夏目久美の生きてりゃ上等!



夏目久美の生きてりゃ上等!


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●KUMI NATUME●
2004年11月06日(土)    冤罪。




 私が二十歳そこそこの頃のお話。




 とある社長さんのお友達に。

 雇われ飲み屋の店長さんがおりました。

 影のある感じの。気の弱そうな、でも明るい人でした。



 前科持ちです。



 「道にな、老人が倒れとったん。
  で、車止めて。公衆電話で救急車呼んで。

  その間に見物人が集まって来て。

  で。警察も来てな。

  後日、警察署に呼び出しがあったん。

  で。俺はてっきり褒められるのかと思って行ってみたわけ。

  そしてら、取調室のムードが違うんや。

  で。ここに名前と判子押してと言われたから、
  白紙の用紙に署名して印鑑押したわけ。


  で。また後日呼び出しがあってな。

  そしたら、もう書類送検されていて。

  俺、立派な交通人身事故の容疑者。

  どうも見物人が噂しとった『あの車が老人をはねたらしいで』

  と言うのを警察が信じたらしい。

  それと。その老人。目が覚めて、何で倒れたのか覚えてないと。

  弁護士に相談したら、もう書類出た後で。

  その書類読んだら。自分が見ても
  『こりゃあ、悪いやっちゃなあ!』という、

  事故したのにやってないと言い張る犯人の文章が
  そこに書いてあったわけ。」



 夏目「はあっ!?それでどしたん!?
     ちゃんと戦ったんやろうね!?」


 「いんや。…もうダメやと弁護士も言うし。
  金かかるしな。それで、前科持ち。」


 夏目「バカ。救いようの無いバカ!
    何でそこで諦めるかなっ!?
    助けてくれる人はおらんかったん!?」


 「…なんかなあ。もう昔のことやし。
  俺のために泣く奴もおったけど。それも何かなあ。」


 という。諦めきったムードの。彼がそこで語っておりました。


 「信じる?」



 夏目「うん。それは警察が件数あげるのに、利用しただけ。
    だって。嘘言よるように…見えん。」


 何で信じたかは、勘と言うり。


 その壮年のね。諦めきったムードというか。

 傷つき易い繊細な?


 そういうのが『目』に見えたから。


 この人は、多分。そういう


 「警察という権力が、間違って陥れる
  (もしくは、わざと自分の利益の為だけに陥れる)」


 という現実に失望して。



 それだけで力を無くしたんだと。

 それくらい、繊細な所が見えた。

 このくらい繊細な人だと。よっぽど周りの人が多く力にならないと。

 そういう傷は癒せなくて。

 その間に事件は進んで。時は流れて。

 諦めてしまったんだと。容易に…理解出来た。





 彼の息子さんは。
 防衛大学に行って。
 今きっと自衛隊のエリートコースに進んでます。


 そうやって影で、見えない所でひっそり支えている。

 そういう父親の姿は。いつかきっと何か引き継がれて。

 どこかで…陽の当たる所で、実る事でしょう。




 
 そこの警察はその後。

 別の人の冤罪逮捕事件で全国ニュースに流れました。
 


 発覚しない影で。冤罪はどれだけあるのか。

 諦めてしまった人が、どれだけいるのか。


 

 諦めずに戦う人は、ごく僅かな気がしました。




 松本サリン事件河野さん冤罪の本を一気に読んだ、
 何年か前にも思った事でした。







                BGM 宇多田ヒカル  Wait&See〜リスク〜
                   Mr.children   タガタメ




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