momoparco
  BOLÉRO (Bolero)
2003年04月11日(金)  

 クラシックの曲を聴くことは滅多にないことだし、私が語るのも胡散臭いけれども、今日はどうしてもこの曲が聴きたかった。ラヴェルのボレロ。CDを引っ張りだして、やっとこさ今落ち着いたところ。

 曲が始まる。小太鼓のリズムにのって、同じ旋律が延々と続く。変奏も展開もない。音色と音量の変化だけで繰り返し繰り返し同じリズムがどこまでも続くこの曲が好きである。

 始まりは、かすかに耳を傾けないと聴こえないほど音量は低く、しかしこのリズムが聴こえてくると胸が高鳴る。
聞きかじりによれば、この曲ははオーケストラにはあまり評判が良くないそうだ。延々とリズムが単調な中にソロがそれぞれ長い。簡単に言えば単調なリズムの中において、万が一失敗すればそれはもうとてつもなく目立つという異常な緊張感をもたらすからだそうである。

 でも、その緊張感が好き。ひたすら続くドラムのリズム、あくまでも続く同じ旋律。催眠作用とは違う、何故か適度な緊張感を感じながらリラックス出来る。始まりが嘘だったかのように音量が大きくなる。どんどんどんどん大きくなる。それでもリズムは同じ。旋律も同じ。黙って目を閉じて聴く。うねりに身をまかせるとドラマチックで、上品な野生を感じる。野に遊ぶ旋律、そんな感じ。私のCDではこの曲は14分24秒続く。潔くスパっと終わる。実はもっと延々と聴いていたい曲である。

 皆さんは、もういくつか前の冬季オリンピックでこの曲をバックにアイスダンスを踊ったカップルのことを憶えているでしょうか。多分、今より10年ぐらい前だから、2つ前のオリンピックのあたりじゃないかと思う。
どこの国の何という名前のカップルなのかさっぱり憶えていないのだが、その前やまたその前のオリンピックでは金メダルを獲ったとか。(定かでないけれど)

 ベテランである分、同時に出場していた他の国のカップルより年齢は上であった。うる覚えで申し訳ないが、一度は引退してプロになったけれど、その時は再びアマチュアに戻って(確か)にオリンピック出場を果たしたというような解説があったと記憶している。その時の彼らのダンスが素晴らしかった。他の選手たちに比べ新しい技も、危険度の高い技も派手な振りでもない。そういった意味ではメダルを獲得する点数には至らなかったが、それでも上位に入賞したと思う。

 単調なボレロのリズムを背景にシンプルでオーソドックスな衣装を身にまとい、落ち着いた優雅な動き、繊細なのに余裕、まるで二匹の蝶が優美に戯れるようなそんな氷上の”ダンス”。それまでの王者の貫禄を、最高のコンディションで余すところなく見せたものであった。

 普段、テレビをビデオに録画することはないが、その時ばかりは録画しておかなかったのを始まってすぐに悔やんだ。勿論あとの祭りだが、途中でビデオのセッティングをする間も惜しいほど画面に目が釘付けになってしまったのだ。多分私は、魂を抜かれたような顔をしていたことだろう。

 あれ以来、いくつかのオリンピックで、アイスダンスを見ることはあったが、私にとってあの時の2人のダンスを上回るものはまだ見られない。彼らのダンスが忘れられない。この曲を聴くと、あのダンスが想い出されて、よけいにドラマチックなのかも知れない。もう一度見たいと思う。

 とにかく、今日はボレロの日である。
昨日の仕事の上での出来事が、精神的に尾を引いた一日だったから、かな。(大したことじゃないけれど)

 目を閉じてひたすら力を抜いて・・・。



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