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■ there I am.
ほんの少しの物語と時間を贈ります。
僕らの英雄。 The time in which they were.
小さなトラックが寂れた路の上を走っていました。 空には雲が厚く掛かっていて、少し強い風が吹いていました。 寂れた路は枯れた丘の上を細く長く続いています。 それは小さな街へと続いていました。 小さな街の南側のゲートをくぐったトラックは、街を少し走ってから止まりました。
二人の少年がトラックから降りてきて、無言で街を歩き始めました。 小さな街はとても古いようでした。 しかし高度な技術を用いられて作られた高い建築物が、空高く伸びていました。 それはとても高かったので、厚い雲で端が見えない程でした。 でもどれも壊れていて窓硝子は全て割れていました。 どの壁も一面に割れ目が入っていて触るだけで崩れそうでした。
少年達は未だ若いようでした。 一人は髪を短く刈り込んだひょろりと背の高い少年で、 もう一人はその少年に負けないぐらい背の高い眼鏡をかけた少年でした。 二人は少しの時間、その古びた小さな街を歩きつづけました。 やがて、二人は小さな街の大きな公園につきました。 大きな公園は小さな街の土地の大半を占めていて、 遠い山脈の山道の入り口まで続いていました。 公園には沢山の木が植えてあります。 でもどの木も全て枯れてしまって、葉を付けた木は見当たりませんでした。
公園には一面に墓標が立っていました。 それはとても莫大で、数える事は無理に思えました。 二人の少年は暫くその公園の入り口に立ってそれを眺めていました。
莫大な墓標が立ち並ぶ広い公園には、 一本の細い路が曲がりくねりながら遠く伸びていました。 その路の隣には一本の若い檪が植えられていました。 一本だけ植えられた檪は、それだけ瑞々しく葉を広げていました。 その檪はこの二人の少年が育てているものです。 まだ若い檪は二人の少年が遠い山脈の山道の入り口に生えていたものを、 移動させたものでした。
「まだ此処には誰も来ようとしないね」 眼鏡をかけた少年がそう呟いて、腰を下ろしました。 隣に居た背の高い少年も習って、座りました。 「そうだね。でも僕らは此処へ来るよ」 「今の街の皆は此処を忘れたいと思っているんだ。だから来ないと思う」 寂しそうに呟いた眼鏡の少年の言葉に、背の高い少年は黙って頷きました。 二人はしばらく座ったまま、その公園を眺めていました。
遠い山脈に続く細い路は、そのままその山脈の山道へ繋がっていました。 「・・・天国への路みたいだね」 背の高い少年が言いました。 「此処を通る時、いつも思うんだ。僕もこれが天国への道みたいだって」 軽く息を吐いて、眼鏡の少年は立ち上がりました。 遠い山脈に続く細い路が、そのままその山脈の山道へ繋がっているのが見えます。
「遠くて儚いんだ。急いで歩くと、もっと遠ざかってしまうように思えて。 だからいつもゆっくり歩くんだ」 「・・・此処は僕らの英雄がいた場所。僕は忘れないよ」 背の高い少年が座ったまま答えました。 「此処が好きだ。だから来るよ。・・・また来よう」 「そうしよう。忘れないように来るよ。僕も此処が好きだから」 背の高い少年も立ち上がりました。 二人の少年は微笑むと、小さな街の入り口のトラックへと戻っていきました。
小さな街は今もあります。 公園に広がる墓標も、遠い山脈へ続く細い路もまだあります。 路の隣に植えられた檪も枯れずに、日々成長しています。 二人の少年も、今日もこの街を訪ねる為にトラックで丘の上の寂れた路を走ります。
------------------------------------------------------------------ 日記に連ねた短文を元に作った小さな話です。 読んでくれて有難うございました。 (『キノの旅』(時雨沢恵一氏著)に感化されて、その影響が強く出ました。敏感な人は気付くかもしれません。そして気分を害するかもしれません。ごめんなさい。それでも少しだけ、目を瞑ってくれると有り難いです) 瀬乃。
[ 日々落書き ]
2002年03月25日(月)
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