選挙公示日。
会議室の掲示板に公示文書を法務省が張り出した。 それを王室から眺めていた。
「さて・・・始まったか・・・」
立候補者が氏名を張り出し、会議室で方針を語った。 先ずは予想通りの滑り出しだった。
そして、わしは態度を決めかねていた。
「まぁ・・・顔だけ出すとするか・・・」
いつものようにノックもせずに執務室に入った。 が、珍しく「主」は居ない。 革命中は大臣は執務室に入れないのを忘れていた。
「・・・あそこか・・・・」
ここ以外ではそこしか居ないだろうという場所に行くと、やっぱり居た。 ノックもしないで入る。
「ノック・・・はしなくていいんだよな」
「内政室じゃなくたって、しなさいよ。てか、どうせ何処でもしないんでしょ」
「まあな」
「まだ片づけ済んでないのか、あそこ」
「もう片づいてるよ。 今夜革命が終わったら、またあそこで不味いコーヒー飲むつもり」
「今日も徹夜か」
「もの凄く屋敷が恋しいわけでもないし。 何か事件があっても、宮殿に居れば大丈夫でしょ・・・貴方がステンヒルに帰っててもね。
ほら、前の革命の時みたいに。 運良く外務大臣がいたおかげもあるけれど。
会議室への告知も、大聖堂への報告もすぐに済んだわ」
いつもよりたくさん話しかけてきた。 きっと、わしの気持ちを探りたいのを隠しながら話していたからだろう。 昔からの癖だ。
「それは有り難いが。 無理するなよ」
「と言いつつ、もう帰るんだろー」
「疏埜馥が待ってるからな」
「はいはい、お疲れさま・・・って、ちょっと待て」
「ん?」
「今日は何日だと思う?」
いよいよ本題か。
「18日だろ?」
一応、カマをかけるようにこう言った。
「だからどうした」
「どうした、じゃない。選挙が始まってるよ、ルシ」
「そうだな」
「・・・約束、守りなさいね。ちゃんと立候補してよね」
「考えとく」
「・・・・・・」
実際、わしは腹を決めかねていた。 だから、今日は返事が出来なかった。
家に帰り、夕食の後、疏埜馥に一日の出来事を話した。
『私ね・・・旦那様が選挙に出ないなら・・・旅行に行きたい・・・』 「ああ・・・わしも行きたいなぁ。何処に行こうか?」 『バルハラ・・、今はオルトニアだっけ?』 「そうだね」 『行ってみたいんだ・・・オルトニア』 「わしも・・・サチ様とかと遊びたいし・・・・行こうか?」 『うん・・・でも・・・・いいの?』 「わからん・・・五分五分か・・・な・・・」 『・・・・今日は疲れてるし、そろそろ休みましょうか?』 「ああ・・・おやすみ、疏埜馥」 『おやすみ・・・旦那様・・・・』
一人、椅子に腰掛けて考えた・・・
どうするべきなのか? どうしたいのか?
答えは・・・・見つからないまま、空が白み始めた。
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