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■ best.
"最良を尽くしましょう。"、"毎日を精一杯暮らしましょう。"こんなにもうつくしい言葉を知っているのに、どうしていざとなるとくじけてしまうんだろう。
聖書をまともに呼んだ事はないが、たまに聞く言葉はとてもためになる言葉ばかり。自分にずっしりとくるものもある。自分を振り返るときにふと思い出す言葉ばかり。一人ひとりが、それは知っている言葉。誰もが認識している言葉なのに人は本へ書き記す。それを人へ説いて聞かせる。誰もが"ああ"と頷き返し、そして大切に心へしまう。知っている事なのに。でもね、知っているということはニスを塗っただけであると同じかもしれない。考えて、自分の中に入れるということをしていなかったから(怠っていたから?)こうして改めて聞くと、スッと体の中に入ってきてすてきな言葉だと、すばらしい言葉だと心にしまうんだ。
s l o w l i f e .
その日の朝は薄曇だった。廃墟に棲むようになって早3年が経とうとしていた――秋。巨大な廃墟を包み込むようにしてそっと蔦の葉が壁を覆っている。夏には青く、強い生命力を感じさせた蔦やその葉も、この秋にはやがてじんわりと色を変えていく。少し冷えた空気が窓の外で漂っている、たまに渦を巻くのが地面に落ちた葉が舞うので見えた。壁はほんの少しだけ、靄で湿っている。触れるととても冷たい。
よもやこんな廃墟に自分が棲むとは思わなかった。家を出たいとは思わなかったといえば嘘にはなるが、人並みの生活をしていくなかで家に居たほうが≪守られた≫。だからふと旅先で見つけたこの廃墟に棲むことになろうとは微塵も思わなかったのだ、その時は。
小さなベル≪鐘≫のついた正面の玄関ドアを開けて、外へ。しっかりと組まれた石畳の間から雑草がわずかに茂り、そして枯れかけていたのを踏み潰した。水滴にぬれた草が靴の底で、小石と潰されてじゃり、と音を立てたのを無意識に耳が捉えた。廃墟はもう遠く、昔に人が住まなくなったようで納屋が潰れていた。一輪車が潰れたレンガの間から腕だけをのぞかせていた。もう見慣れた風景。自分が棲んでいるのは廃墟の一室だけなのだから、人の気配はあまりしない。
廃墟へは旅の途中で寄った。というより、迷い込んだ。けれど入った瞬間に、"ここに棲むしかない"と感じた。これは20年間生きてきて、初めて強く感じたことだったからもう直ぐに離れられなくなった。何かが自分を引きとめる。それとも自分がここへ引き止めているのか。3年が経ちそろそろ答えが出る頃だった。
2004年09月12日(日)
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