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2004年03月06日(土) 銃殺か?(スロバキア)




空気が乾燥し、久しぶりに顔をパックすることにした。
パックするたびに銃殺されそうになった、あの夜の出来事を思い出す。
それは夜行寝台列車でスロバキアからチェコとの国境を抜けようとしていたときの事である。
スロバキアを通過するにはパスポートの他にビザが必要だった。翌日私は大事な人とチェコで会わなければならないことがあって乾燥した寝台列車の中でよせばいいのに顔をパックしたのだった。まだ乾かないパックにいらいらしているうちに、いつのまにかうとうと寝込んでしまった。すると突然、列車が「ガタン」と音を立てて止まり、ドアを激しく叩くものが
いた。鍵をがちゃがちゃと壊さんばかりにして、騒いでいる。激しくドアを叩き続けるので恐る恐る開けると、そこには機関銃を構え、迷彩服を着た兵士と黒服の男が立っていた。「きゃーっ」と叫ぶと迷彩服の機関銃男が私に銃口を向けた。
そのときの私の顔はパックのまま。真っ白な仮面をかぶった不気味な化け物顔だった。
黒服の男が機関銃男を制して下手な英語で叫んだ。「パスポートとビザを見せろ!税関だ」
どうやら列車はチェコとスロバキアの国境で止まったようだった。。黒服の男がパスポートに判を押すと、機関銃男が口を開いた。「タバコ、持っているか?」と。
私は震えながら「持っていません」というと列車の網棚の上をじろっと睨んで、二人はようやく出ていった。
「ひゃー、怖かった」共産圏ってこんなすごいところなんだと驚きながら洗面所の鏡を覗くとそこには世にも恐ろしいものがいた。
白塗りのパックが半分剥げ、残りの半分は、目と口だけ出た奇怪な顔があった。
怖かったのは私じゃなくてきっと私をみたあの機関銃男と黒服男だったことだろう。


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