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| 2004年03月11日(木) |
シェリー酒の想い出(イギリス扁) |
イギリスにはお城や貴族の館がたくさんある。 未だに狩猟を楽しみ、きらびやかな夜会が催されたりもしている。
私がいた学校も素晴らしい貴族の城、館であった。由緒ある館で屋根裏の謎の部屋では戦争の時密かに作戦会議が催された場所であるとかといわれていた。しかしその部屋へ通じる道をいくら教えて貰ってもたどりつかない。 なぜならその部屋へ行くには居間のからくりドアから行くのであるがそのからくりドアが巧妙に出来ていてわからないのである。 コモンルームと呼ばれている部屋は生徒みんなの憩いの部屋である。大きな暖炉があり、書棚には何世紀も前からの古色蒼然とした金背表紙の本が並んでいた。床は寄せ木細工で出来た素晴らしい手仕事のものだった。その上にペルシャ絨毯がひかれ保護されていた。午前と午後にそれぞれティータイムがあり、お抱えの給仕人によって焼かれた熱々のスコーンとビスケットが出された。スコーンにはクロテッドクリームとよばれる黄みがかった濃厚な生クリームが添えられ、ジャムと一緒に付けて食べる。おいしい紅茶を飲みながら先生や生徒達と談笑するのはこたえられない楽しみであった。 時々、シェリーパーティーとよばれるパーティーがあり、色々な人が集まり賑わった。 色々な人としゃべる中、私は一人の素晴らしい紳士と意気投合した。背が高く渋いスーツを着て薄暗いあかりの中でいぶし銀のように光って見えた。温かそうな茶目っ気たっぷりな目をしていてとても気に入った。話をするにつれ、彼がピアノの名手であることが分かった。シューベルトが好きで良く弾くということでシューベルト談義となった。私はよせばいいのに自分の考えや思うこと弾き方、解釈など山ほどしゃべってしまった。 彼は時々私の無謀とも言える飛躍的な話しに大笑いをし、「面白い解釈だね」と茶々を入れた。話が佳境になりそうなとき、パーティーがお開きとなってしまった。「次回必ず君を捜すよ」と言われ名残を惜しみつつ別れた。 それから数日過ぎて、友達に彼の名前を言うと、とたんに顔が蒼白となった。彼はシューベルトの第一人者といわれている世界的に有名なJ・D氏その人であった。 無知と若さは垣根を越えてとんでもない会話ができてしまうものだ。 シェリー酒を飲むたびに思い出すあのいぶし銀のおもざしとあのコモンルーム。
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