原案帳#20(since 1973-) by会津里花
★表紙へ戻る★  ★#22★  ★#26★  ★セクマイ★  ≪前   次≫   ▲目次▲

2000年02月21日(月) T'sの用語集(「お話しましょ♪」から転載)

★1・T'sの用語集(「お話しましょ♪」から転載)



★1・T'sの用語集(「お話しましょ♪」から転載)

(以下、遊ちゃんからの質問に答えるかたちで)
「Welcome to Jackie's!」のリンクから「用語集」にいくと、正確で詳しい説明があるよ。
できればそちらで再確認した方がいいとは思うけれど、私なりにわかっていることを言えば……
(長いので、何回かに分けて入力することになりました(^^; うわぁ、大仕事に……でも、私にとってもちょうどいいチャンスだわ、そういう「考え方」をはっきりさせるための! ありがとね、遊ちゃん♪)

・TS:Transsexual「トランスセクシャル」;元々は、全体をまとめて言う言葉だったけど、「TG」「TV」との対比から、狭い意味で言われることも多くなった。
ずばり、「身体の性」を「心の性」に(できれば完全に)合わせたい、と思っている人たちのこと。
もちろん、その中にもいろんな人がいて、「元は男だった」とかいう証拠は一切消して「普通の女の子です」と言って生きている人もいます。(実は案外多いらしいけど、何しろ「証拠を消している」ので、見つけようがない;んで、統計もとれてないらしい……)
私みたいに、「身体だけが元に戻れば、後はそのままでいい」って言う人は少ないらしいけど。
だって、「TS」の大きな特徴は、「私は確かに身体は男として生まれ、そのように育てられた。けれども、実はそれは『間違い』で、自分は本来、女として生きなければいけない(いけなかった)」と思っていることだから。周囲からも「確かにあなたは(できるだけ『普通の』)女性だね」って言ってもらわないと、辛いんです。

・TG:Transgender「トランスジェンダー」;自分が「男」だとか「女」だとかいうことに、「違和感」「疑問」を抱いている人たち。
多くは「生まれつきの性が間違い」とまで思っていないけれど、「男は○○でなければイケナイ」とか「女は××してはイケナイ」とか、決められた「性役割」みたいなものにはとても抵抗がある。
だから、「手術して身体を元に戻す」ということまでは考えないけれど、
「おまえは男なんだから、スカートなんかはいちゃダメだ」とか「あなたは女なんだからそういう言葉遣いをしてはいけませんよ」とか言われると、とっても辛い。
もちろん、誰でも「性役割(これのことを『genderジェンダー』っていうんだよね)」を強制されたら窮屈な気のすることは多いけれど、たいていの人は「でも、そうだよな、オレは男だから」とか「やっぱり女だから……」って納得しちゃうことが多いのね。
うーん、この人たちがいちばん幅が広くて、説明もしにくいのかなあ。

*ただ、育てられてくる過程(というか家庭とか)でしつけられた「お前は男!」「あなたは女!」という「常識」はなかなか覆しにくいけど、しっかり自分の心とお話しているうちに、「やっぱり自分の性はこっちじゃなくてあっちだったんだ」と気がつく人も多いようで、初めは「私、『TG』でイイです」みたいな言い方していた人が、いつの間にか「ゼッタイ、手術まで……!!」と拳を固めているケースもよくあるようです。
私も、実を言うと、そんな感じなの(^^;。

*あと、「性(別)(sex)」と「性役割(gender) 」を区別する考え方は、日本人にとっては苦手。
特に「genderって何?」っていう感じがする人は多いんじゃないかなあ。
うーん、一言で簡単に説明すると……
「性(別)(sex) 」:かたち。
「性役割(gender) 」:はたらき。
人間の場合、「かたち」として身体に与えられた「性(別)」の他に、他人との間でのその人の「はたらき」としての「性別」「性役割」がある、という考え方から来ています。
そうだなあ、日本人にとって分かりやすいのは、ちょうど「敬語」みたいなものかな?
あるいは、「立場」とか。
人間関係で初めて決まるでしょ、そういうもの。
(もちろん、決まるための要素はその人の「かたち」で決まっている部分が大半なんだけど)
これは、よく分からなければ、「用語集」とか「EON/W」とかで、詳しく読んでみて!
(そのための「インターネット」だもーん♪)

・TV:Transvestite「トランスヴェスタイト」;「vestite」は「ベストを着る」こと、つまり服装に関してのことなのね。
この人たちについていちばんはっきりしているのは、自分の「性別」について、「間違っている」とか「違和感がある」とか、思っていない、ということ。
その上で、「異性の姿をする」ということが、自分にとって避けられない「趣味」っていうのかなあ、……ちょっと、このぐらい私から「離れてしまう」と、うまく説明できないんだけれど……ごめんなさいm(__)m
もちろん、そうは言ってもいろんな人がいて、「『異性』の姿をすると落ち着く」という人(きっとこの人は「TG寄り」っていうのかな?)もいれば、「『異性』の姿をするとコーフンしちゃう」という人(私は直接お目にかかったことがないけれど、いわゆる「ヘンタイおじさん」かな?……(^^;)もいるそうです。

*ここで「トランス」という言葉をちょっと正確に捉えましょう。……といっても、カンタンですよ(^^)。
「トランス」trans=「越える」「越境する」という意味だ、とはっきり捉えてみてね!

その上で、「MtF」「FtM」という言葉を見てみると……
・「○t×」の真ん中に挟まっている「t」は、前置詞の「to」の略です。「M2F」とか「F2M」とか書くのも、アメリカなんかではアリだそうですが、日本人には「2=to」っていうのはちょっとね〜。
とにかく、この「t」は、片方の性からもう片方へ「越境する」というニュアンスが込められています。
(どちらなのかはっきりしない、或は両方の間を行き来したり中間的なところにいる、あるいはいようとする人は「inter」をつけて呼ばれるようです。「International(国際的)」の「インター」だよっ!!)
で、「TS」にしても「TG」にしても「TV」にしても、「どっちからどっちへ?」ということをはっきりさせるために、「M(ale)男」→「F(emale)女」とか「F」→「M」とかを、そういう記号をつけて表すんですよね。
だから、「MtFTS」って言ったら「男から女に(できれば完全に)変わりたい(もしくは『戻りたい』!)人」のことだし、「FtMTG」って言えば「女の役割や振る舞いに縛られず、男として家庭や社会で振る舞ったり扱われたりしたい人」のことになります。
あ、因みに「FtMTV」っていうのはあんまり聞いたことないですねー。
だって、女性のパンツルック、いちいち「異性の姿」ってとる人はそうたくさんいないでしょ?
江戸時代に女性が裃着けてチョンマゲ結って脇差さしてたら、そりゃ立派に「男装」だと思うけど…… 最近はごくふつーの会社でも、びしっとスーツを着たお姉さんなんかいるよねー。ああいう人、ちょっと憧れちゃうなー……

う〜、疲れたっ。
でも、いい整理になりました。
遊ちゃん、ふみちゃん、参考になりました?
お役に立てたら、私、すっごく嬉しいな♪

この記事のトップへ
ページのトップへ

2000年02月18日(金) 大島弓子



★1・大島弓子

……が、どうも気になる。

検索してみたら、さすがに(というのも変だけど)この人のことをメインで扱うホームページは見当たらなかった。
(検索がヘタなだけ?;その後、「大島弓子メイン」のHPを見つけたけど、いろんな人がいろんなこと書いていてまとまらない(^^;)
でも、感想を書いている人は多いようなので、その中から割としっかり書いていそうな人を探して、1、2軒、お邪魔してみた。
「キイチロウのお楽しみはコレだ!」というサイトには、こんなことが書いてありました。
-----------(以下引用)-------
☆「バナナブレッドのプディング」
とっても難解な漫画。「バナナブレッドのプディング」には、そんな評価が多いようです。主人公である三浦衣良(いら)の特異な性格が、読者の共感を拒むのでしょうか?
-----------(以上引用)-------
この人(キイチロウ氏)自身は、
>私がこの作品を読んだのは20歳前後の頃で、比較的容易に受け入れることができたのは、大島弓子の世界を楽しめるという点で幸運だったといえます。
とおっしゃっているのだけれど、……そうか、「難解」っていわれることが多いのか。
(ここで、気になるので注:キイチロウさんという方が書いていることにショックを受けたとか、そういうことを言いたいのではありません;うー、転載の承諾をいただいてないのにこういうことやってるから、後ろめたいんだなぁ……;その後、キイチロウさんからは快く承諾してもらいました。その上でこうして掲載するのって、気持ちいいですよね(^^) キイチロウさん、ありがとうございました!)
私が言いたいのは、10代半ばでこの作品を呼んだ私が、「難解」とかほとんど思わずに、いっきにだーっと読みきってしまい、大泣きしてしまった、っていうこと。
それほど私はシンクロしてしまっていたわけだし、……もしかしたら、私自身も「難解」なヤツなのかもしれない。
「じゃっきーって、何回言ってもわかんないんだよ。 『なんかい』い方法、ないのか? 南海の孤島に流すとか……」
ダジャレで終わり。(^^;

この記事のトップへ
ページのトップへ

2000年02月16日(水) おとうさん 風花(かざはな)

★1・おとうさん
★2・風花(かざはな)



★1・おとうさん

おとうさん、大好き。
でも、怖い。
大嫌い。

あなたのところに、帰って来ました。
「おとうさん……」

やっと、あなたを優しい声で呼ぶことが
できるようになりました。
でも、ちょっと遅かったのよね。
今も、あなたの声が思い出せません。
そちらに行ったら、たくさんお話しましょうね。
きっと、深くて優しい、私にとって
懐かしい声をしているであろう、……
おとうさん。

この記事のトップへ
ページのトップへ



★2・風花(かざはな)

この地方では、冬になると乾燥して雪が降らない代わりに、山間部で降った雪が風に乗って都市部にまで流れてくる「風花」という現象が起きる。

今日、引越し先のアパートを見に行った。

前回、夜行って「女性の亡霊」に出会って懲りているので、明るい時間帯にした。
午前中の光の様子はどうなのか、知りたかった。

入り口の扉にある摺ガラスが、鈍く光っている。
やっぱり、部屋に差し込む光が透過しているんだ。やった。

鍵を開けて、中に入る。
奥のサッシ窓が、遅い午前中の光を受けて輝いている。

部屋は、明るかった。
(しかも、真ん中の部屋は、襖を閉じればほぼ真っ暗になってしまうのだった。
襖の間から僅かに光が漏れるところが、また風情がある)
古いキッチンの棚とか、ガス湯沸し器に付け替えてくれたお風呂とかをチェックしながら、
私は奥のサッシ窓に向かった。
窓から見える景色が好きだ。
「ネコの額ほどの」裏庭を見下ろせる、割とゆったりしたベランダ。

サッシ窓を開け放つ。
近頃あまり見ない、午前中の太陽の光を見た。
そうして、日の光の中に、キラキラと白く輝くものがいくつも舞っているのが見えた。

―風花だった。
遠くの山から、風に乗って流れてくるぐらいだから、とても軽くて、乾いている。
もちろん、それだけ空気が冷たいからだろうけれど。
そうして、(たいていそうなのだが)頭上には雪雲はないので、日の光を受けて、輝いているのだ。

「今年も、風花の季節になったんだ……」
風花が舞う、ということは、この地方がかなり寒くなっているということだ。
何しろ、日の光を受けても融けないのだから。
ところが、この頃から寒さが厳しくなるにも関わらず、景色の感じがどことなく春めいて見えるようになるのだ。
風花がきらめく光をまるで音で表すかのように、たぶん吊るしっ放しになっているのだろう、風鈴の音。

私は、ベランダの奥の日だまりになったところへしゃがみこんだ。
日だまりは、子どもの頃を思い出させる。
また、それを音で裏付けるかのように、近所にあるらしい木工所の機械音。

風花の向こうには、裏庭で伸び放題になった木の、濃い緑がにじむ。

ちょっとできすぎているくらいの光景に、私はほけーっとして見とれていた。
それは私にこう語りかけているみたいだった。

「ようこそ、このお部屋へ。あなたはここにいて、いいんだよ……」

この記事のトップへ
ページのトップへ

2000年02月10日(木) 感想「目を閉じて抱いて」 「夏の約束」

★1・感想「目を閉じて抱いて」やっと完結
★2・ネタばれ感想「夏の約束」



★1・感想「目を閉じて抱いて」やっと完結

(本当は「夏の約束」の感想とか書きたいんだけど、いろいろあってまだノッて来ないので、別のを書いちゃったりして;なんか、いちばん大きな宿題を後回しにしてしまう中学生のような気分;うっ、これは現実にそうだった! あーん、変わってないなぁ、自分……)
------------------------------
内田春菊の「目を閉じて抱いて」が、ようやく完結した、と聞いて、私は書店へ急いだ。
で。
……今、5巻を読み終わったばかりだ。
手が震えている。
「正常」に名を借りて、その中に依存することで「異常」とされる人たちよりもずっと歪んでしまう人々を、巧みに描いていると思う。
「樹里」も「高柳」も、タイプとしてはけっこうそこらへんにゴロゴロいそうな女や男だが、「異常」とされることが多いタイプである「周」「花房」「七臣」と比べたら、よっぽどヒドいことをしている。
高柳が逮捕されたとき、その直前のセリフで「ああ、こいつはもう引き際だなぁ」ってわかっていたのに、「これでやっと救われる」というような想いに駆られたのだった。私の「震え」はここからだ。
高柳「だから正当防衛だよ オレは 間違ってないだろ!!」「おかまに おかまって言って 殺されちゃあ かなわねえよ!」
「オレたちちゃんと学校行って会社入って まっとうに生きてる 人間だぜ!!」「こんな そこらじゅうで やりまくっている・・」「おかまとかおコゲとか そいつらにやられて 喜んでるやつらとかに 脚ひっぱられんのは まっぴらなんだよ!!」
これが大方の人々の本音なのではないか。
そうして、まともぶって、「異常」なことを「隠し」たり「非難」したがる人々ほど、ひと皮むくととんでもないエゴが腐臭を放っている。
唯一、「異常」でないにも拘らず、(私にとって)「向こう側」の人間でなかった「城戸津也子」の存在が救いだ。
ラスト、花房と津也子がともに妊娠しているのも、私にとっては「救い」と言えば「救い」だ。

「あとがき」で、作者の内田春菊氏が言っている。
「みんな、花房に対して持ってるイメージ、でか過ぎ。」
でも、私に言わせれば、妊娠することもさせることもできるIS(インターセックス;半陰陽;ここではたぶん「真性半陰陽」として花房を描いている)なんて、多くて1億人に1人、もしかしたら60億人に1人ぐらいしかいないような気がするので(統計はたぶんまだとれていないでしょうけど……)、そういう意味では
「女神」
として扱われてしまうのも、仕方ないんではないかい?
(あ、そろそろ「震え」が止まってる)
「自分が知ってることからしか描けません」
とご本人もおっしゃっているが、お話の初めから、
「そんなISいないよー」
と思いながら、それでも冒頭に挙げたようなテーマがくっきりと見えるから、私は読みつづけた。
途中、完結しないまま、連載が止まってしまった(だいいち、「フィールヤング」っていう雑誌、探しても見つかったことなかったんだもん!)ので、すっごく欲求不満だったけれど、……うーん、上手な言葉が思い浮かばないや、とにかく、よかった!
------------------------------
(掲載直後に加筆:まだまだ多くの人々が、インターセックスそのものに対して大きな誤解や偏見を持っていると思います。
インターセックスは基本的に臓器のヴァリエイションであり、「性格」や「気質」の異常なんかではありません。
だから、たまにアダルト系の小説や漫画なんかで「両性具有」ものとかあるけれど、あんな男性器も女性器もびんびん、なんて人は現実にはほとんど;全くと言っていいぐらい;存在しないのです。
むしろ、性については「人と違う」ことを体験し、多くの場合それについて適切な理解へと導かれることもないので、「性同一性障害」と同じようなアイデンティティの阻害を引き起こすことも多いのです。
正直、自分自身も、無知な世代の頃には「半陰陽」を自分のファンタジーの「道具」のように扱っていたので、その反省も込めて記します。
ただ、私自身は「半陰陽」に対して、今でも「憧れ」の気持ちはあっても、「異常」とか、まして「両性具有=みんなやりまくり」とか、そんなふうに考えたことは一切ありませんし(そりゃ中には「やりまくり」の人がいるのもふつうでしょうけど)、そういうふうに考える人とは、個人的には一生おつきあいしたくもありません。
もちろん、とんでもない誤解の中にでも一生浸っていなければ自我が保てない、と主張する人に干渉する権利は、私にもありませんけど……最後、ちょっと辛辣(^^;)

この記事のトップへ
ページのトップへ



★2・ネタばれ感想「夏の約束」

☆注意!!:以下の文章は「夏の約束」(藤野千夜)の「感想」を中心として書かれていますが、全面的に「ネタばれ」です。
ですから、できる限り、作品をお読みになってから、この文章を読まれますよう、お願いします。
でないと、ソンすると思う;だって、「ネタばれ」ではあるけれど、それで作品の味わいがわかるとか、まして作品の伝えたい雰囲気とか気持ちとか(あ、それが「味わい」じゃん、一緒か)、そういうことが分かるとは、とても思えないから。
それに、私の文章、つまんないし。
私は別に藤野千夜さんのマワシモノではないし、まして彼女の「営業」をしようとか、一切思わない。
でも、まず読んで!!
自分の五感で味わって!! ね♪

とうとう宿題から逃れられないみたいなので、一言書きます。
(たぶん、自分にとって、それが最善なのでしょう)
私にとって、「約束」は時として「宿題」になり、果たせなくなるものです。
菊ちゃんなんかは、もしかしたらそういうところがあるかもしれないね。

……と、いきなり「菊ちゃん」から入るあたり、登場人物が「立っている」と感じられるのが、この作品のまず大きな特徴だと思います。
「登場人物が立つ」っていうのは、登場人物の設定や性格・容姿などの描写、気持ちの動き、その他がとってもよくできていて、読者にとってその人の姿が紙面から「立ち上がってくる」みたいにくっきりしてくることです。
私、もしかしたら「この小説は菊ちゃんを中心としたお話です」って言われて読んだら、信じちゃったかもしれない。
それに、たぶん、そういう「軸」も持っていると思う。
だって、単行本の表紙の見返しのデザイン、菊ちゃんの部屋の隅に立てかけられたコルクボードの写真でしょ?
(お願いだから、「現代の小説はそんなこと=登場人物一人一人に軸を持たせること;ぐらい、当たり前だっ!」なんて突っ込まないでね。私、1950年代以降の作品って、ほとんどちゃんと読めてないんだから。それこそ「芥川賞作品」なんて、村上龍の「限りなく透明に近いブルー」が「文芸春秋」に載っているのをわざわざ買って読んで以来、「文芸春秋」という雑誌を買うこと自体20年ぶりなんだから…… あ、あと、宮本輝っていう人も「芥川賞」獲ったんだよね? あの人の作品は人に薦められて何冊か読んだ。私、読むとものすごく影響されちゃうから。新井素子はほとんど持ってる。30歳過ぎてからはあんまり作家に入れ込まないようにしていたんだけれど…… 今度は、さすがにねえ、…… 何が言いたい?)
「軸」のこと、少し突っ込んで考えようかなあ。
現実に生きている人にとっては、必ず自分が自分の生きているストーリーの「軸」っていうか「主人公」なのよね。……やっぱり、「主人公」は重たすぎるから、「軸」にするね。
で、他人と関わるときって、いちおう自分を「軸」にしてはいるけど、どうしても相手の「軸」も考えなければ、お付き合いなんてできないじゃない?
それをどんなかたちで捉えて、どの程度考慮して、それをどのように表して、どういう行動(=ここでは「約束」)に結実していくか……
それって、「小説」では、かなり描き出すのが難しいことがらなのでは?
それも「小説の基礎」?
うーん、「他人の尺度」を気にするのは止めよう!
要するに、私は各々の登場人物がお互いに関わりあうときの、「how(どの、どう、どんな……)」の部分が、とっても素敵に描けていると思うの!
「素敵」って言っても、「すばらしい人間関係」なんかじゃないよね。
すごくはかないよね。
でも、一瞬出てくるだけの「新川久美子(愛称・シンクミ)」も、藤野さんが

>つやつやの長い髪をして、ウエストがおそろしく細いくせに部屋がとんでもなく汚かった元同級生
(本文より引用―単行本p33;以下「p××」とのみ表記)

なんて数行書くだけで、
「ああ、そういうコ、いるよね!」
って、「キャラが立ち始める」のよ!
よく読んでみると、やっぱ「第一印象」って大切だからかなあ、誰かが初めて登場するときには、必ずその人について、このお話の中で出てくるに当たっていちばん「適切な」描写、っていうか紹介をしているように思います。

ただ、それって、かなり「レッテルを貼る」作業に近い、とも思う。
それはまた、「差別」と紙一重の行為でもある。
(関連記事:EON/W http://www.netlaputa.ne.jp/~eonw/index.html )
このことについては、ヒカルが面白い動きをしてるよねえ。
「性役割」については否定的、でも本人は多分に「おねえ」で、しかも一人称は「俺」。
マルオに「どっちかにしなよ」とか言われてるし。
1人の人間の中に、両面、あるいはもっと多面的な価値観がいっしょにあるって、実はけっこうよくあることなのでは?
私は、自分が(容姿はだいぶ違うんだけれど)ヒカルに似ているな、と、読みながらずっと思っていたの。
だから、

>(……)マルオは、姉さん姉さんと繰り返しながら、左手でヒカルの腰を抱いた。その鼻先を大きなトラックが二台、スピードも緩めずに走り抜けて行く。ヒカルは無言のままマルオに腰を抱かれていた。
(p43-44)

のところは、私には本当に「濃い」場面で、息苦しいほどヒカルが羨ましかった。
じゃなくて、ヒカルとマルオが「どうやら中学受験で有名な進学塾の生徒たちらしい」子どもたちから、無邪気で残酷な「差別」を受けたとき、自分自身も「差別的表現」で言い返すしかなくて、本当はフリーライターなのにそういうときは「怒りで語彙が不足しているのか」小学生とおんなじようなことしか言えない、という場面だったのも、私を息苦しくさせたんじゃないかなあ。

で、マルオとヒカルの関係も、実は「レッテル貼り」の部分が強くて、本当はお互いのこと、そんなにわかっていないんじゃないか、という気がしてきて、一見「さらっ」としたイメージのこの小説が、その感じはそのままに、「息苦しさ」を持ち始めるの。
(でもね、ここで「マルオはヒカルを奥さんにして一緒に住みたがっているのに、ヒカルはその気がない」とか、輪をかけて「レッテル貼り」しても、作品がかもし出している「香り」を壊すだけで、面白くもなんともないよね(^^;)
みんな、お互いのこと勝手に決め付けてすれ違っているんだけれど、なんとなく最後は「予定調和」(古い言葉だねえ(^^;)で締めくくる。
そういう人間関係でないとやってけない感じ、っていうのが、もしかしたら「芥川賞」もらっちゃうほど「普遍的」なのかも。

誰の批評にあったのか忘れたけれど、終わりの方に「菊江の兄」のエピソードが出てきます。
それが「浮いている」っていうのね。
ああ、そうか、確か「文學界」で藤野さんが黒井千次さんと対談している中で、ご本人もちょっと「どうしようか」って言ってたんだ。
私は、これが「ソッとくる」(黒井さんの表現)ということの「起源」であるように思えて仕方がないのだけれど……。
これはうまく言えないので、もっと適切に言い表せる人がいたらどこかに書いてくれると嬉しいです。

ふらふらと長くなってしまって、ここまで読んでくれた人はほとんどいないと思うのだけれど、最後にちょっと「表現技術」のこと。
なぁんて書くと、私はなんだか「エラい人」みたい?
気がついたことがあるのよ。
一つ目は、今私もへたくそに真似してみたんだけれど、途中まで何か言いかけてから、それを「言い直し」ているうちに意味が変わってくる、っていうこと、日常ではよくあるでしょう?
女の子たちの間では「発話のきっかけ」みたいに使われているけれど、
「ってゆーかー……」の語源、もうちょっとていねいに
「というか」という言い方で、人の気持ちの「揺らぎ」みたいなもの、とっても上手に表していると思う。
(私は「なぁんて」で真似したけど、失敗(^^; 表すほどの「揺らぎ」じゃなかったから)
もう一つは、セリフの表記。
きちんと分析できてるわけではないけれど、「〜」で改行してあるときとないとき、それから、地の文の続きがそのままセリフになっている場合(英語では確か「描出話法」なんて呼んでましたよね?>銀河さん)と完全な間接話法、それらがセリフの途中でも切り替わったりしてるの。
それが、なぜか、その人がそのセリフを口にしたときの様子や気持ちに、ぴったりに思えて仕方ないの。ぜんぶ。
すっごくさりげなさそうに書いているので、けっこう気づかずに通り過ぎている個所がある。
でも、もしかしたら、藤野さんは「気づかずに通り過ぎる」こと自体を狙って書いているのかもしれない。
うがちすぎかもしれないけれど、そういうのをT’s用語(^^;で「パス」っていうのよね。
最後は「内輪受け」?

私の文章は「他人の感想の感想」っていうところがかなりあるけれど(できるだけ出典は明らかにしたつもりだけれど)、みなさんは私の思い込みの激しい文章を読んでどう思いましたか?
「感想の感想の感想」、もらえたらうれしいなーっと♪ ……(^^;
あっ、でも、作品をまだ読んでないのに、ついついここまで来てしまった人、もしもいたら、この下らない文章のことはすっかり忘れて、本文を読んでね。
ぜひ、ご自分で味わって下さいな。
「ソッとくる」感じを。

この記事のトップへ
ページのトップへ

2000年02月09日(水) 「ムーン」by Rebecca お騒がせしました(Re:「女性の亡霊」)

★1・「ムーン」by Rebecca
★2・お騒がせしました(Re:「女性の亡霊」)



★1・「ムーン」by Rebecca

・「音楽系」の話題です。(+T's、かな?)
私にとって、忘れられない思い出。
ある飲み屋さんで、Rebeccaの「ムーン」を歌ったんです。
(確か、前半はオリジナルキーで歌えたけど、後半はぜんぜんダメで、
完全に「おひなりさま」<ヒナっているだけ(^^;
になっていたよーな気がする)
その飲み屋さんの男の子が、私のことを気に入ってしまったみたいで、
その後私についてくるの。
つい、私もその子がいじらしくて、……
私の数少ない「ホモ」体験になってしまいました。
今思うと、数少ない「ヘテロ」体験だったのね、実は。
はあ。
おかげで、今でも「ムーン」を聴くと、胸が痛むの。
だって、私、その子には二度と会えなかったんだもん。
「このまま深みにはまってはいけないっ……」と思ってしまって。

で、その、とーっても思い出深い「ムーン」を、
たまたま入った「漫画喫茶」のBGMで、
な、なんと、カヴァーした音が聞こえてくるじゃないのっっ!!?
「ガタンッ」
椅子が音を立てて、視線が体中に刺さる。

ねえ、誰か、どんな人たちがカヴァーしているのか、教えてっ!!

この記事のトップへ
ページのトップへ



★2・お騒がせしました(Re:「女性の亡霊」)

このところ、よその掲示板へ投稿したもので「あっ、これは重要だ!」と思うものをこちらに転載する、ということばっかりやっています。
(いいのかなあ……(^^;)
で、「02.06・女性の亡霊」に対して、とってもたくさんの人たちからレスをいただき、すっごく嬉しかった反面「やっぱり『溝』『壁』は深いなあ」と感じてしまい、その思いも含めて、返答としてぶつけたのが以下の文章です。
今は、「壁」「溝」と言って拘っていたら、むしろそれらを助長することにしかならないのに、と悔やんでいます。
(今朝見てみたら、もっと嬉しい回答をしてくれた人もいました(^^)♪)
例によって、固有名詞だけは変えます。
その人の名前を転載することを了承してもらっていないから。
でも「掲示板」は「オンラインで不特定多数の人が見るということを前提にしている」と思うので、(確かに「ネチケット」上全く問題がないとは思いませんが)あえて未承諾のまま転載してしまうのです。

----------------------

みなさん、本当にいろいろなご意見を寄せてくださってありがとうございました。
ええと、実は私、「仲間がいない」というわけではないので、そういうホームページや自助グループは知っています。
今回は、自分の心が余りにも揺らいでしまって、専ら「性同一性障害」のことだけを中心にしているほかのところではいえないなあ、と思ってこちらでぶちまけてしまいました。
管理人さん、いろいろとお気遣いいただいて、大変恐縮です。

まとめ(<いちばん失礼なやり方なのかもしれませんが、許してください)

・子供のこと
これは、はっきりとIさんの言うとおりだと思います。
彼の「男性性獲得」を損なうのは、目に見えています。
でも、自分自身の男性性が極めて否定的にしか見られないのに、それらを子供に投げかけたら、やっぱり別の「傷」を生み出すことにしかならないと思うんです。
ところで、Iさん、あなたは女性ですね?
そして、「男性性」を憎悪していませんか?
私の気持ちは、むしろあなたと同じですよ。
違っていたら、ごめんなさい。

>家族を持たなければよかったのにと思います。

それこそ、私が思っていることです。
けれど、それを子供にぶつけたら、どうなるんですか?
「僕は生まれて来ない方が良かったんだ」
……これでは、「トラウマの継承」に他ならないじゃないですか。

私は、彼に対してこう言います。
「私はお母さんを愛している。だから君が生まれたんだ」

・彼女(配偶者)のこと
私は彼女を「母」と重ねているのではありません。
元々は私自身が「もしも女性だったらこんな感じの人」という感じでした。
今までの書き込みで、私は思いっきり彼女に対する憎悪をぶつけていますけれど、本当は……
愛しています。
私は彼女以外の人を、男女を問わず、人生のパートナーとして愛することはないでしょう。
けれども、たぶん私のせいで、彼女自身ががんじがらめになってしまったのです。
Hさんのおっしゃった

>”頑張りすぎるほど頑張っている彼女をこれ以上傷つけないで・・・。”

というのは、私自身、痛切に感じています。
言ってくれて、本当にありがとう。
ただ、私と彼女は、今はある程度の距離をおかないと、「傷つけあう」以外のコミュニケーションがとれないんです。
また、彼女自身が「自分の問題」と向き合うのに、私の存在が障害になっているのは、事実だと思います。
少なくとも、私が「彼女の家に入る」というかたちで関わっている以上……。

・自分自身のこと
再び、Iさんにお聞きします。(ただし、回答不要です)
あなたが女だったら、ある日突然「おまえは男だ!」と周囲から言われ、「違う」と言うとからかわれたりいじめられたりされたら、どう思いますか?
もしもあなたが男だったら、その逆を考えてください。

私も他人の心の中までは読めませんが、どうやら「性同一性障害」というのは、そういうもののようです。

管理人さんが

>残念ながら、身近な人の性別変更は、普通精神的に受け入れられないことです。

とおっしゃっているのは、想像してみるとそんな気がしますが、実際にはそうでもありません。
人によって「受け入れられる」人と、だめな人がいるように感じます。
もちろん、「実は……」なんて言われれば、それなりに違和感があるに決まっていますけれど。
喩えはちょっと違うのかもしれませんが、「実は私は被差別部落の出身なんだ」と言われて、その人をどう「捉えなおす」でしょうか?

私は、自分の子供が大きくなる頃には、性同一性障害を抱える人を全体的には受け入れられるような社会になってほしい、と思っているんです。
そういうことを、ただの「逃げ」で済ましてきて、とうとう逃げられなくなったのが、今の私なんです。
思春期に入る頃に「何か変だ」と思うようになりました。
でも、当時は「同性愛」も「オカマ」も「ゲイ」もごっちゃで、まともな性教育を受けるチャンスもなかったので、とにかく自分の気持ちを「悪いこと」と捉えてフタをしてしまおうと思ったんです。
そのうち、身体は大きくなってしまって、(よく考えてみればそんなこともないのに)「こんなに大きい女はいない」と思い込んで、更に「フタを強化」しました。
大学に入ってからは何人もの女性を「愛し」(今は同性に対する気持ちに一生懸命「へ理屈」をつけていただけ、と納得しています)、けっきょく最初に出会った女性と結婚しました。
彼女とつきあうきっかけは

「あなたのせいよ!」

という言葉でした。
私は、その後他の人とつきあうことがあっても、「彼女のために」男性になろうと努力していたのです。
そして、彼女が流産して、

「あなたが殺したのよ!」

と叫んだとき、前にかけられていた呪文が解けてしまったのでした。

Dさんにお答えしますね。

>どうして女性になりたいんですか?

女性だから。戻りたいだけです。

>そして、どうしたいと思いますか?

普通に生きていけるようになりたいです。
当然、「責任」だって重要な要素ですよね。

みなさん、本当にありがとうございました。
まだまだ「壁」は厚く、「溝」は深い、ということが分かりました。
だって、感覚的に「分かる」か「分からない」かの問題が大きな部分を占めているから。
頭の中まで覗き込むことはできないよね。

では。

---------------------

以上、転載でした。
もしもこのような形の「転載」も許されないと思う方、いらっしゃいましたらメールくださいね。
あなたの考え方が分からなくて、こんなことをしてしまっているのだと思うので。

この記事のトップへ
ページのトップへ

2000年02月07日(月) ちょっとした感想

ホームページ持ってるって、いいね。
よそで迷惑かけなくてすむから。
……実はかけているかもしれない。
うーん。

2000年02月06日(日) 女性の亡霊

文芸部長・会津里花?!

女性の亡霊
に、本文を掲載したので、こちらへの転載は割愛します。
(注:↑どちらもタイトルを押すとリンク先へジャンプします。
ただし、新しいウィンドウが開きますのでご注意ください。
また、ここまで戻るにはブラウザの「戻る」ボタンでお願いします)


★表紙へ戻る★  ★#22★  ★#26★  ★セクマイ★  ≪前   次≫   ▲目次▲