同人愚娘。
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| 2007年06月12日(火) |
シロエ文(思いついた分だけ) |
僕が目を覚まして一番最初にすることは、夢をたどる事ではなく 記憶をたどること。父の顔、母の顔。育った街のこと。 炙られた写真のように、最近はそんな身近だったはずのことすら うまく再生できない。どうしようもない不安に駆られて 目が覚めるたびに僕は、覚えていることへの安堵と 全てを忘れるようにと迫る忌々しいマザーの声に恐怖と、怒りを感じていた。
僕のように、このシステムに疑問を持つものがいなかったとは考えにくい。 長い年月の中で、そういったものが生まれる可能性を、マザーが計算に いれていないというのも考えられない。ありとあらゆる可能性を吟味し どれを選択するように導くかは、すべてマザーの計算どおりなのだ。 そう。例えるならば、今、僕が反発していることも計算どおりなのかもしれない。 心の奥底まで見通せる千里眼を持つマザーならば、僕の思考なんて筒抜けだ。 なのに、それを強制的に排除しようとしない。過去の記憶にすがりつく僕に マザーが固執しているとも考えられない。僕のようにここまで強固に反発する 人間が出来上がるのは稀だと思うが、機械に従順で、優秀な人間…そう あのキース・アニアンのような人間を完全飼育するのはきっと簡単だ。 洗脳、脅迫、刷り込み・・・僕にさえ思いつく方法がいくらでもある。 ならば、何故僕はまだここにいる?『そうならないように』育てられているのならば 僕は確実にマイノリティな存在だ。
『この、稀な存在・疑問自体が何かのために必要なのか?』
そう、考え付くのにあまり時間はかからなかった。
* * *
「キース先輩」
そう呼びかけると、彼は必ずこちらを向く。 嫌ならば、邪魔ならば無視すればいいことなのに、彼はきちんと振り返る。
完全に無垢に育てようと思うのならば、「あの中」から出さずに 必要な知識を必要なだけ与え、14歳以降も飼育し続け、すべての人間が彼に 従うようにコントロールすればいい。なのに、そういったシステムには なっていなかった。何故?わざわざ出生がわからぬようにして 彼を様々な人間のいる教育ステーションに出した? 悪の囁きに身をゆだねることのない忠誠心を試すため? それもあるだろう。マザーの申し子としての彼は完璧だ。 でも、それだけではないはず。人との接触によって何が生まれるのか・・・。
ひとつ仮説をたててみた。 僕が僕であることも、彼の個室で彼に関するキィーワードを話すことも きっと彼が僕の言葉どおりにE001へ向かったであろう事も、マザーの 計算どおりでそうなるように予め決まっていたのではないかと。 つまり僕は、彼をより完全なものにするための部品のひとつでしか なかったのではないか?そう考え始めると、すべて納得がいく。 排除されなかったのはその為だ。 彼を形成させるひとつの部品。彼はまだ製造過程で、ありとあらゆる知識や 疑問、そして答えを得て完成に近づいていく。地球を統治する者として ふさわしくあるように。
結局、僕もマザーの用意した部品にすぎず、記憶に固執して テラズナンバーを、この体制を憎んでいたのも「そうあるように」 仕組まれていたことなのかもしれない。こうして地球を目指し 船に乗っていることも、僕が選んだ道ではなく、マザーのシナリオ通りなんだ。
「セキ・レイ・シロエ停まりなさい。」
ノイズ交じりの彼の声が聞こえる。 僕の思ったとおり、マザーの指示通りに彼が来た。
僕という存在が、彼を形成する為のひとつの部品に過ぎず これからを見届けることができないのは、とても残念だ。 でも彼は迷った。疑問を持った。僕の言葉に、僕の行動に。 彼を動かすひとつになった。 ならば、それがスイッチになればいい。 いつ、それが入るのかは、もう僕にはわからない。 僕の願いが通るならば、それは彼の意思だ。機械ではなく、彼の。
カガミ

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