おひさまの日記
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2010年12月23日(木) 31年目のごめんね

買い物をしていたら見た顔が。
本当にたまにだけど、町の中で彼女とすれ違う。
けれど、私は見ないふりをして通り過ぎていた。

なぜなら。

彼女は、私が中学生の時にいじめた友達だったからだ。

小学校5年生の頃から仲良しで、
中学校に入って、ちょっとした気持ちの行き違いがあったんだろう、今思えば。
ある友達にふとこぼした彼女の愚痴。

すると、その友達も彼女を好ましく思っていなかったようで、

「あの女ムカつくよね。
 ねえ、ヤキ入れようよ」

そう持ちかけてきた。
その友達は、いわゆる昔のつっぱりグループの子で、
仲間内にその話を持ちかけ、
いつ呼び出して、いつヤキを入れる、とすぐに決まってしまったのだ。

内心焦った。
自分はそんなつもりじゃなかった。
ちょっと愚痴をこぼしただけだったのに、
それが原因で、
ずっと仲良くしていた子のヤキ入れに参加しなければならなくなった。
私のせいだ、どうしよう…

でも、断れなかった。
こわかったのだ。
断ったら次は自分の番…

ヤキ入れの時、私は口の中がからからだった。
手こそ出さなかったものの、言葉の集団リンチだ。
彼女は輪になって囲まれた真ん中で、
あまりにも惨い言葉の暴力を受け、下を向いて泣いていた。

「あんたも言ってやんなよ」

私に声がかかった。

言わないと私がいじめられる…
それがこわくて、私は彼女にひどいことを言った。

「最近、生意気なんだよ。
 ムカつくんだよ」

それから先のことはよく覚えてない。

彼女はそれから私を避けた。
当然だ。
とても悲しかった。



心のどこかでそのことがいつもひっかかっていた。
もちろん、いつもいつも気にしているわけじゃないんだけど、
時々町で見かけたり、噂を聞いたりする度に、胸が痛んだ。

彼女のヤキ入れのあと、
私も同じようなヤキ入れをされた。
結局、された(笑)

「最近生意気なんだよ。
 ムカつくんだよ」

って。

その時、彼女がどれほどつらかったのかがよくわかった。
それから、ずっと申し訳なく思っていた。
けれど、距離ができた私達、ごめんねを言うことさえできなかった。

だから、彼女の顔が見られなかったのだ。
傷つけた。
よくしてもらったのに、仲良しだったのに、苦しめた。

彼女を見かけると、心がぐちゃぐちゃになって思考が停止する。
私は無意識に彼女への罪悪感とから逃げようとしてた。



今日もある店で彼女を見た時、
いつも通り気まずく、さっさと逃げようとした。

けれど、ある瞬間、くるっと向きを変えて彼女の方に歩いていった。

「M子!」

私が声をかけると、彼女が振り返り、

「あーっ!
 久しぶり!」

と叫んだ。

「会えてよかった。
 ずっと気にかかってたことがあるんだ。
 中学生の頃のこと」

私がそういうと彼女はなんとも言えない顔をした。
そりゃそうだ、30年以上まともに口もきいていないのに、
再会していきなりそんなことを言われれば。
それに、最後があんな出来事なんだもの。

「みんなでM子をいじめたことがあったでしょう?
 その時、私もその中にいて、ひどいことを言ったでしょう?
 それまで仲良しだったのに、よくしてもらったのに、
 あんなことを言ってしまって、
 本当に申し訳ないと思ってたんだ。
 だから、いつか謝りたいと思ってて…
 あの時はごめんね。
 つらい思いさせちゃったね。
 そして、よくしてくれていてありがとうね」

彼女はただただ苦笑し、

「いやいやいや、そんな、そんな…」

と言った。

急にそんなこと言われても、
どうしていいかわからないかもしれない。
もしかしたら、何よ今さら、と、思うかもしれない。

けれど、私はどうしても謝りたかった。
本当に悪いことしたよ、つらかったよね、ごめんね、って。

その後、お互いの家族の話をちょっとして、
私達はバイバイした。

彼女は、近くに住んでるから遊びに来て、って言ってくれた。
今日に限って携帯を持っておらず、
メモ用紙も持っておらず、
番号やアドレスが交換できなかった。

「近所ならウチのポストにでも連絡先書いて入れておいてよ」

私がそういうと、彼女は、うん、と言った。

彼女が連絡先をウチのポストに入れてくれるかどうかはわからない。
どういう結果になっても、それが彼女の大切な気持ちだから、それでいいと思った。
そして、連絡先くれるといいな、って。



あの時から31年の月日が流れていた。

あの頃、私はあまりにも幼かった。
人をひどく傷つけた。
ごめんねも言えなかった。
そして、自分も傷つけた。

今日、彼女を見て、なぜか急にごめんねを今伝えなきゃって思った。

彼女とバイバイをして店を出ると、涙がこぼれそうだった。
悲しい涙じゃなかった。
よくわからないけれど、胸がちょっとズキンとして、切なくて、そして、安堵して。

私は今日、
31年前に味わった彼女へ気持ち、あんなに苦しめた罪悪感、申し訳なさを、
やっと、真正面から味わったような気がした。
今までそれをちゃんと感じることから逃げていた。
そう、逃げていた、それが今日よくわかった。

よかった、ごめんねを言えて。
31年目かかったけど、やっと、言えて。

胸の中で、なんだかわからないけれど、
何かがほろほろとほどけて、ぐるぐる回っていた。



M子、あの時は本当にごめんね。
苦しめちゃったよ。
ずっと仲良くしてくれていて本当にありがとう。
今日の出会いに感謝します。

どうぞ、どうぞ、ますます幸せになってね。



私はきっとたくさんのことから逃げてきたんだと思う。
感じてあげなかった感情がいっぱいあるんだと思う。

その感情にまっすぐ向き合った時、
そんな自分がしたいと思うことを、これからしていこうと、そう思う。
時に、感情を感じるのは、とてもつらい作業。
けれど、それを感じ切った後、まっさらな自分が出てくる。
その自分の心に従って進もう、そう思う。

上っ面にある、感情にふたをするための感情で、
本当の感情を隠してしまって、
自分に目隠しするのはもうやめよう、
そう心に誓ったのだった。

本当の自分の心で生きていくためにも。
その自分ですべてを選択し進んでいくためにも。
どんな自分よりも信頼できる、その自分と一緒に行くんだ。
未来へ。


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