Another garden


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2002年01月27日(日) 1枚の少女


久しぶりの更新です。遅れてしまってて申し訳無いです。
なんか最近ずっとこう、「更新する」って言いつつ全然更新
できてなくて。結局、あの人とは半年以上ずっと会ってないし、
電話もメールもほとんどして無い訳で。それでも、未だ此処で
想いつづけてる私は、自ら出会いを探すことも無く、恋愛とは
無縁な平凡な日々を送ってる。だから、何となく更新頻度も
遠慮しがちになってたんだけど。。。

だけど。

さすがにあの年賀状を見た時は、私も驚いた。あんなに不器用で
硬派を気取って居た彼の年賀状に在ったのは、今年4歳になる
娘さんの写真だった。少女は、無邪気に笑う風でもなく、滅多に
笑顔を見せない彼と同じ様に、そっくりな顔で静かに佇んで居た。
でもその写真を見た時、何故だか私は、微笑ましいような、少し
ほっとしたような…上手く言葉に出来ないけれど、なんか優しい
気持ちになれて。今が、すごく良い関係なのかもしれないと思った。

彼は、私より2回り年上の既婚者で。ありがちなパターンだけど、
中学・高校時代の先生だった。初めて彼のことが気になったのは
中2の時だったかな。まだ子供は産まれてなかったけど、既にもう
彼は結婚してた。今考えてもかなり、背伸びしてたなーと思う。
山田詠美の小説とか読み始めて、寺山修司とかシェイクスピアに
手を出し始めた頃で、インテリで大人な彼に憧れてたんだと思う。

彼は国語の教師なんだけど、それ以上に、知性の深さと言うか
ものすごく博識で。前にエッセイにも少し書いたけど、本当に
何でも良く知っている人。自分成りのポリシーを持ってるらしく、
授業の時は必ずスーツを着てて(うちの学校はかなり自由なので、
スーツを着なくてもOKなんだけど)。アルマーニとかジバンシィ、
エルメスのネクタイを少し自慢げに着こなす人だった。話し方や
接し方もぶっきらぼうだけど、男女ともに生徒から好かれてた。
何だろう、彼のことを言葉で説明しようとすると、見栄っ張りで
嫌味っぽい人のようになってしまって、実際そうなんだろうけど、
それでも憎めないような何かを持ってる人なんだよね。

今思うと当時の私は「年上のスーツの似合う、インテリな先生」
って、表面的な部分でしか彼のことを見てなかったんだと思う。
だから「子供扱いされたくない」と思って、すごく突っ張ってた。
恥ずかしい話しだけど、わざと授業をサボったりして、如何にも
無関心な態度を装って、気を引こうなんて馬鹿なこともしてた。
20歳も年上の彼にしてみれば、そんな私の態度も気持ちも全部
わかってたから、お互いに「その手に乗るか」って感じで…。
実際、私のそういう行動は子供な部分丸出しな訳で、お互いに
「子供扱いしてる・されてる」って感じだった。

けど、今はもう違う。年賀状を見た時、強くそう思った。
そして、本当にあの頃の私達は意地を張ってたんだなって。
去年の6月、教育実習に行った時、私は4年振りに彼と1対1で
指導をしてもらった。うちの学校の場合、ある程度は実習生の方に、
指導教官の選択権があるので、私はあえて彼を選んだ。というより
むしろ高校時代からずっとそう考えてたんだけどね。行くまでは、
本当に彼で良かったのか心配だったけど、4年後に会って、やっと
私は素直になることが出来たんだ。

実習初日のHRで、生徒達から沢山の質問を受けて。その中に
「先生(彼)のことは好きですか?」っていう質問があったんだ。
一瞬、戸惑ったけど、すぐに私は、こう答えてた。

「うーん、微妙ですね(笑)。でも先生は、普段とか話し方は
恐くて厳しいけど、本当は優しいから生徒にも好かれてるんだよ。」

自分でも何でそんなにスラスラと答えられらのか未だに分からない。
でもその直後、生徒達からの「先生、照れてるよー!」って歓声と
同時に彼を見たら、ちょっと照れくさそうにしながら横を向いてて。
その時、初めて「ああ、私達、何かが変わったのかもしれない」って。
私も成長したし、彼も子供が出来て変わったんだなって、そう思った。

2週目に入る頃には、私が準備不足の部分を密かに用意してくれたり、
私の授業の出来や調子にあわせてアドバイスしてくれて。その時初めて、
「今まで彼が冷たくしたり、ぶっきらぼうな態度ばかりを取って来たのは
照れ隠しなだけで、本当はすごく感情表現が不器用なだけなんだ」って
実感した。同時に、昔の私は彼のそういう点をちゃんと見てなかったんだ、
うわべだけの憧れだったんだとも思った。

だから実習の最終日、私は泣いた。
彼の優しさや期待を感じることが出来て、嬉しくて泣いた。
きっと昔の私だったら、変な意地を張って、絶対に泣いてなかったと思う。
彼も、そんな私に対して、優しさや愛情を掛けてくれなかっただろう。
その証拠に、先生は少し驚きながらも「早く控え室に戻れよ」って何度も
言ってくれて。実習簿には「何度も叱ってご免なさい」って書いてあった。

あの年賀状を見た時、私は優しい気持ちになった。
男と女の関係でもなく、大人と子供の関係でもなくて。
きっと、これで完全に一対一の関係になったんだろうなって。

1人の人として、彼に出会えて本当に良かったと思う。


咲子 |MAILHomePage