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2005年12月31日(土) 魔法

 
誰が笑っていて
誰かは泣いていて
建てて壊して
例えばどこかで曲がって
また戻って

それが魔法というものなら
どれだけ信じれるだろう
それで時間が止まるんなら
それだけが人を動かすのなら
それでもまだそう言うのなら

カレンダー塗り潰して
ベランダで吸った二本目
頭でわかって
心でわからなくなって
そう そこをわかっても

それが魔法というものなら
死ぬまで解けないかも
君のことを思うのなら
誰も理解してくれなくなったとしても
ぼくは今のままでいい

すでに盛大に幕が引かれたとして
やさしくはないんだ
難しくもないが
いつもはどうやってこなしてたんだっけ

それが魔法というものなら
どこまで信じれるだろう
君のことを思うのなら
それだけが世界を動かしてんなら
僕は今のままでいい
それを魔法と呼ぶのなら


『それを魔法と呼ぶのなら』 GRAPEVINE



2005年12月30日(金) 木を植えた男


There he began thrusting his iron rod into the earth, making a hole in which he planted an acorn; then he refilled the hole. He was planting an oak tree. I asked him if the land belonged to him. He answered no. Did he know whose it was? He did not. He supposed people who cared nothing about it. He was not interested in finding out whose it was. He planted his hundred acorns with the greatest care.

男はあの鉄棒を地面につきたてはじめた。そうしてできた穴のなかに、こんどは用意したどんぐりを一つ一つ埋めこんでは、ていねいに土をかぶせた。かれは、カシワの木を植えていたのだった。「あなたの土地ですか?」と聞くと、「いいや、ちがう」と、かれはこたえた。「だれのものだか知らないが、そんなことはどうでもいいさ」と、ただただかれは、ていねいに、100粒のどんぐりを植えこんでいった。


『 The Man Who Planted Trees 』 Jean Giono



2005年12月29日(木)

 
本には、それを読んだ夜の
月の光が織り込まれている


(プルースト)



2005年12月28日(水) 蝸牛

 
自分はいまこそ言はう 
人生はのろさにあれ 
のろのろと蝸牛のやうであれ


『風は木にささやいた』山村暮鳥



2005年12月27日(火) 詩人

 
詩が書けなくなればなるほど、
いよいよ、詩人は詩人になる。


『雲』山村暮鳥



2005年12月26日(月) 流転

 
万物は流転する


(ヘラクレイトス)



2005年12月25日(日) サンタクロース

 
Virginia, your little friends are wrong. They have been affected by the skepticism of a sceptical age. They do not believe except what they see. They think that nothing can be which is not comprehensible by their little minds. All minds, Virginia, whether they be men's or children's, are little. In this great universe of ours, man is a mere insect, an ant, in his intellect as compared with the boundless world about him, as measured by the intelligence capable of grasping the whole of truth and knowledge.

Yes, Virginia, there is a Santa Claus.
He exists as certainly as love and generosity and devotion exist, and you know that they abound and give to your life its highest beauty and joy. Alas! how dreary would be the world if there were no Santa Claus! It would be as dreary as if there were no Virginias. There would be no childlike faith then, no poetry, no romance to make tolerable this existence. We should have no enjoyment, except in sense and sight. The external light with which childhood fills the world would be extinguished.

Not believe in Santa Claus! You might as well not believe in fairies. You might get your papa to hire men to watch in all the chimneys on Christmas eve to catch Santa Claus, but even if you did not see Santa Claus coming down, what would that prove? Nobody sees Santa Claus, but that is no sign that there is no Santa Claus. The most real things in the world are those that neither children nor men can see. Did you ever see fairies dancing on the lawn? Of course not, but that's no proof that they are not there. Nobody can conceive or imagine all the wonders there are unseen and unseeable in the world.

You tear apart the baby's rattle and see what makes the noise inside, but there is a veil covering the unseen world which not the strongest man, nor even the united strength of all the strongest men that ever lived could tear apart. Only faith, poetry, love, romance, can push aside that curtain and view and picture the supernal beauty and glory beyond. Is it all real? Ah, Virginia, in all this world there is nothing else real and abiding.

No Santa Claus?Thank God he lives and lives forever. A thousand years from now, Virginia, nay 10 times 10,000 years from now, he will continue to make glad the heart of childhood.

バージニア、あなたのお友だちはまちがっています。何でも疑ってかかる疑りやさんになってしまっているのです。そういう人たちは自分の目に見えるものしか信じません。おともだちはその小さな頭で理解できないことなどありえないと思ってしまっているのです。大人であれ、子どもであれ、人間が考えたりできることは限られているのです。あらゆる真実と知識を内包する広い宇宙に比べれば、人間は小さなアリのようなものなのです。

そうです、バージニア、サンタクロースはいるのです。サンタクロースは、愛や人への思いやりや、献身が存在するのと同じくらい確実に存在します。それらがちゃんとあって、あなたの人生をすばらしいものにしてくれているのは知っているでしょう。ああ、もしサンタクロースがいなかったら、どんなにこの世はわびしく退屈なものでしょう! バージニアのようなかわいらしい子どものいない世界が考えられないのと同じくらいサンタクロースのいない世界はさびしいことでしょう。純真な信じる気持ちもなく、詩も、ロマンスもなくなってしまうでしょう。私達は自分が感じられるものや目に見れるものの中にしか楽しみを見つけることができなくなってしまうでしょう。子どものころに世界に満ちあふれている光も消えてしまうでしょう。

サンタクロースを信じないのなら、あなたは妖精も信じないのでしょうか。クリスマスイブにパパにたのんで、何人もの人に煙突という煙突を全部見張らせて、サンタクロースを捕まてもらったらどうですか。でもその時サンタクロースが煙突からおりてくるのを見なかったとして、いったいそれが何の証拠になるのでしょうか。サンタクロースを見た人はいません。しかし、それはサンタクロースがいないという証明にはならないのです。この世でもっとも確かな存在は子どもや大人の目に見えるものではないのです。芝生の上で舞う妖精の姿を見たことがありますか?もちろんないでしょう。でもそれは妖精がいないことの証明になってはいないのです。目に見えないもの、見ることができないものがこの世に存在するという不思議を想像することができないだけなのです。

赤ちゃんが持つガラガラを分解すれば、どうして音が鳴るのかわかるでしょう。でも、目に見えない世界を覆うベールは、どんなに力の強い人でも、それどころか、世界中の力持ちをみんな集めてきたとしても、引き裂くことはできません。信じる気持ちと想像力、それに詩と愛とロマンスだけが、そのカーテンを引き分けて、その向こうにある、この上なく美しく、輝かしいものを見せてくれるのです。そのようなものが人間のつくったでたらめといえるでしょうか。ねぇ、バージニア、それほど確かな、それほど変わらないものはこの世にはほかにないのですよ。

サンタクロースがいないですって!とんでもない!うれしいことにサンタクロースはいますよ。それどころかいつまでも死なないでしょう。1000年後までも、いえ、バージニア、100万年後までも、サンタクロースは子どもたちの心を喜ばせてくれるでしょう。


(Editional Page, New York Sun, 1897)



2005年12月24日(土) 栄光

 
栄光は、我らが灰になったあとでやってくる。


(アルティアリス)



2005年12月23日(金) わあ

 
擲られたら何故泣かないんだ。
何故「わあ」と泣かないんだ。


『海彦山彦』山本有三



2005年12月22日(木) 生活

 
生活とは、燃えるものだと僕は思ったんだ。


『海に生くる人々』葉山嘉樹



2005年12月21日(水) しゃぼん玉

 
しゃぼん玉飛んだ 屋根まで飛んだ
屋根まで飛んで こわれて消えた
しゃぼん玉消えた 飛ばずに消えた
生れてすぐに こわれて消えた
風々吹くな しゃぼん玉飛ばそ

しゃぼん玉飛んだ 屋根より高く
ふうわりふわり つづいて飛んだ
しゃぼん玉いいな お空にあがる
あがっていって かえってこない
ふうわりふわり しゃぼん玉飛んだ


『しゃぼん玉』野口雨情



2005年12月20日(火) 救いの道

 
「運命はな」と、ドン・キホーテ。
「災難にあわせても、一方の扉を必ず開いて、救いの道を残すのじゃ」


『ドン・キホーテ』セルバンテス



2005年12月19日(月)

 
秘すれば花なり
秘せずば花なるべからず


『風姿花伝』世阿弥



2005年12月18日(日) 冗談

 
頭の底のどこかで、
何もかも一切は、
とんでもない冗談だという気がしていた。


『人間の絆』モーム



2005年12月17日(土) けふなり

 
けふなり。
けふなり。
きのふありて何かせむ。
あすも、あさても空しき名のみ、
あだなる声なり。


『うたかたの記』森鴎外



2005年12月16日(金) 真相

 
真相はわからない。
それを無理に追うよりも、
曖昧さの薄闇の中に、
もの事をおぼろなままで放置せよ。
そこにあるおぼろな形が人生なのだ。


『変容』伊藤整



2005年12月15日(木) 人生

 
やっといま人生が分かったと思う時、
自分は溌剌とした草や木の生い繁る人間の森から
もう出はずれる所へ来ている。


『氾濫』伊藤整



2005年12月14日(水) 生きる

 
人間が信じられないんなら、
人間を信じないで生きてごらん。
生きるということは恐らく、
そうしたこととは別ですよ。


『城砦』井上靖



2005年12月13日(火) 気分

 
気分だよ。
人間、大切なのは気分だよ。
その気分に、
二人は惹きずられたってわけさ。


『下谷竜泉寺』武田麟太郎



2005年12月12日(月) 行うべし

 
議論なんか、いくらしたって
物事がはかどるもんじゃありません。
行なうべし、言うべからずですよ。


(モリエール)



2005年12月11日(日) この世に

 
お前たちをどんなに深く愛したものがこの世にいるか、
或いはいたかという事実は、
永久にお前たちに必要なものだと私は思うのだ。


『小さき者へ』有島武郎



2005年12月10日(土) 寂しい心

 
僕等はいつも高いものと深いものとを目がけて、
常に寂しい心を持っていねばならぬとおもうが、どうであろうか。


『冬夜漫筆』斎藤茂吉



2005年12月09日(金) 花のこと

 
花のことは花にとへ
紫雲のことは紫雲にとへ


(一遍)



2005年12月08日(木) 独り

 
生ぜしも独りなり 
死するも独りなり 
されば人と共に住するも
独りなり


(一遍)



2005年12月07日(水) 世の中

 
世の中は
食ふて はこして 寝て 起きて
さてその後は 死ぬるばかりよ


(一休宗純)



2005年12月06日(火) 安心しててね

 
ぼく、ひとりでおきるよ。
これからも、何度も何度もころぶだろうけど…。
かならず、おきるから安心しててね、おばあちゃん。


『ドラえもん』藤子不二雄



2005年12月05日(月) ポーランド

 
私はポーランドのことしか映画にしません。
ポーランドに生まれ、
ポーランドに生きてきたからです。


(アンジェイ・ワイダ)



2005年12月04日(日) 苦痛

 
苦痛があればあるだけ
その苦痛にもっと深入りしたいともがくのが生命だ。


『憑き物』岩野泡鳴



2005年12月03日(土) 永遠

 
どんな本質も無へとくだけ散ってゆくことはできない。
永遠なるものがすべてのうちにはたらいている。
幸福な思いをもって存在に即け。
存在こそは永遠である。


『遺訓』ゲーテ



2005年12月02日(金) 死んで生きよ

 
死んで生きよ。
この神秘にふれない限り、
いつでも人間は、
ただの地上の悲しき客人にすぎない。


(ゲーテ)



2005年12月01日(木) 開かれた神秘

 
自然には内部もなければ外部もない、
内部がそのまま外部なのだ。
たえず怠ることなく、
この「開かれた神秘」をつかめ。


『神と世界』ゲーテ


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