら、ぎこちなくて苦笑してしまいました。
黒川博行さんの作品を読むのが、まったく初めてなせいかもしれません。
昨日に続いて今日読んだ作品も、大阪弁の刑事が登場します。

お寺の住職が葬儀やにケガさせたことがこの事件の発端でした。
当初は、ささいなことに見えたできことが、刑事の推理で重大な展開に。

この刑事さん、鋭いですね〜。
と言うと冷徹そうですが、この大阪の刑事さん、気配りを忘れません。
ん?大阪の刑事さんは、皆さんこんなふうなのでしょうか・・?
人情たっぷりながらも、じわじわ核心にせまります。

黒川博行著『黒い白髪』は『カウント・プラン』(文春文庫)に収録。
43ページ。葬儀やさんの世界をちらりとのぞいた17分。
犯罪に使われたものが、こんな、どこででも買えそうなものとは・・。唖然・・。









2002年01月22日(火) 黒川博行著『カウント・プラン』

先週、直木賞の発表があって、山本一力さんと唯川恵さんに決まりました。
これは新聞・テレビなどで皆さまもご存知だと思います。候補には、ほかに
どんな作品が上がっていたのかと調べたら、石田衣良著『娼年』、乙川優三郎著
『かずら野』、黒川博行著『国境』、諸田玲子著『あくじゃれ瓢六』でした。

ん?黒川博行さん!? 以前も何度も候補に上がっていた方です!
'96年に『カウント・プラン』、'97年に『疫病神』、'99年に『文福茶釜』、
そして今回・・四回も候補に上がりながら受賞に至らなかったんですね・・。
そのときの受賞作は、それぞれ、坂東眞砂子著『山はは』、篠田節子著『女たち
のジハード』、佐藤賢一著『王妃の離婚』と桐野夏生著『柔らかな頬』です。
・・・うーん、黒川作品を読んでみたくなりました。

本屋さんに行ったら、『カウント・プラン』が文庫に!
ほほーっ!この作品、'96年の日本推理作家協会賞短編部門賞に輝いたのですね〜。
ほかに四作品が加わって、「新犯罪ミステリ」とは!
五日間、黒川博行Daysにしませんかぁ〜? ←誰に聞いているんでしょ・・笑

初めの作品は表題作、『カウント・プラン』。
何でも計算しないと気がすまない計算症の男、福島の日常生活から始まります。
ある日、スーパーに脅迫状が届き、捜査に乗り出した刑事は、福島に目をつけ
ますが・・。

舞台は大阪。この大阪の刑事が人情味にあふれていて、しみじみします。
福島の計算症を知った刑事が、彼のことをあれやこれやと心配するあたり、
なんともいえず、セリフがまろやかです。不思議な感覚ですね。最後まで結末が
予想できませんでした。

黒川博行著『カウント・プラン』は『カウント・プラン』(文春文庫)に収録。
80ページ。計算症って、大変です。。文中の細かい数に気をとられて、時計を
見るのを忘れてました。

ミステリにもいろいろありますね・・。













2002年01月21日(月) 瀬名秀明著『Gene』

『Gene』・・これはCD-ROMゲームの名前です。
薬学部の大学院生、映子(はゆこ)が、「悪魔のゲノム解析」をゲームの中で
やっていくうちに、ゲームだと思っていたものが・・・。

ゲノムというのは、・・解析するというのは、・・。
えっ〜と、ととと・・・読んでください!! 笑

専門用語が、こちらの都合も知識レベルもおかまいなしに、遠慮することなく
ガシガシでてきます。
瀬名ワールドですね〜。分子生物学の世界を小説にしてくださるんですから!
尊敬します。素直に。
そして、もちろん、文学として昇華されているわけで、すごいですー!
映子がゲームにハマっていくところは、グイグイ引き込まれました。

ただ、映子はえいこじゃなくて、はゆこ、なのは・・なぜ?
何か意味があるんでしょうか・・。わたしの読解力不足なのでしょうか?

瀬名秀明著『Gene』は『ゆがんだ闇』(角川ホラー文庫)に収録の最後の作品。
93ページ。ホラーなんですが、楽しめた40分。

    これ、続きが読みたいですーーー!!!
    瀬名秀明様ーーー続きを書いていただけませんかーーー!!!

瀬名秀明さんは1968年生まれ。
'95年に『パラサイト・イブ』で第2回日本ホラー小説大賞を受賞、デビュー。


『ゆがんだ闇』を読み終えてひとこと・・「この本、お得です♪」


じゃ、また明日!


2002年01月20日(日) 小林泰三著『兆』(きざし)

気持ち悪くなりました。
ホラー小説なんですね・・(って、事前に納得済みなんですが)。
気持ちが悪いので、手短に。

自殺した中学生、直美が、「兆」(きざし)というものになって、直美をいじめて
いた同級生、らんかの前に現れるお話です。この自殺を記事にしようとする
フリーライターのなえ子も絡んで・・・。

らんかの日記となえ子の取材が交互にすすむので、頭が混乱していきます。
そこに、直美の手記?が加わって、何が何だか、不安な気持ちに・・。
こ、こういう書き方は、ホラー小説向きなのかも。
うーん、作者の狙い通りですか?だとしたら、なんて素直な読者なのでしょう!
なんて、感心したり。

はぁ・・気持ち悪い・・。

小林泰三著『兆』は『ゆがんだ闇』(角川ホラー文庫)に収録。86ページ。
中編です。ホラー小説には、このくらいの長さは必要ですね。じわじわ怖くなった
35分。読み終えたら、怖さ<気持ち悪さ に。。


小林泰三(こばやし やすみ)さんは1962年生まれ。
'95年に『玩具修理者』で第2回日本ホラー小説大賞短篇賞を受賞、デビュー。


気持ち悪いので、今夜は早く寝ます。。おやすみなさい。










2002年01月19日(土) 坂東眞砂子著『白い過去』

『死国』、『狗神』(いぬがみ)などの土着伝奇ホラーのイメージが強い坂東
さんですが、この『白い過去』には、お遍路さんも言い伝えもでてきません。
なぜかホッとしながら読み進めました。

千春と陽治は、どこにでもいるような平凡な夫婦です。ある日、留守番電話に
入っていたメッセージが、千春の過去を連れてくるのですが・・・

なんだか切ないですね〜。
このメッセージ、活字で読んでも切ないのに、声で聞いたら・・と考えたら、
・・・、・・・胸がつまります。

ラストは切なさの極みをなぞります。
坂東眞砂子著『白い過去』は『ゆがんだ闇』(角川ホラー文庫)に収録。
49ページ。千春の気持ちになれたような18分。
主人公の気持ちになれる小説って、ありそうでないんですよー。
こんな気持ちは久しぶり。。
  

坂東眞砂子さんは1958年生まれ。
'86年にエッセイ『ミラノの風とシニョリーナ イタリア紀行』でデビュー。
『クリーニング屋のお月さま』などの童話を発表後、'93年『死国』で
ホラー界ヘ。'96年『山はは』で直木賞を受賞。


2002年01月18日(金) 篠田節子著『子羊』

SF的な発想で書かれた作品です。
ある施設に集められている40人あまりの「神の子」たち。「M24」と呼ばれる
少女は、笛を吹く少年と出会ったことで自分の宿命を考えるのですが・・。

息苦しいような未来が待っているのでしょうか。
作者が描くこの未来は、何かがねじれてしまっているようです。
そう遠くない未来、「神の子」は現実味をおびるかもしれません。
怖いですね〜。

読みながら、ふと浮かんだ映像は、ミスチルの『君が好き』のプロモーション
ビデオです。まさにあんなイメージです。

篠田節子著『子羊』は『ゆがんだ闇』(角川ホラー文庫)に収録。45ページ。
ストーリーの展開が次々に新しい扉を開いた18分。
この作品、オススメです。とにかく面白いです。
45ページですっごい満足感♪ 読んだーー!!という感じ。

施設・少女・少年・・『ハルモニア』を思い出しました。
TVドラマにもなったので、ご存知の方も多いかと思いますが、『ハルモニア』の
ストーリーもどきどき、わくわくが休まずやってきました。脳に障害をもつ
少女が奏でるチェロが思わぬ事態を招くというストーリーです。

ふーむ、ストーリーテラーなのですね〜。
篠田節子さんは1955年生まれ。'90年『絹の変容』で小説すばる新人賞を受賞
しデビュー。'97年『女たちのジハード』で直木賞を受賞。











2002年01月17日(木) 鈴木光司著『ナイトダイビング』

鈴木光司さんと言えば、1月19日に、映画『仄暗い水の底から』が公開ですね。
あ、あさっての土曜です。面白そうです〜主演は黒木瞳さん・・素敵な女優さん
です。憧れのお姉さまって感じですー。(大好き♪)

鈴木さんの作品は「水」や「海」が多いような印象があります。
そして、海の中の描写はきめ細やかな上に独特の緊張感が漂い、素晴らしいと
思います。

2001年11月28日〜12月04日に、図書室で『生と死の幻想』を読みましたが、
そこに収録されていた『キーウエスト』での、海中で海へびを見るシーンは
強烈でした。

さてさて、今日読んだ『ナイトダイビング』、緊張しましたーー!!
男女4人でナイトダイビングするお話です。← ありゃ、そのまんまです。笑
海の中で姿を消した奈緒が海底で見たものは・・・

この緊張感は、『生と死の幻想』の『乱れる呼吸』を思い出します。

鈴木光司著『ナイトダイビング』は『ゆがんだ闇』(角川ホラー文庫)に収録。
27ページ。まるで海の中にいるような9分。
すごい緊張感・・どうやったら、こんな緊張感文章が書けるのでしょうか!
書き出し5行とラスト4行が、めっちゃカッコいいです!
暗記したいくらい。。← 日常会話では使わない文章ですが・・笑




  ☆2001年12月25日に図書室で訪ねた唯川恵さんが、第126回直木賞に!
   受賞作は『肩ごしの恋人』(マガジンハウス刊)
   おめでとうございます。
                受賞作、近日中に読みます。







2002年01月16日(水) 小池真理子著『生きがい』

友人から、「お得な文庫があるよ」と聞いたのが、これです。
角川ホラー文庫の『ゆがんだ闇』。
お得?ほにゃ・・?何がお得〜?と本を手に取ってみたら・・

  なるほど〜!!

6人の作家のホラー短編集なのですが、メンバーがいいですねー
小池真理子・小林泰三・篠田節子・鈴木光司・瀬名秀明・坂東眞砂子、の6人。
揃いましたね。本を読んだことはなくても、名前はよく知られている方々ばかり。

本当にお得かどうかは、最後まで読んでから、ということで。

最初は、小池真理子著『生きがい』。
家族を飛行機事故で失ったレイコが、学生のノボルの世話をやくことに生きがい
を見出していくのですが・・・

喪失と孤独の恐怖を作者は書きたかったのではないでしょうか。
ただ、このラスト、怖いとは限らないような・・← どうも歯切れが悪い言い方。
怖い人には、たまらなく怖いかもしれませんが、笑ってしまいました。。。
生きがいにしていくプロセスの方が、ずっと怖かったです。

小池真理子著『生きがい』は22ページ。ゾクゾクした後でウキャ!の8分。
アパートを借りるときは、大家さんのことも聞いておきましょう・・


小池真理子さんは1952年生まれ。
'89年に『妻の女友達』で日本推理作家協会賞短篇賞、'96年に『恋』で直木賞を
受賞。恋愛小説の匂いがする心理サスペンスは、流石です〜。





2002年01月15日(火) 有栖川有栖著『幸運の女神』など4SS

今日読んだのは、有栖川有栖さんの短編集『ジュリエットの悲鳴』(角川文庫)を
読んだ時にスキップしたショートショートです。

『遠い出張』、『多々良探偵の失策』、『世紀のアリバイ』、『幸運の女神』
の四編。どれも3ページなので、あっという間に読めます。400字詰め原稿用紙で
五枚の長さだそうです。

一番楽しかったのが、『幸運の女神』。
ゴーかストップかと聞いてくるネットのお相手は・・うひゃ!!

『世紀のアリバイ』のアリバイ・トリックは、日本の有名な社会派推理小説に
似ていると、作者はおっしゃっているんですけど・・ぅううう、わかりません。
あれは、あれだよーとご存知でしたら、掲示板にて教えてくださいまし・・

有栖川有栖さんは1959年生まれ。
'89年に『月光ゲーム』でデビュー。
このペンネーム、なだいなださんを連想します。

ショートショートもいいですよね〜研ぎ澄まされた美しさです。








2002年01月14日(月) 有栖川有栖著『ジュリエットの悲鳴』

いよいよ、この短編集の表題作です。『ジュリエットの悲鳴』は、有栖川さんが
短編集をだすことになったときに、表題作にふさわしいタイトルがなかったので
表題作狙いで書かれた作品なのだそうです。なるほど・・書店の棚でも目を
引きました〜♪

ロックスターとインタビュアーが登場するこの物語、設定がこの短編集の中では
新鮮です。CD から女性の悲鳴が聴こえることがキーになっているのですが、
それ以上に、ロックスターの悲しい恋のお話にちょっとせつなくなりました。

有栖川有栖著『ジュリエットの悲鳴』(角川文庫)表題作は27ページ。
ロックスターの孤独にふれたような10分。
ただのミステリではありません。ぜひ読んでみて下さい。
表題作として存在感がありますーー!!


そうそう、今日は成人の日でしたね。
成人式をむかえた皆さま、おめでとうございます。
本を読みましょう・・ネ。



2002年01月13日(日) 有栖川有栖著『夜汽車は走る』

『夜汽車は走る』・・このタイトル、好きです〜♪
期待度100%でページを捲りました。

濃密な短編です。夜汽車に揺られながら、男が半生を回想していきます。
男が語る子供の頃のこと、母の秘密、妻との出会い・・そして、なぜ、この
夜汽車に乗っているのか、謎が解かれていきます。

ミステリに叙情たっぷりです。読み終えて、すっごく満足!
人生は旅だとよく言われますが、この男の人生は夜汽車の旅なんです・・。
しみじみ・・余韻がなんとも言えず・・。

有栖川有栖著『夜汽車は走る』は『ジュリエットの悲鳴』(角川文庫)に収録。
34ページ。夜汽車で向かい合った席の男のひとの身の上話を聞いたような12分。
・・この作品、わたしが読んだ短編の中で一番のオススメにしたいです。


汽車で思い出しましたが、西村京太郎さんのトラベルミステリも面白いです。
十津川警部が大活躍!鉄道にも詳しくなれます。

なんだか、遠くへ行きたくなりました。汽車の旅・・したいっ!!






2002年01月12日(土) 有栖川有栖著『タイタンの殺人』

SFミステリです。時は、21××年、地球人は他の惑星、衛星に植民地を求め、エイ
リアンたちとも交流を始めました。事件の舞台は、土星の第六衛星、タイタンで
す。貿易商が殺され、商談中だった三人のエイリアンが刑事に事情を聴かれます。

さあ、犯人は誰でしょう・・となるのですが「読者への挑戦状」が入っています。
お気遣いありがとうございます〜♪ミステリファンにはうれしいですーー!!
最後まで一気に読みたいところですが、この「読者への挑戦状」で、一呼吸おき
犯人を確信!

この殺人事件は、ミステリファンなら犯人を当てるのは簡単です。
三人のエイリアンが個性的ですね〜SFだからこそ楽しめます。

有栖川有栖著『タイタンの殺人』は『ジュリエットの悲鳴』(角川文庫)に収録。
32ページ。犯人当てが楽しい11分。
SFミステリ小説のお手本を見せてもらったようです。

エイリアン・・会いたいような、会いたくないような・・
   まぁ、向こうの人から見たら、わたしもエイリアンですけど・・

短編集の中にSFを入れるのは、目先が変わっていいですね。。








2002年01月11日(金) 有栖川有栖著『登竜門が多すぎる』

昨日読んだ『パテオ』は作家が主人公でしたが、今夜の『登竜門が多すぎる』は
作家志願の青年のお話です。

野呂茂夫、新人賞に応募する小説を書いています。推理作家を目指す彼のところに
突然、妙なセールスマンが訪ねて来るのですが、このセールスマン、タダ者じゃ
ないんです。ミステリ小説を書くために必要だというパロディチック商品を
次々に紹介していきます。実際にありそうな、なさそうな、あったらいいだろうな
と思われる商品を見せられた野呂は・・・

!!!!この商品が、笑えます。楽しめるお話です。メッチャ面白いですっ!!!
この作品、宮部みゆきさんも「面白かった」と、有栖川さんに葉書を出されたそう
です。

有栖川有栖著『登竜門が多すぎる』は『ジュリエットの悲鳴』(角川文庫)に
収録。31ページ。笑いの中にミステリ作家の意外な大変さを知った10分。
ミステリ好きは、すっご〜く楽しめます〜♪



あ、ちょうど9時。これから『風の谷のナウシカ』を見ます〜☆





2002年01月10日(木) 有栖川有栖著『パテオ』

小説を読む楽しみのひとつに、知らない世界を覗けることがあります。
『パテオ』は作家たちの物語。文芸倶楽部のパーティのシーンから始まります。

作家が集まるパーティですから華やかそうです〜(行ってみたいです♪)
と、思ったら、孤独な男がひとり。主人公の虻田(あぶた)です。
なぜ孤独かって・・同期にデビューした作家は、その後、大きな賞の肩書きが
ついて偉くなっちゃうし、会場までいっしょに来た編集者は、売れっ子作家の
顔を見つけるやいなや、飛んでいくし・・パーティが華やかであればあるほど、
孤独な人はどんどん孤独に・・どんな業界でもそうかもしれません。

そんな孤独な虻田に声を掛けたのは、遅れてきた仲間たち。
良かった良かった、虻田さん。お友達がいるじゃないですか・・と思ったら
創作談義をするうちに、傑作を書く彼ら共通の秘密を知ることに・・・

この秘密、なんだかフィクションに思えません。
有栖川さんの実体験なのでは・・、うーん、聞いてみたいです〜

有栖川有栖著『パテオ』は『ジュリエットの悲鳴』(角川文庫)に収録。
27ページ。ぐいぐい引きこまれた10分。
パテオの夢には、ご注意を!!



あのー最近、ここの文章が短くなっているような、・・なっています。
決して、手を抜いているわけではないのですが・・微笑


・・じゃ、また明日!



2002年01月09日(水) 有栖川有栖著『危険な席』

はぁ・・昨日の『裏切る眼』に続いて、また、妻の不倫を疑う夫が登場です。
妻の不倫は小説ネタになりやすいのでしょうか・・?
うーん、不倫には、過去と未来が絡みますから、書きやすいのかもしれませんね。
ま、書きやすいかどうかは、置いといて・・

朋彦(ともひこ)は、妻、加津子とふたり暮らしです。加津子はカルチャー
スクールの小説講座に通っているのですが、講師と不倫関係にあるらしい、と
朋彦は疑っています。朋彦が乗った次の列車で事件が起きた時・・・

列車内のトリックを暴くだけで終わらないところが、有栖川さんらしいところ
ですね。自宅に戻った朋彦を迎える加津子の顔の向こうには、お話はこれから
とニヤリとしている作者がいるようです。

朋彦と加津子のお互いをさぐり合うような会話は、寒気を覚えます。
心理サスペンスはゾクゾクしますね。

有栖川有栖著『危険な席』は『ジュリエットの悲鳴』(角川文庫)に収録。
29ページ。薄い氷の上にいるような夫婦を心配する・・10分。

列車に乗るときは、気をつけましょう。何に?って、読んでみてください。







2002年01月08日(火) 有栖川有栖著『裏切る眼』

「あなたと出会えて良かった」・・言うのも言われるのも幸せを感じます。
もし、「あなたと出会わなければ、あんなことをすることはなかった」と言われた
ら、困惑します。あんなこと=犯罪 なら、絶句です。

『裏切る眼』の登場人物は三人。正確には9歳の子供もいますが。
千里は、夫、和俊の従兄の京助と密かな関係にあります。和俊は、千里と京助の
仲を疑うようになっていき、京助しか見えなくなっていく千里は、・・

京助が千里の子供にあげるスライム(なつかしー!)が重要な役割を果たします。
あ、あんまり言っちゃうと、読む楽しみが半減しますね〜

ミステリ以上に、微妙なズレを見せていく夫婦の会話が味わい深いです。
ためになります〜 ← ためになって、どうするのぉ!笑
妻の不倫を疑う夫は、妻の目の輝きにまで敏感になるのです。なるほど・・

有栖川有栖著『裏切る眼』は『ジュリエットの悲鳴』(角川文庫)に収録。
29ページ。不倫は犯罪のはじまり、と感じた10分。
はぁ・・ため息。。
「出会えて良かった」と言える人とだけ出会いたいですね・・
 








2002年01月07日(月) 有栖川有栖著『落とし穴』

ミステリ集が読みたくなって選んだのが、有栖川有栖(ありすがわ ありす)著
『ジュリエットの悲鳴』です。有栖川さんの作品には、ふたりのシリーズキャラ
クターの探偵がいますが、この短編集はまったくのノンシリーズ。
裏表紙には「有栖川有栖の魅力の全貌を伝える傑作ミステリ集!」と・・!

パラパラ見ると、タイトルにまず惹かれます。『裏切る眼』『夜汽車は走る』など
読みたくなるタイトルなんです。表題作の『ジュリエットの悲鳴』は、一番最後
・・・じゃあ、これは最後のお楽しみにして、と。
短編8作品、ショートショートが4作品・・12作品は魅力的ですね。全貌に近づける
かもしれません。

わくわくしながら、最初に読んだのが『落とし穴』。
これは、犯人側から犯罪を描いた、いわゆる倒叙ミステリです。

犯罪のきっかけはささいなことでね〜上着の取り違えです。
苗川が会社で取り違えた上着は、不仲な同僚、鬼頭の物だったのです。
上着に入れておいた自分の不正の証拠を握られた笛川は、完全犯罪を目論み、
巧くいくはずだったのですが・・・

タイトルの落とし穴が、ぱかっと・・

綿密な企てが、いとも簡単にくずれるプロセスはブラックユーモア的です。
以前、知人からこんなことを聞いたことがありました。
「人生には、昇り坂、下り坂、まさか! がある」と。
嬉しい まさかならいいですけど・・

有栖川有栖著『落とし穴』は『ジュリエットの悲鳴』(角川文庫)に収録。
27ページ。サラリーマンの悲哀を感じた9分。
笛川の不正が・・なんだか情けないんです。恋人の美雪が知ったら、泣きますね。








 


2002年01月06日(日) 鷺沢萠著『ほんとうの夏』

昨日の『君はこの国を好きか』に続いて、在日韓国人三世が主人公です。
『ほんとうの夏』の主人公は新井俊之、大学生。『君はこの国を好きか』のアミ
と違うのは、自分が韓国人であることをまわりの友人や恋人に言えないでいると
いうことです。

日本で生まれ育ち、韓国語を話せず、ハングル文字を読めず、朴俊成という本名
ですら韓国語で何と読むのか知らない俊之は、韓国人であることを隠してきたわけ
ではありません。新井俊之でずっときてしまって、いきなり、自分の国籍をまわり
の人に言うのも・・躊躇しているだけなのです。

うーん、・・・名前は国籍を知るひとつの手がかりですから、・・。

恋人、芳佳(よしか)を車で女子大へ送る途中、軽い追突事故を起こした俊之は
芳佳を車から降ろして、早く行けと追い立ててしまうんです。

せつないです。芳佳は事情がわからず、泣きながら駆けて行くあたり。
警官が来る前に、芳佳に立ち去ってほしかったのは・・・

俊之にとって、芳佳は大切な人だというのが、ひしひしと伝わります。
俊之の韓国人の友人、スンジャは、自分が韓国人だと言った途端、彼氏は黙って
帰ってしまうし・・ふだん、この人は日本人、あの人は韓国人、なんて、考えて
つきあっているわけではないけれど、目の前で、実は国籍は・・とか言われたら
驚くのかな・・。

俊之は、数少ない韓国人の友人との話の中で自己認識を強めていきます。
在日韓国人であることの気遣いにも触れていて、テーマは重いのですが、颯爽と
しているのは、鷺沢さんの文体にあるのではないでしょうか。

鷺沢萠著『ほんとうの夏』は、『君はこの国を好きか』(新潮文庫)に収録。
101ページ。青春の二文字が舞い降りたような27分。
青春・・ほろ苦く甘い響きです。


ところで、あとがきを読んで、びっくり!
タイトル『ほんとうの夏』は、当初、『もっと、もっと』だったそうです!!
諸般の事情で変更されたのだとか・・
やっぱりね。


鷺沢萠さんは1968年生まれ。'87年、18歳の時に『川べりの道』で文学界
新人賞を受賞、デビュー。'92年に『駆ける少年』で泉鏡花賞を受賞。
今日読んだ『ほんとうの夏』は、三島賞候補作品でした。



2002年01月05日(土) 鷺沢萠著『君はこの国を好きか』

なんて響きあうようなタイトル!
「君はこの国を好きか」なんて、2秒で言われたら、ドキドキします。

「あなたはこの国が好きですか」より「君はこの国を好きか」の方が、グッと
きます。同じことを聞いているのに。「君はこの国を好きか」には、「僕はこの国
が好きだ」が背中合わせになっています。そして、「わたしもこの国が好き」と
言って欲しい僕の想いもあわせ持っているのです。
だから、言葉は選ばなくてはいけません。

あ、だからといって、「君はこの国を好きか」と聞かれたら、・・口篭りそう。
手放しで好きとは言えないです・・日本の未来が明るいことを祈ります・・

この物語の舞台は韓国です。鷺沢萠さんは韓国との関わりでクォーターだそうで
す。ご自身の韓国留学経験を元に書かれた作品なので、留学生の生活がとてもリ
アルに描かれています。

主人公、木山雅美は日本で生まれ育ち、韓国に行ったことがなくても、国籍は
韓国の在日韓国人三世です。李雅美(イ・アミ)という韓国名を持っています。
アメリカに留学した時に韓国からの留学生、ジニーに出会い、ハングル文字に
“感電”し、韓国に留学します。

韓国人なのに韓国の文化になじめず、拒食症になりながらも韓国を知ろうと
勉強を続けるアミと、彼女を温かく見守るキム・ジョンヒ。そして友人達との
日々は・・・

在日韓国人の葛藤や苦悶について、この本を読んでわかったとは思えませんが
誰とも分かちあえないものは誰の心にもあるように思います。

アミが憔悴していくところは胸が痛みます。その分、ラストがとても清々しく
読んで良かったです。素直に。

鷺沢萠著『君はこの国を好きか』(新潮文庫)は138ページ。
アミを応援したくなった45分。

友達って、ありがたいですね・・
韓国は、かつて「近くて遠い国」でした。今は、どうでしょうか・・



2002年01月04日(金) 鷺沢萠著『途方もない放課後』

新年あけましておめでとうございます。
今年もよろしくお願い致します。




2002年ですね〜仕事始め、いかがでした〜(なんて、聞かれても困りますよね)
受験生はここで風邪ひくと大変ですよー最後の追いこみ、頑張ってください!
というか、受験生でこの時期、水野の図書室へいらっしゃる人って・・・
もし、いらっしゃったら・・即、お勉強に戻った方がいいですよー!


そんなこんな(どんな? 笑)で、図書室OPEN〜☆


今日読んだのは、鷺沢(さぎさわ)めぐむさんのエッセイ集『途方もない放課後』
(新潮文庫)です。
「めぐむ」は漢字で「朋」の上に草かんむりがつきます。「萌」に似てます。
もえ、だと勘違いしてました。 ← そーいう人、多いと思います。

この本は・・♪〜笑いました。このエッセイ集、面白いです〜〜♪
もちろん、笑うだけじゃないですよ。ほろり、ときます。
笑いとほろりが絶妙のブレンド。作家の手仕事ですねー(作家なんだってば!)

楽しいエピソード満載で、どれを紹介したらいいのか迷います。

小説を書きはじめたきっかけは何ですか?と訊かれるのは、無神経さと想像力の
欠如を感じさせるものだと、ハッキリおっしゃるんです・・いいなぁ〜
そうそう、このエッセイ集の焦点は「ハッキリ言う」ですね。「あえてわたしは
言う」・・このフレーズがエッセイを束ねています。

鷺沢萠著『途方もない放課後』(新潮文庫)は、217ページ。
心をもみほぐされた60分。

放課後・・無為のようで、無為じゃないよね。














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