bbb
DiaryINDEXpastwill


2004年04月14日(水) 紳士クラブ潜入(イギリス篇)

食後に久しぶりに甘いデザートを食した。
体重維持のため、しばらく甘いものは自分に禁じていたがその禁を破った。
甘露、甘露!
美味なこと極まれリ!
元来甘いものには目がない私。
堪能して心地良し。

デザートと言えば、英国で忘れ難い思い出がある。

アラブのお姫さまとご学友になったため、色々な体験ができた。
英国ではある階級の紳士諸君はクラブに所属している。そこに集い食事やクリケット、お酒や、音楽、文学、政治、経財など談論風発、男同士多いに怪気炎をあげる由。
女人禁制。男だけの階級意識、特権意識を満喫し、時には良からぬ事など企てたりするらしい。
女人禁制と言われればなお更覗いてみたい世界だ。
我々悪友はお姫様をかつぎだし、そそのかして、なんとかこのクラブに潜入してみようと画策にやっきとなった。

アラブのお姫様の価値は相当なものらしく、すんなりこのクラブの夕食会に参入できることになり、そそのかした当の悪友連も少々驚きを禁じえなかった。
当日、ドレスアップしたご学友数人とお姫様はケンブリッジにある名門紳士クラブに到着。
中に入るとN伯爵がおで迎え。
伯爵と言う名にふさわしからざる風体の人物。
まるでシェイクスピア劇に出てくるフォルスタッフのよう。
壁にはこのクラブに所属する歴代の貴族の肖像画や写真が飾られている。

食堂では正装した従業員が居並んで我々を慇懃に迎えてくれた。
ダイニングはきらびやかでテーブルには燭台にろうそくが灯され、上品な食器がすでにセットされていた。
食事の前に伯爵がご挨拶。
晩餐の料理は美味だった。
食後のデザートはこのクラブ伝統のポルト酒が出された。
「カラフェ」俗に言うデキャンタに美しい宝石のようなポルト酒が注がれ、それを各自で回して飲むとのこと。
何でもここのクラブの伝統でデキャンタを左回りに回して主賓が終わりを告げるまで回し続けて飲むとのこと。

クラブが誇るだけあって芳醇な味と香りと色に皆堪能と賛美の声を惜しまない。
さて、このポルト酒と共に味わうデザートが出てきた。
それは各種のチーズ。
カッッテイングボードにチーズが各種載せられ、そのほかにセロリ、マスカットが供せられた。

さて、これらをどうやって食すのやら?
伯爵のなさる通りにやってみるのが間違いがないと思いじっと眺めると伯爵が此方を見てウインク。
きゃ!見つかっちゃった!とこちらも目で合図。
ポルト酒のクリスタルの「カラフェ」の蓋をおもむろに取り、自分のグラスに注ぐ

次ぎにチーズをとりわけ、セロリの茎を一本
マスカットも数粒皿にとる。
そして日本の茶道のように「カラフェ」を右側の次客に回す。
濃厚な味と香りのチーズが口の中に残っている内、次ぎにセロリを食す。爽やかなサクサク感が口中を満たす。そしてマスカットの上品な酸味が舌に残る。そしてポルト酒を飲む。
ポルト酒の香り、芳醇な味、ワインレッドの色、クリスタルのきらめき、それらがミックスして目と舌と音とのコンチェルトが脳髄に達して至福の極みとなる。

こうして何回も回しているうち、伯爵が奇妙な事をやりだした。
それはセロリにチーズを少々のせ、その上からポルト酒を少々かける。
私の方をそっとご覧になってやってみろよとばかりに目で合図するではないか!
ぎょ!
日本で、お行儀悪い見本のような味噌汁ぶっかけ「にゃんにゃん御飯」のようだ!と私はひそかに思った。

私もまねしてみた。
どうやら、誰も同じようにやってる者はいないようだ。
あはは。なんだか楽しい食べ方だわいと独りごちる私。

伯爵がまた、私にウインクして見せた。
私もお返しにウインクをして見せた。
フォルスタッフ伯爵(私は勝手に心の中で名づけた)のいたずらっぽさが大いに気に入って、気分まで酩酊状態。
主賓のお姫様が食事終了をするとポルト酒を回すのも終了。

最後にお姫様が伯爵にお礼のご挨拶スピーチをして晩餐はお開き。
クラブの周囲を散策してこの女人禁制の伝統のクラブ潜入は終了したのだった。

あの上品で格式ある伯爵と東洋の平民の私がやった「にゃんにゃんぶっかけデザート」はかくして誰にも気づかれないまま幕を閉じたのだった。

思い出の特別デザートだった。


..