同人愚娘。
もくじきのうあした


2006年09月29日(金) 中途半端


書き終わりたくても
オチを忘れてしまったSS。
ワタルが幼すぎる。

【最後の日】



設定:幻界の住人なふたり。








「ミツル」

心地のよい響きだった。

口にした本人にはその名前が、呼ばれた本人にはその声が。
たがいに今、もっとも聞きたい名と声だった。

「連合政府のおふれを見たのか?」
「・・・うん」
「・・・ヒト柱・・・か」

いつも冷静で感情をあまり表に出さないミツルが
珍しく感情の色を乗せてつぶやいた。

今や南大陸すべての者が知ったであろう『ハルネラ』という
運命の時。ワタルが知らなかったのも無理はない。
自分だって魔導院で読んだ書物で初めて知ったのだ。
選ばれるのは、幻界に住むもののなかからたったひとり。
それを知ったとき、恐怖に身体を食われてしまうのかと思った。


「・・・僕は・・・いやだ」
「・・・ワタル?」
「ミツルが人柱に選ばれるかもしれないことも
自分が選ばれたときにミツルと離れなければならないことも。
・・・怖いんだ」

あのときの恐怖の原因がワタルの口からこぼれる。
掴んだミツルのローブを引き寄せて、そのなかに顔を埋めた。
ミツルの見上げた夜空には赤い星。
そのままワタルに問うた。

「知らなかった方が・・・よかったか?」
「ミツルは・・・知ってたの?」
「書物で2年くらい前に」
「・・・そっか」

少し冷たい風がミツルの髪を揺らす。

「・・・もし知らなくて、ミツルが急にいなくなってしまったら嫌だ。
何もわからない状態でミツルの前から姿を消すのも嫌だ。」
「確立としてはとても低いものんだけどな」
「それでも!!万が一の可能性がある限り、僕は・・・」

僕は・・・と繰り返される小さなつぶやきは夜風に溶ける。
月も大きく輝いているというのに、赤く赤く輝く星は光を
譲ることを知らない。


「ねぇ、ミツル。ハルネラが終わるまで僕から離れないで。
最後の最後の瞬間まで、僕はきみを離したくないんだ」

ワタルは手にしていたローブごとミツルを強く抱きしめる。
どうぞ選ばれるなら、今この瞬間。
この幸せなときを1000年抱き続けるのならきっと・・・









『女神はヒト人を愛してなどいない』
老神教信者の言葉が頭を掠める。

「旅人が願いを叶えるために
この世界を滅ぼすんだ」

誰かがそうつぶやいた。
北からの黒い雲のように広がる魔物から逃れてきたヒトビト。
あるものは岩陰に、あるものは森の中に。
僕達は街のはずれにある小さな小屋に身を潜め
無事に朝がくるのを待った。
朝が来たところでこの悪夢は終わらないのに、ただひたすら
僕達は待ち続けた。
魔法は使えても、いつまで持つかわからない。これだけの数、奇跡でも
起こらないかぎり消えることはなさそうだ。
窓の外を盗み見れば、黒い影のあいだから覗く赤い星。
ハルネラはまだ終わらない。


「旅人って願い事を、叶えるために現世から来たんだよね」
「それが旅人だからな」
「どうして幻界の人の願いは叶わないのに
現世から来た・・・この世界には関係のない人の願いは叶えてくれるのかな。
きっと、みんなの願いはいまひとつだけだよ。
この世界に未来をください・・・そのひとつだけだよ。」


なのにどうして…と繋いだ手が震えている。

僕にはそんなことわからなかった。
どんなに沢山の書物を読み漁っても、書いてあるのは
他人の言葉。女神の言葉は刻まれてなどいない。
本当は都合のいいように解釈しているだけなのかもしれない。
それでも、いまここにあることが真実だと、今ココに置かれている
状況が現実なのだと認めざるおえない。


「ミツル・・・怖い?」

ワタルはミツルの冷たい頬に触れた。
そのまま髪をすく手はやさしく、そろりと近づいてきた唇。

「いつ最後になるのか、わからないから僕は真実だけを言うよ。
僕は怖いよ。ハルネラも、魔物もすべてが怖い。
でも、それ自体が怖いわけじゃない。ミツルを失うかもしれないということ
それが怖い。」
「うん」
「ミツルは?」

僅かな光の入った黒い大きな瞳が見つめ返してくる。
この期に及んで長年積み上げてきたプライドが壁となって
僕の言葉を遮ろうとしていた。空気が抜けるようにやっと小さな小さな言葉を
吐き出す。

「・・・僕も・・・怖い」
「ミツル」

背伸びをするようにして、やさしく口付けられた。
音もしないほど軽く、やさしい口付けが何度も繰り返され
次第に深くなっていく。
















・・・こっから先、エッチにでも突入しちゃったのかしら。


カガミ