 |
 |
■■■
■■
■ 終わる旅
10.永遠を約束しよう。
どこかでいつかね。また繋いだ指に血が巡るのを感じたときに、僕らは甦る。
「はるか昔この星が生まれたそのときに、延びゆく路が閉ざされたのさ。路は生まれるまでに延びていくものでね。生まれたその瞬間にはその路を歩むからその終わりへ進んでいくことなのさ。」 冷たい息を吐き出して、オッフェは呟いた。しん、と静寂を保った空間に言葉が洩れて、端から凍てついていく。ピシリ、という音を聞いたような気が、した。 「・・・それじゃ、あんまりだ。延びゆく路は生まれたと同時に進むものだ。」 幾分不躾なオッフェの言葉にキリコは珍しく、苛立ちを覚えて言葉を混ぜ返した。視線を軽く絡ませた後、何もいわないオッフェに悔しくなって視線をそらした。
空は相変らず曇天。この島では常に曇り空だった。切れ目の見えない厚い雲。覆われた先に温かい太陽が果たしてあるのだろうか。 降りだした、冷たい雪。窓に押し当てた指の温かさはじん、として空気に冷やされ流れていく。人は孤独を感じる生き物だ、満たされた心の中にあっても自分は誰かと信頼を置きたい、信頼を受けたいと思う。それは、自分以外のものの心が掴めることの出来ない「人間」が永遠に持ちつづける心の染みだと。こんな冷たい雪の降る、薄暗い部屋の中においてはこんな思考さえもが頭の中で渦を巻く。 知らず涙を流した。
「路は延びゆくだけじゃない。決められた路は真っ直ぐ進むだけじゃない、なぜなら潜る事も飛ぶ事もできる。ゆく道を行く方法は歩みだけじゃない。」 「それじゃ答えになってない。」 「僕は生きることが辛かった。でも死ぬのは嫌だった。決められた長さの路を行く手段を徒歩でしか考えられずに、ただ無駄に路を歩んできたんだ。ただ俯いて、ただ一点しか見ないで、ただ早足に。」 「・・・。」 「キリコと逢えて本当に良かった。路をゆるやかに歩むことが出来たから」 「戯言だ。僕は路は延びていくものだと思う。長さが決まったゴールが据えられた路など歩きたくない。」 答えのない押し問答。時間はあまりないから、僕らの時間は、僕らの世界は残された時間が短い。焦る気持ちに、心がついていかない。気持ちと心は同じものなのに。 涙するキリコにオッフェは手を添えた。こんな気持ちになるのは久々だった、キリコに会えて毎日がそれなりに充実して過ごし、生きることに倖せを感じた。人からもたらされる倖せ。それを感じたのにたまにぽっかりとあいた胸の空洞を感じえずにはいられなくて、今日それが溢れた。オッフェはキリコの肩に置いた手を腕に滑らせ、その冷たい白い手を握った。
部屋の隅では小さなラジオが抑揚のない声で、今日も世界が海に侵されていく様子を伝えている。 <・・・南大陸の最後の島が、今日午前3時に海に侵食されました。島の住人は近隣の中央大陸より派遣された救助船により、一週間前に中央大陸へ全員避難済み。この島が侵食された事により沈んだ大陸は南大陸、東大陸、西大陸の三大陸となりました。海は・・・> 数年前から原因不明の異常気象により、氷に包まれた最南端の巨大な島が溶け始めた。溶けだした氷は海水に浸かると二倍にも容積が増え、みるみるうちに周りの島々が海に沈んだ。最南端の島の氷は、氷ではなかった。 「いつかこの島が沈むと時はともに沈もう。そしていつか、再び島に戻るまで、僕らは一緒だ」
眠くて、意味不明になってきたのでちょっと終わりにします。なんだこれ。最北の島。
卒業式でした、の記録は明日。
2005年03月08日(火)
|
|
 |