月の輪通信 日々の想い
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2005年10月09日(日) 絶妙の間

朝、お寝坊して起きてきたばかりのアプコが、台所仕事をしている私の脇にぴたっと立つ。
カシャカシャと卵を混ぜたり、おネギを刻んだりしている私のそばにぬーっと立ったまんま、じっとしている。
何にも声をかけずに、しばらく慌しく立ち働いていたら、おもむろにアプコが私の腕をツンツンと突付いて、
「おかあさん、『おはよう』は?」
と言う。
「あ、ごめんごめん、アプコ、おはよう」
「ん、おはよう」
あ、こちらから声を掛けるのを待っていたわけですか。
別に、あなたから「おはよう」といってくれてもいいんですよ。
いつも、「おはよう」と声をかけても三回に一回はニマーッと笑うだけで、「おはよう」の声が出ないアプコ。
それでも毎朝、母からの「おはよう」は要るのですね。
挨拶を交わして用が足りたアプコ、後ろに手を組んで、校長先生のように偉そうにのっしのっしと着替えに上がって行った。

朝食も終わりかけたころ、アプコ、急に立ち上がって父さんの脇に立つ。
「なに?海苔がいるの?それとも、お醤油?」
父さんがあれこれ聞いてくれるのに、アプコはまじまじと父さんの顔を眺めるばかりで答えない。
「なぁに?なにか言う事があるの?」と父さんがアプコのほうに向き直って訊ねたら、アプコ、「これ」と手に持った小さなものを父さんに見せる。
いつも冷蔵庫に張り付いている小さなマグネット。
「これ、お父さんのほっぺたにくっつくかなぁと思って・・・。」
はぁ?
ご飯の間じゅう、そんな事考えてたの?
アプコって、おかしなこと考えるなぁ。

気のいい父さんは、アプコのマグネットを受け取って、ほっぺたにくっついて取れなくなったお芝居をしてアプコをげらげら笑わせる。
アプコはおでこを父さんの胸にごっつんして、甘えて笑う。
末っ子って得だなぁ、甘えんぼしていいなぁとおにいちゃんおねえちゃんたちは思っているに違いない。


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