えだまめ日記
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2002年11月26日(火) ●死んだ男の残したもの

叔父さんが死んだ。
68歳は少しはやい。

趣味といえば、ギターを手作りすること。
ほかに趣味は特になかった。

生涯の内で、6本のギターを作り、手元に残るのはクラシックギター3本。

生前聞いた話だが、一番大切にしているやつは、材料費だけで10万円かかったとか。材料を求めて東京まで探しにいったとか。それ以上にギターの部材を買い、切って、削って、曲げて、磨いて、塗装してと、作業の工程を想像するだけでも気が遠くなる。

それに加え、単なる木工品ではないので、楽器として美しい音色が求められる。
コンクールでも入賞したことがあるらしい。

家族は、こんな叔父さんのために、ギター1本を棺に入れてやろうと考えた。
しかし、燃やしても火葬場のゴミになるだけだ、そんなもったいないことをと、反対した。

だれかが、残されたギターを弾きつづけた方が本人は喜ぶのではと。
棺には、3本のギターの写真が入れられた。

そして、夜、骨になった叔父さんの前でギターを弾いた。
生前叔父さんが弾いていたという、楽譜も出てきて、叔父さんの好きだった歌をビール飲みながら、皆でうたった。

田端義夫、古賀政男、そして時代は下がって美空ひばり、五木ひろしと続いた。
ギターの音色は叔父さんに届いているのだろう。


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