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2003年05月04日(日) 迷える惑星、ふたたび新たな航海へ。

●今年年頭から始まった、長い長い仕事が、昨日ようやく終わった。大千穐楽。
 あまりに多くの責任がのしかかるポジションだったため気の休まる暇がなく、また、人間関係で悩むことあり、仕事を放棄してしまおうかと悩んだことさえあった。それでも、4ヶ月の苦楽ををともにした仲間たちに助けられながら、なんとか無事航海を遂げることができた。
 豪華客船に乗る時もあり、犬かきであっぷあっぷの時もあり、手漕ぎボートに乗る時もあり、仲間と競泳することもあり、見えない誰かに水中深く足を引き込まれそうになる時もあり、溺れるところをすんでのところで救われる時もあり、曳航される時もあり。……でも目指す港が視界に入ってからは、ゆうるりとゆうるりと、たっぷり息を吸いながら、顔を水から出した時には思いっきりまわりの風景を楽しみながら、マイペースで泳いだ。……たどり着いた港は、航海の遂行を思いっきり祝福してくれる、素晴らしい場所だった。
 湧き上がるカーテンコールを袖から眺めながら、少し泣いた。戻ってきた主演俳優としっかり抱擁しあって、また少し泣いた。何年も仕事をして、出会っては別れ始まっては終わりのサイクルにすっかり慣れているはずなのに、今回ばかりは、はじめて仕事をなし終えた新人のような初心さが戻っていた。(仲間に「××も女だったんだな」とからかわれたけれど。)

●今は東京へ戻る新幹線の中。窓外には白い帽子を冠った山々が見えている。初夏の陽気の中に残る雪は、冬の真っ只中から始めた仕事の長さを思わせ、季節を感じることもなく過ぎていった時間の中で取りこぼしたものたちのことを思わせる。何かを得ようとすると、必ず何かを失っている。だからせめて、自分が何を失ってきたかだけは、気づいていたい。

●そして今は、我が家のテーブル。昨夜は、舞台をばらし終わって午前1時からの打ち上げ。ホテルにたどり着いたのが5時、そのまま帰ってきたものだから、帰宅してすぐにベッドにもぐりこんでしまった。ようやく起きだしたところ。

●とりあえず2日休んだら、ちょっとした仕事が待っている。これも、今は「ちょっとした」なんて言ってるけれど、新しい仕事場との出会いなんだ。ふたたび、新たに、泳ぎだす。

●大阪公演を見にきてくれた友人のホームページをのぞいていたら、わたしとの短いデートのことが書いてある。そこにはわたしが「悩める惑星のようだ」と書かれてあった。響きのよい、身に余る形容で、ちょっとうれしくなった。
「惑星」を大辞泉でひいてみる。
�‖斥曚亮�囲を公転し、みずからは発光しない、比較的大きな天体。
�⊆体蓮⊆袁咾�未知であるが、有望と見られる人。
彼はたぶん�△琉嫐�で使ってくれたんだと思うのだが、わたしは自らは発光せず、何かの光を誰かの光を受けて、公転し続ける自分を想像する。
 わたしにとっての太陽って何なんだろう? 公転の周期も、その軌道も知らないままに、わたしは周り続けているんだ。
 今、自分がどこにいるのかわからないままに、「でも、確かにひとつの航海はおえたのだから」と、また新たに泳ぎだす。今、ひとつの公転の途中にあるのでも。今、確かにひとつの公転の最初なのであっても。悩める惑星には、「今」のことしかわからない。


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