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2007年10月23日(火) 女の背中

不意を突かれて焦った夫が饒舌になっている。

曰く、「でもね、アフリカでは黒人って言ってもアメリカにいるでっかい黒人と違ってみんな小さいんだよ。特にウガンダの女性はさとこよりも小さいくらい」

「かわいい子も多いよ。ホテルのレストランでサーバーしてるような子は、半分くらいは可愛い」「そういう子は、見てると、横柄な感じの子も多いけどね」

「アフリカの黒人って、ほんとに真っ黒なんだよ。褐色とかじゃなくて」

ふーん、真っ黒の黒人で可愛い女の子って、どういう感じの子だろう? 全然イメージが湧かない。 分からないけど、そういう子を見て「可愛い」って言える夫ってなんだかすごい。

中東地域で働いていたときにも感じたけど、夫は働いているうちに、担当するその国やそこに住む人たちに思い入れが強くなってくるのだ。9年も一緒に仕事していれば当然だけど、アフリカで、もうそんな気持ちになっているのだとしたら、ホント夫ってば、感情移入し過ぎなんじゃないだろうか?

「アフリカの方が貧しいけれど、人々がまじめに働くし、中東より発展するかもしれない」なんて言ってるし。


「あ、面白い話思い出した。

ホテルのレストランで食事をした後、女の子にチップをあげるのは、(カード払いのレシートにチップの金額を書き込むより)現金のほうがいいと思って、『部屋に(取りに)来て』(現金は部屋の金庫に入れているため)って言ったら、『何時頃、行ったらいいですか?』って言われて焦ったよ。やっぱり、それってそういう意味なんだろうなー。『2時間後に来て』って言ったら、本当に来そうなそんな感じだったから」


夫よ、アフリカの話をいろいろ教えてくれるのは嬉しいけれど、それって全然弁明になってないから。


先週水曜日、アフリカ出張から帰ってきた夫は、後ろから私を抱きしめて「さとこの背中ってほんとにちっちゃいね」と言ったのだった。

えっ!? そんなことを言われたのは初めてじゃないかしらん? 私、別にちっちゃくないんだけど・・・。(160cm) ぴぴぴっ!と、アンテナが立ちレーダーが張り巡らされた音がして私は、「むむむ、もしやあなたはアフリカででっかい黒人の女の人とイケナイことでもしてきたんですか?」と訊いた。

夫は、ケタケタと大笑いして、「そんなことあるわけないじゃない。そんな元気ないし」と言い、「比喩だよ、比喩」「こんなに小さな背中のさとこのことを大切に守ってあげなきゃいけないと思っただけなのに」なんて言ってる。

あはは、別に私だって本気でそんなこと思ってないよ。でもそれじゃあ弁明にもなってないって気づいているのかな。


2007年10月10日(水) ケニア

(前回の日記からの続きです)

初めてのアフリカ出張前に体調を崩し、ナーバスになった夫を空港まで送っていってから、今日で11日経った。

アフリカに着いた翌日、夫からメールが届いた。


「さとこさん

昨夜 ナイロビに着きました。飛行機の中でもずっと仕事をしていたので疲れました。今日もまだ仕事をしています。明日チェックアウトしてタンザニアに行きます。元気にしています。さとこも元気でね。」


と、書かれたメールを見て私は えええええっ! と驚いた。

アフリカに出張すると言われ、「どこに行くの?」と訊いたとき、確か夫は「ケニアとタンザニア」と言ったはずだ。いつの間にナイロビなんかに行ったのだ?と。

そう、私は、ケニアの首都がナイロビだということを知らなかったのだ。(恥)

2年前、渋谷で「ナイロビの蜂」という映画を観た。今まで観た映画の中で確実にベスト5に入る感動的な映画だった。アフリカで不審の死を遂げたジャーナリストの妻の死因を追って、ガーデニングが趣味の温和な夫(外交官)がアフリカまで乗り込んでいくという、ミステリー仕立ての社会派のラブストーリーで、映画の内容と相まってアフリカの風景が哀しくて美しかった。(原題は「The Constant Gardener」)

映画を観た後、ナイロビの美しい風景に心を奪われはしたが、それはアフリカのどこかにあって、私とは縁がないものと思っていた。

それがいつの間に・・・。「ずるいぞ、夫」そんな気持ちになった。


それから1週間後、また夫からメールが届いた。(現地に赴いている間はネットが繋がる環境にいない)

「昨日タンザニアからナイロビに戻ってきました。明日はケニアのキスムという西の街に移動します。それからウガンダ、ルワンダと行き、(略

対応者は私の予想よりはるかに優秀で仕事ははかどります。イエメンやイランより能率がいい気がします。とはいっても肝心なデータにたどりつくにはまだまだ時間がかかります。

ワシントンで黒人にも慣れているせいか、不思議なくらいアフリカにいるという特別な感情がおきません。タンザニアのムワンザという街から夜飛行機に乗るときに、古ぼけた待合室で黒人の人々に囲まれ、彼らがキリマンジェロというビールを飲んでいるのを見た時、すこし、遠い国にきたなという感じがわきおこったくらいです。

街でも英語が通じる人がたくさんいるので、アラブ諸国より楽です。それでは元気で。」


「キスムという田舎に来ました。ネットがつながってほっとしています。ナイロビに比べるとかなり貧しい感じがします。昨日は部屋の中央、ベットの上からつるされた蚊帳の中で寝ました。写真も撮りました。蚊取り線香が役に立ちました。今回は観光はなしですが、いつか一緒に来るときのためにキリマンジェロやンサファリで有名な“ンゴロンゴロ国立公園”のことも飛行機で隣の人から話を聞きました。昔、子供たちとンのつく名まえのことでクイズをしていたことを思い出します。元気でね」


しりとりで「ん」を言ってしまっても負けじゃないよ「ンゴロンゴロ国立公園」とか「ングラライ国際空港」(バリ島、デンパサール)とかあるんだよと息子たちと話したのは遠い昔。それらの地名が急に身近に感じられた。

初めての土地、未知の環境、アフリカに対する幻想もナーバスになったことも仕方がなかったのかもしれない。行ってみたら思いのほか快適だった。よかった。

取り敢えず、私は「アジアのどこかの国でもっといい仕事が見つかるよ」と念じてあげることはもう止めた!(笑)

今の私には、中国やモンゴルやフィリピンよりも、ケニアの方が魅力的なのだ。いつか近い将来、夫の出張に伴って一緒にケニアに行こう。もしかしたら、下の息子が大学に入った2年後くらいには、ナイロビに住んでいるかもしれない。中国やモンゴルやインドに行くよりも、もっと世界観も変わるだろう。その前に、 NETFLIX で The Constant Gardener を借りてもう一度観てみよう。

将来のことをいろいろ考えていたら、ちょっとだけ、閉塞感から抜け出せた気がした。


「ナイロビの蜂」公式HP
アフリカ地図



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