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2016年08月28日(日) はじめに酒ありき
初めに酒ありき

昨日あるワイン関係のウェブサイトでぶどう以外が原料のワイン(フルーツワイン)のコラムを読んだ。

その中でミード(蜂蜜酒)も触れられていて、滋養強壮があることからメディスン(medicine、薬)の語源にもなったと書かれてあった。

メディスンの語源はラテン語のメディクス(medicus「癒やし」、転じて「医者」)。一方蜂蜜はラテン語でmelというから違うのではないか。

それでミードの語源を調べたら、インド・ヨーロッパ語族の色んな言語に似たような単語があって驚いた。大体medのような響きである(英語のmead、スコットランド・ゲール語のmeadh、ロシア語のmyedなど)。

いっぽう古代ギリシャ語やラテン語には似たような単語がないかと思いながら辞書をめくっていたら、ギリシャ語にmethy、ラテン語にmerumという単語があった。どちらもワインの意味だった。

古代ギリシャやローマはワインの産地だったので、早いうちに蜂蜜酒を意味する単語がワインの意味に変わったようである。

そのワインに話題を移すと、ぶどう酒を意味する単語もインド・ヨーロッパ語族の色んな言語で互いに似ている。

ワインは古代ギリシャ語でoinos、ラテン語でvinumと呼ばれた。英語でwine、ドイツ語でWein、フランス語でvin、ロシア語でvino、アイルランドのゲール語でfion (iの点はアキュートアクセントの形の長音符)など互いに響きが似ている。

ところが葡萄を表す単語はヨーロッパの言語では様々である。たとえば英語のgrape、ドイツ語のTraub、フランス語のraisin、スペイン語やイタリア語のuva、カタルーニャ語のraim (iには分音符)などである。

ワインの醸造は葡萄の栽培と同時に伝わるので、ぶどうを表す単語も似たようなものになるはずである。

かと言って古来ワインの貿易や輸出入がヨーロッパやインド全体で活発だったとは思われない。

そうなると考えられることは、インド人や欧州人の共通の祖先が蜂蜜酒と同様ぶどう酒も既に飲んでいたことである。5000年は前のことである。

葡萄や蜂蜜を表す単語は土地により変わってしまったけど、ワインやミードを意味する言葉は現在まで残った。

ヨーロッパ人やインド人の共通の祖先は初めに酒ありきだったのだ。それも二種類も。


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