五行日記
ガム



 動けよさらば充たされん。

「所謂」も「結局」も「抑」もいらない。

真面目にやってる人間を茶化す言葉もいらない。

必要なのは行動。行動を伴わない言葉は認めない。

口先だけで飯が食えても、そんな歳の取り方は認めない。

僕は躰で飯を食う。それで腹一杯食ってやる。

2005年11月30日(水)



 往復葉書。

同窓会の案内が届いた。

少し前の僕なら迷わず欠席に○を付けただろう。

今の僕は迷いながらも参加に○を付けられずにいる。

行きたいような、行きたくないような。

先に立つ後悔の丈を比べてみたり。

2005年11月29日(火)



 忌々しい今。

その時は分からなくても

後になって分かることがある。

あの時は分からなかったけど

今になって分かったことがある。

惜しむらくは今。今であること。

2005年11月28日(月)



 現職≠適職。

IQと適職が分かると言う番組を見てみた。

流石に2時間も脳みそを使うと疲れてしまう。

結果は右・右タイプで人志向タイプだとか。

今の仕事を適職とする脳と真逆という判定。

そう言われても何だか、ねぇ。

2005年11月27日(日)



 小春日和の深呼吸。

予定もないのに生憎の小春日和。

折角なんでと部屋の空気を入れ換える。

冷たい空気が入り込むたびに膨らむカーテン。

まるで呼吸をしているみたいに。

僕も少し深呼吸をして窓の外の明日を見た。

2005年11月26日(土)



 駐輪場の冬。

煙のような息を吐いて、蒸気機関車のように走る。

燃料は石炭じゃなく、炭火焼きの珈琲。躰が温まる。

ハンドルを握る剥き出しの手だけが、熱を奪われ悴む。

日に日に少なくなる駐輪場の自転車。

風に煽られても、支える仲間がいないくらいに。

2005年11月25日(金)



 不意打ちパチパチ。

また彼奴が現れた。そういう季節になった。

現れたと言っても姿を現すことはなく、

いつも不意を衝いて襲ってくる卑怯者。

いつまた襲われるかと戦々恐々。

そのせいか髪もだいぶ逆立ってる。

2005年11月24日(木)



 アマにはないけど。

風雨時々虹、最悪のコンディションの中で行われた

今期最後のサッカー、所謂球納め。

振り返れば躰も気持ちも衰えた一年だった。

そしてそれを象徴するような今日だった。

今日引退を表明した彼のように僕も…なんて少しだけ。

2005年11月23日(水)



 おとなのふりかけ。

地下に潜って不機嫌なコピー機と格闘。

「あの時といい、今といい、つくづく地下に縁があるな。」

なんて思ってニヤけながら。

でもこんな日に限って白のワイシャツ。

気付いたら、所々に黒の斑点。「お?トナーのふりかけ?」

2005年11月22日(火)



 にがイヌ、あまイヌ。

それが嘘でも本当でも関係なかった。

嘘を吐かれたとわざと思い込んで、

遠吠えする気力もない最低の負け犬になった。

美味いと思わない缶コーヒーをあえて飲んだら

押し付けがましいその甘さが苦々しい数年前を蘇らせた。

2005年11月21日(月)



 行く季節、サル季節。

特に予定の無かった午後、

メールに呼び出されて急遽フットサル。

体育館の床、スパイクのないシューズ、小さなボール。

まだ違和感はあるけど春までのお付き合い。

熱気が目に見えるこれからの季節を楽しもう。

2005年11月20日(日)



 瞼の裏側。

何となく重い瞼の裏側で考える。

この世の中には必然より偶然で溢れてる。

約束や契約は偶然をほんの少しねじ曲げるだけ。

そうじゃなきゃ僕は今を説明できない。

偶然を運命なんて思わせぶりな言葉で飾ることはない。

2005年11月19日(土)



 不満の花火。

3人で持ち寄った不満の火薬。

それぞれ色の違う火薬は、ひとつになって、

思いの外、いい色、いい形の花火になった。

気持ちや考えを共有できる仲間がいるのは心強い。

今度はもっと楽しい花火を打ち上げよう。

2005年11月18日(金)



 僕の目。

僕の視力は弱いけど、遠くばかり見ている彼らより、

しっかりと足下を見ている。

僕の視野は狭いけど、明後日を見ている彼らより、

確実に今を見ている。

身の程は知ってる。そしてその活かし方も。

2005年11月17日(木)



 霧切り舞。

頭の中に立ちこめる深い霧。

晴らそうとしても晴らそうとしても切りがない。

分かって欲しいとは思わないけど

何で分からないんだろうって不満は募る。

まだ支度が出来てない心に冬が舞った。

2005年11月16日(水)



 動かない時計。

文字通り時が止まって、今、文字盤通りの時間ではない。

ただ電池が切れただけなのに、重くのし掛かる違和感。

それまで当たり前だったことが、当たり前じゃなくなる不安。

いつか僕の電池も切れて、動けなくなってしまうんだろう。

当たり前のことだけど、今はまだ当たり前のことじゃない。

2005年11月15日(火)



 1/wゆらぎ。

沈黙のリズムが違う。

揺動のレンジが違う。

いつも澄んだ水がいいとは限らない。

何も住まない水がいいとは言えないように。

ただ浅い底が見えて失望が水面を撫でる。

2005年11月14日(月)



 着信あり。

腹を上に向けて水に浮かぶ死んだ魚。

似たようなもんだ。殆ど何も変わらない。

枕元で着信ありを知らせるランプが点滅してるけど、

死んだ魚の目には映らない。映るはずもない。

何のための今日で、何のための僕だ。

2005年11月13日(日)



 そう。

いつかそうなるような気がしてる。

今日か明日か明後日か、いつかは分からないけど漠然と、

いつかそうなるような気がしてる。

それは望んでることなのか、望んでいいものなのか、

薄皮一枚の下でそうなった後を考える。

2005年11月12日(土)



 7人の敵。

男は敷居を跨げば7人の敵がいると言う。

その一方で敵の敵は味方という言葉もある。

そう考えると意外と味方は多いのかもしれない。

どこからどこまでが味方かなんて分からないけど

根拠のない安心感で今日も眠れたりするのです。

2005年11月11日(金)



 アイロニー。

くだらない、くだらない、最低な一日は、

最低な朝で始まって、最低な夜で終わる。

非協力的な上司達に囲まれ、

持て余すほどの仕事に有り付ける。

なんて幸せな一日。くだらない一日。

2005年11月10日(木)



 日常の隙間風。

日常と、非日常の隙間で爪先立ち。

バランスを崩して倒れたら、僕はどっちへ転がる。

僕を倒そうと、今日も風は強く吹く。

だけど風は、隙間だらけの僕を素通り。

空気を切り裂く音だけ残して。

2005年11月09日(水)



 リトル・プリテンダー。

どいつもこいつも芝居がかってると思った。

そいつらに負けないよう、頑張って自分を演じてきた。

それに疲れて演じるのを已めたら、自分が分からなくなった。

見失った自分を取り戻そうと再び演技を始めてみたけど、

周りから少し浮いて、気分だけが少し沈んだ。

2005年11月08日(火)



 消えない対岸の火事。

受け入れがたい事実。

直接的な影響はなくとも知ってしまったことで

鉛を飲み込んだように躰が重くなってしまうような。

対岸の火事であって欲しいと思うのは逃避なのか。

時間の止まった彼らはいつまでも燃え続けるというのに。

2005年11月07日(月)



 冬が来る。

言葉が浮かばず日記が滞る。

日々の思いは色付くことなく枯れて散る。

空の色さえ忘れてしまいそうなこの頃。

足踏みをすることもなく同じ場所に留まる。

僕の中にも冬が訪れようとしてるみたいだ。

2005年11月06日(日)



 除きたい闇、覗きたい奥。

その闇は思っていた以上に深いようだ。

僕の小さなランタンじゃ奥まで照らすことは出来なくて。

たとえ一瞬でも強い光を出せたならその闇の奥に

何があるのか見られるかもしれないのにって。

昨夜見た稲妻を思い出しながら手探りの午後。

2005年11月05日(土)



 日溜まり猫。

包丁も歯が立たない硬いカボチャでも

加熱することで柔らかくなるように

凝り固まった僕自身を解きほぐしてくれるのは

ただひとつの温もりだと信じたい。

その温もりの中で何も考えずに眠っていたい。

2005年11月04日(金)



 上り坂のような下り坂。

このところ残業続きで生活習慣が乱れているせいか

今まで出たことのないくらい大量の吹き出ものが出現。

お陰でヒゲも上手く剃れない状況。

もうニキビと呼べない歳になって何年が過ぎたのか。

上り坂だと思っていた毎日は急な下り坂だったみたいだ。

2005年11月03日(木)



 蛾になって踊ろう。

焚き付けられてサナギになる。

羽化した自分を想像して身震いをする。

それは甲虫でも蝉でもないし、まして蝶でもない。

多分きっと嫌われ者の蛾になって鱗粉を撒き散らすんだ。

得るものと失うものの間を、行ったり来たり舞い踊りながら。

2005年11月02日(水)



 強い光ひとつ。

光を浴びて輝くのも悪くはない。

だけど僕を照らす光はひとつでいい。沢山はいらない。

照らす光の数だけ僕の影が出来るけど

光が多ければ多いほど影は薄くなっていく。

強い光をひとつ浴びて、濃い影をひとつ自分にしたい。

2005年11月01日(火)
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