DEAD OR BASEBALL!

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Vol.177 2004年プロ野球戦力診断 横浜編
2004年02月06日(金)

<投手分析>
先発……三浦、斉藤、川村、吉見、門倉、マレン、牛田、若田部、秦
右中継ぎ……加藤、デニー、木塚、吉川、田崎
左中継ぎ……富岡、稲嶺、河原
クローザー……佐々木、ギャラード

 キャンプイン直前に飛び込んで来た、“ハマの大魔神”佐々木の日本球界復帰というビッグサプライズ。キャンプイン後の2月2日、佐々木は古巣の横浜に復帰を発表したが、日本一になった98年の象徴的選手だけに、佐々木の復帰が昨期軒並み討ち死に状態に陥った実績組の刺激剤になれば面白い。

 昨期8勝してチーム最多勝のドミンゴが中日に移籍し、もう1人の規定投球回数到達投手であったホルトも退団。規定投球回数に達した投手がゼロの状況で今年の開幕を迎える訳なので、実績組の奮起はなければ困る話。昨期100イニング以上を投げた三浦、斉藤、川村の3人は、佐々木と共に98年の美酒を味わった実績組の代表格。このうち最低2人は主戦級の働きをしてくれないと、そもそもローテーションが機能しない。

 門倉、マレン、牛田という新戦力に対する期待も大きいが、貴重な先発左腕で昨期の開幕投手だった吉見の復活も不可欠。吉見に目処が立たなければ、左腕全体の層の薄さは言い訳できない状況として映るようになる。秦、後藤らの横須賀組も足踏み期間が長く、期待感が萎みかけているだけに、吉見が戦力になるかどうかは先発全体の大きな分水嶺になりそう。

 リリーフ陣も左腕の手薄さが気になるが、右に力のある投手が揃っており、ワンポイントというセコいことを言わなくても押し切れる地力はある筈。昨期1年目から台頭した加藤を中心に、デニー、木塚も復調すれば、力で押せる豪腕サイドハンドトリオを結成できる。田崎とルーキー吉川は角度のある速球とフォークで三振を奪えるタイプの投手で、左の手薄さを感じさせないリリーフ陣を組む層はあると見ていい。クローザーは佐々木の復帰で収まりそうだが、ギャラードとの兼ね合いという新たな問題が浮上。昨期ギャラードが中日を飛び出した経緯もあるだけに、違った意味で難しい状況だ。

診断……先発陣は実績組の復調次第。年齢的にはまだ老け込む段階ではないだけに、1人飛び出せば連鎖反応的に復調する可能性もある。98年の実績組3人で40勝以上稼げれば文句なく、またそれだけの地力もある。右が充実したブルペンは、佐々木という求心力がいい方向に働きそう。ギャラードがセットアッパーの座を呑めば大充実の兆しもあるが。



<野手診断>
1(中)金城
2(遊)石井
3(左)鈴木尚
4(一)ウッズ
5(右)多村
6(二)村田
7(三)古木
8(捕)相川
9(投)

控え
捕手……中村、小田嶋
内野手……内川、種田、小川、万永、北川
外野手……佐伯、田中一、小池、

 リーグ2位に大躍進したチーム本塁打192本を長所と捉えるべきか、リーグ最多の1110三振、逆にリーグ最少の314四球という弊害を生んだものと捉えるか、それだけでオーダーを組むベクトルというものが変わってきそうだ。山下監督が今年も指揮を執るので、恐らく長打力というベクトルを今年も大事にしていくと思うが、まだ発展途上の打線だけに今年も我慢比べを強いられることになりそう。

 発展途上の象徴的選手が村田と古木。村田が25本塁打、古木が22本塁打と、若い2人で47本塁打の長打力はチームカラーを一気に塗り替えつつある。反面、村田が.224で111三振、古木が.208で131三振と、悪い方面で象徴的選手になってしまっているのも事実。守備面でも失策が多く、村田14、古木20と度々投手の足を引っ張った選手を内野に2人並べるのは勇気のいるところ。

 チームがこれだけ低迷状態に入っているだけに、爆発力を持ったこの2人は我慢してでも使っていくべきだというのが個人的な結論。昨期は山下監督も序盤はこの2人に期待をかけていたが、中盤〜終盤にかけてはベテランの種田や小川の起用に切り替わり、低迷状態でさらにチームのスケールを小さくしていた。村田と古木には、まだ伸び代を存分に残しているポテンシャルがあるので、今年はその我慢比べに屈してほしくはない。古木の守備力を考えれば、外野に欠員が出た場合は即外野に回すのがベター。

 外野は多村の成長と金城の復活で格好がついてきた。鈴木尚の守備力は頭痛のタネだが、チーム随一の安定感を誇るバッティングは長打力の目立ってきたチームの中で貴重な楔役。内野は昨期打率最下位まで落ち込んだ石井の復調次第。内川が打撃で成長を続けている現状、そろそろ石井のレギュラー特権を剥奪しにかかってもいい頃合だ。捕手は相川に期待。打撃とインサイドワークでは足踏み傾向が見られるが、昨期の盗塁阻止率.457(35-16)は見事な数字。昨期のチーム許盗塁数はリーグブービーの80で、中村は6球団レギュラー捕手最下位の盗塁阻止率.250だった。

診断……大袈裟に言えば、村田や古木と心中できるかでチームカラー、ひいてはチームの将来まで変わってくる。昨期は心中しきれず、安定志向に傾きながらもシーズン100敗かというところまで追い詰められた。ウッズが40本塁打でキングに輝いたが、タイプ的には2年続けて同じ活躍ができるかアテにできない怖さがある。アテにできないのは若い2人もそうだが、ここで腹をくくれるか、山下監督にとっては勝負になる筈だ。



<総合診断>
 投手では実績組に対する期待が浮沈を握り、野手は若い大砲2人がチームの未来像を担うという構図。2年続けてどん底を味わったが、個人的な感覚で言えば、そこまで悲壮感のある開幕前ではない。佐々木の復帰が、その感覚を後押しする期待感もある。これは監督やチームの色による部分も大きいが。

 冷静に考えれば、計算の立たない怖さは確かにある。しかしチームの歯車は、たった一滴の刺激で途端になめらかになったりすることがあるのも事実。佐々木ばかり引き合いに出されるのも困るが、佐々木はただの一滴ではない大きさがある。大魔神という存在で後ろが固まっただけでも、個人的には何だか“いい予感”がする今年の横浜だ。



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