こしおれ文々(吉田ぶんしょう)

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2005年01月14日(金) お伽話【流れ星を食べる怪物】 最終回

第六話

白髪の老人が空に手をかかげると、
その先にある星が動き出した。

それは次第に大きな音を立て、
光の尾を空に残しながら村人たちに向かって落ちてくる。


村人たちには為すすべもなく、
誰もが死んでしまうと覚悟した瞬間、
目の前に大きな影が現れた。


辺りは静まりかえっていた。
一つ目の流れ星同様、
落ちれば大きな音を立て、
爆発し、大きな地震が起きるはずなのに・・・。


一瞬、村人たちは何が起こっているのかわからなかった。
そして自分たちが生きているのか死んでしまったのかも
わからなかった。


両手で目を覆った村長は、
人差し指と中指の間だから辺りを見渡した。

荒れ果てた村の風景には違いなかったが、
目の前に大きな黒い影があった。


見上げるとそこには大きな黒い毛の塊。


そう。
村長はじめ村人たちが退治したあの黒い怪物が、
村人たちを守るかのように立っていた。


白髪の老人が落とした流れ星を、
怪物はその大きな口で飲み込んでいた。


村人V『怪物が、いや、ホントの神様がわしらを助けてくださったー!!』

頼もしいその大きな体には、
よく見るとたくさんの生々しい傷が残っていた。


怪物『ウォグガガァ ウォグガガァ』

老人『そう怒るな これだって勝つための作戦の一つだ』

怪物『ウォグガガァ ウォグガガァ』

老人『お前があんな下等動物に殺されるとは
   初めから思っていないさ。
   遊び相手がいなくなったらつまらなくなるからね
   また違う作戦を考えるとするよ』


そう言うと、白髪の老人は光に包まれながら消えていった。



村人W『助かった!!ホントの神様がウソっぱち神様から
    わしらを助けてくださっただ!!』
村人たちは歓喜の声をあげた。
抱き合い、涙を流し、助かった喜びを分かち合った。


そんな村人たちをよそに、
黒い怪物は『ズシーン ズシーン』という音を立てながら歩き始めた。
村人たちに傷つけられた体が痛むのか、
その足取りは重く、歩くのが精一杯にだった。

山に帰っていくのだと気づいた村長は
怪物を引き留めた。

村長『待ってくだせー ホントの神様。』

怪物の足が止まる。

村長『知らなかったとはいえ、数々のご無礼お詫びしますだ。』
と言って、ひざまずいた。
村人たちも全員、村長のあとに続きひざまずき、頭を下げた。

すると怪物は少しだけ後ろを振り向き、
村人たちに話しかけた。

怪物『もう済んだことですから』


村長始め村人たちは怪物と言葉が通じることに驚いた。


村長は続けて言った。
村長『ホントの神様、助けてくださったついでに
   もう一つお願いがあります。
   わしらの村は日照りが続き、田んぼは枯れ、
   畑は痩せてしまい、米も野菜もちっともとれませんだ。
   おかげでたくさんの村人が・・・。
   さらにさっきの流れ星で村は荒れ果てましただ。
   このままでは村の人間がみんな死んじまう。
   どうかあなた様の力で
   私たちを助けてもらえねーでしょうか』

村人全員『お願いしますだ〜』


村人たちの切なる願いを聞いた怪物は、
ひと呼吸おいてから話し始めた


この世の動植物、
つまりあなた達の言葉で言う【命あるもの】は、
意識を持つ持たないの違いはあるにせよ、
それぞれがその命を無駄にすることなく、
また、自らの子孫を繁栄させようと、
一生懸命生きようとします。

ただし、自然とは、
小なる動物が植物を食べ、
中なる動物が小なる動物を食べ、
大なる動物が中なる動物を食べ、
そして微なる動物が大なる動物の死骸を食べるという
仕組みでつねにまわり続け、
平等な生と死でうえで成り立っています。


あなた達はその仕組みを
神という偶物が与えるものと
解釈しますが、、
誰が与えるものではなく、
それはただの歯車でしかありません。

この世の巡り巡った仕組みの中で
つり合いを取っているに過ぎないのです。


私が神かどうかは知りませんが、
私の役目は突発的な外部因子、
たとえば流れ星を落とすといった
趣味の悪い遊びで
その仕組みが崩れないように守ることであり、
特定の動植物を守ることではありません。

さっきは【あなた達】を流れ星から守ったように見えるが、
【あなた達だけ】を守ったのではなく、
この周辺に生きる全ての動植物を守ったに過ぎないのです。


そして別な言い方をすれば、
自然の仕組みが崩れない程度の動植物の生死に関しては、
私は関与する必要がないのです。


あなた達は知らないと思いますが、
人間という動物は
この星のありとあらゆる場所に生息し、
他の動植物とは比較にならない速さで増加しています。

例えば、ある場所に生息していた人間が
仮に死んでしまったとしても、
その速さの中ではたいした影響力はありません。

この意味がおわかりになりますか?


ただし、
この星に生きる【命あるもの】は、
この星が誕生してから
それぞれの環境に適応するようあらゆる進化を遂げ、
繁栄してきたのです。
それだけ【命あるもの】の『生きのびようとする力』は、
計り知れない強さを兼ね備えています。


あなた達も、
【命あるもの】に違いないのですから、
【神】という偶物に頼らなくとも、
きっとこの環境に適応し、
後生に子孫を残すことが出来るでしょう。

そしてまたそれが大きな進化の中の一つとなるのです。



そう言うと怪物はまた歩き出した。

村人たちはその姿をただ呆然と見つめていた。



数年後、この村に人はいなくなっていた。

流れ星によって荒れ果てた大地に、
家主を失い、ただ腐朽していくのを待つ家が数軒並び、
餓死したと思われる亡骸がいくつかあるばかり。


全ての村人が餓死したのか、
それとも、
この村を捨て、新たな土地を求め旅立ったのか、
それはわからない。

それでも、
荒れ果てた大地には
雑草という【命あるもの】が
生き延びようと芽を出し、少しずつ根を生やしていた。

荒れ果てた大地に適応しながら


お伽話【流れ星を食べる怪物】  〜完〜 


2005年01月12日(水) 【情操】6巻 ジジとババとジジとババ

『【人に優しく】を目標にしなさい』
と言われた2004年から、1年が過ぎました。

謹賀新年。

いくつ?と聞かれたら
『今年で28です』と答えなければなりません。


30へのカウントダウン、着実に始まっています。


そんな吉田の自慢話を一つ。

なんと私の祖父母、
父方、母方併せて4人、現在も生存してます。

少々電池切れっぽい動きの婆もいますが、
誰一人寝たきりになることなく、
またボケることもなく、しっかりグルーヴ刻んでます。


普通にすごくない?
やばくない? うん。やばくはないな。うん。


実際、私の自慢話であっても、
私自身がすごいわけじゃないことには気づかないでください。


さて、そんなうちのジジババ四天王。
まだ当分死ぬことはないとTAKAをくくっていたのですが、
元旦ソーソー、うち一人が倒れたそうで。

上記の電池切れっぽい婆が、なんと【クモマッカ】。

【ダブル】って姉妹デュオの姉が
死ぬ原因となった【クモマッカ】です。

1月4日に手術と聞き、
仕事始めから年次休暇で病院行ってきました。


4時間にも及んだ手術はめでたく大成功。

最悪な状況はまぬがれ、命に別状なし。
本人の意識もハッキリしているとのこと。

やるじゃん♪さすが四天王!!


大正15年に生を受け、
3人の子どもを立派に育て上げ、
あれよあれよとひ孫の誕生まで見届けた体は、
確実に衰退の一途を辿っているとはいえ、
【クモマッカ】という病魔に屈することなく、
見事に4時間の手術を乗り越えやがったわけです。


【奇跡】という言葉は、
常識では考えられない、
とても神秘的な出来事という意味です。

さらに私のイメージは、
その出来事が起きる過程、時間が短ければ短いほど、
ほんの一瞬の出来事であればあるほど
奇跡の具合が大きくなるものと勝手に解釈していました。

しかし、うちの婆が
大正15年から刻んできたグルーヴと今回の4時間バトル、
これだって十分に【奇跡】と呼ぶに相応しい出来事ではないでしょうか。

若い人でも死に至る病気に、80過ぎた婆がうち勝つという
名誉ある【跡】を残したのだから。

手術後、集中治療室で眠る婆に
【あけましておめでとう】より先に
言わずにはいられなかった言葉はもちろん、
親指たてて【グッジョブ】です。


そんな婆を含め、
いまだ死ぬ影見せぬ四天王に敬意を表す正月でした。

そして、どっちの遺伝子だろうが長生き確定の吉田が
今年一発目にかかげる言葉!!

【じーちゃん!ばーちゃん!俺、今年も禁煙するのやめるからー!!】


管理人:吉田むらさき

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