甘い煙
頭出し|巻戻し|早送り
男のひとで欠けたり減ったり淋しくなったりした心の部分は、 男のひとでしか満たせないな、と思う。
昨日、あの子に言った。言えた。 引き留められて、私らしくもなく保留にして別れたけれど、今朝、了承の旨メールが届いた。 うん。
あの子には、私の本来の潔さや誠実さやある種の潔癖さは、全然出せなかった。 振り回しただけだった。 言うことが変わるし、うんって言ったのに実現できなかったことがいくつもあって、期待させては引き、期待させては引き、の繰り返しだった。
あの子は何も悪くないのに。 むしろ、変化に気づいてくれるし、褒めて欲しい部分を褒めてくれるし、他にもたくさん言葉をくれるし、嫌とか駄目とか言ったことはしないし、触れてくれるし、気遣ってくれるし、いいところやツボなところはたくさんあった。
もう少し、近づきたかったよ。
彼も、幸せな恋愛ができますように。
つきあいたいとためらいなく思えていたらね、 もっとメールしたり、時には声を聴きたいと電話したり、 仕事帰りに会おうよって私から言ったり、遊ぶ予定を積極的にたてたりするんだよ。
そういうこと、したいけど。 あの子の笑顔、見たいし。喜んでもらえたら嬉しいし。
でも、しない。
あの子に対して私は滅茶苦茶で、 期待させてはひいて、 ありえないそんな女最低だ、と思っていた女に自分がなっている。
女友達は、いやいや亜子ちゃんのなんてかわいい方だよ全然だよ、と言ってくれるし、運送屋さんのおじさんも、なりゆきで状況を話したら「なんだ、いいじゃない」って言っていたけれど、一般的な基準はある種どうでもいい。 私の基準では、してはいけないことをしたし、あの子を振り回しているのは事実だから。 自分のしたことで自分にはね返ってきたものは全然負うけどさ。 あの子に、ごめんね、と思う。
言わないと。
疲れたな、癒されたいな、甘えたいな、と感じたとき、浮かぶのはあの子の顔。 だけど、あんまり求めて仲良くなっちゃいかんよ、とストッパーをかける。
なんなのよー。
もっとためらいなく飛び込める相手だったら。 明るい未来を描ける人と寄り添いたいよぅ。
友達の家やビジネスホテルに泊まり歩く数週間を過ごしてみたいと思ったことがあった。経験してみたかったな、もうできないだろうな、と考えつつ。 彼と別れることはないと思っていたから。ひとり身じゃないとできないだろうと。
まさか実現することがあろうとは。
楽しいと面倒を行き来している。 泊めてくれる友達には、ただただありがたさしか感じない。 いまは新宿でホテル暮らし中(2連泊目)
今回の恋愛は、おかしい。 私はあの子のからだ目当てだろうか、と一瞬思ってしまったり。 そういうことが特別好きなわけではないつもりなんだけど。 単純におあずけ的な期間が長いからかなぁ。 それともあの子が変わっているから、感化されたのかなぁ。 とりあえず、なんだかいろいろおかしい。 困ったな、と思っている。
あの子のことを好きになって、近づきたいと感じているけれど、つきあったらまずいよ、とも思っている。 ひとりで考えているときは、つきあわないと気持ちを決めて、言えそうな気がする。 でも、会ってしまうと、なかなか。 こんなに流される恋愛なんてー。不本意だ!
ずぶずぶ仲良くなりたい気持ちが捨てきれない。 困ったことになるのは見えているのに、べったべたで甘々なふたりになることへの興味と好奇心が抑えられるかどうか甚だ心配だ。
はぁ。甘えたい。甘やかしたい。 いっぱい笑顔を見たいよ。
昨日は友達の家に泊めてもらった。 零時過ぎに着いて、2時過ぎまで話を聞いてもらって、就寝。
起きたら、頭が痛かった。昨日泣いたからだ。 友達がトーストとウィンナーとカフェオレの朝食を用意してくれたけれど、においで気持ち悪くなってしまって食べられなかった。 体にくるなんて。あるんだな。今日が休みで良かった。 彼も、今日は休みのはず。
友達は10時頃でかけていった。 留守の間もいていいと言ってくれるおおらかな優しさが、とてもありがたい。
14時頃、気持ち悪さが薄らいだかな、と感じた隙にごはんを食べて、薬を飲む。 その前後、朝から夕方までは、ソファやベッドでぼんやり休んだりうつらうつらしたり。 起きているときは、だいたい泣いていた。 自分で決めて言ったくせに。
18時過ぎ、頭痛を感じなくなったので、駅までの道を確認しがてら、夕ごはんを買いにいく。コンビニ。 帰ってテレビをつけたら、YOUは何しに日本へ?が始まった。好き。だけど、彼のことを思いだす。よく一緒に見ていたから。 昨日行こうとして、混んでいたためにやめにしたお店が出てきて、「おぉ!」を彼と共有できないことを悲しく感じる。YOU…。 そのほかにも、「これ見てー!」とか「あのね、」とか、日常のあれこれを一緒に感じることはもうできないんだな、とちくっとすることが何度か。
だけど、私のことだから、喉元過ぎれば熱さ忘れるで、案外早く回復してしまうんじゃないかな、と思ったりもする。 わかんないけどさ。 こんなに痛いのもダメージを大きく感じるのも初めてだしさ。
わかんないけど。
お別れした。 してしまった。
してしまった、なんてこんなに感じるの、初めてかも。 初めてだ。
彼はものすごく大人で、大人すぎた。 でもたぶん、若い頃からあんな感じだったんじゃないかな。
あぁ、いやだな。どう書き記しても、なんだか薄っぺらになる。
好き。
だけど。 自分で決めたことだから、何があってももう断ち切るしかないんだよ。私が選んだ道だ。
「幸せになりなよ。」
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